不妊の原因は女性側にも男性側にも存在し、その因子はさまざまです。この記事では女性不妊の原因や検査についてわかりやすく解説します。
不妊症とは
「不妊症」とは、妊娠を望む男女が避妊せずに性交を行っても妊娠しない状態のことです。一般的には、1年間避妊せずに性交を行っても妊娠しない状態と定義されていますが、1年を待たずに検査・治療を行うことが望ましい場合もあります。
例えば、女性では排卵障害や子宮内膜症など医療の介入が必要な病態が原因となっている場合があります。また比較的高年齢の方(35歳以上)では卵巣機能の低下により妊娠できる残りの期間がすでに限られていることがあります。
最近では晩婚化に伴って不妊症に悩むカップルが増えており、現在日本では約5.5組に1組のカップルが不妊の検査や治療を受けているといわれています。
妊娠を望むカップルは、まずは自分たちの体について理解するために、産婦人科医に相談しましょう。
不妊の原因と割合
不妊の原因は、女性側、男性側、または両方に起因する場合があり、原因が明確でない場合も存在します。
世界保健機関(WHO)の報告によれば、女性因子が原因とされる割合は41%、男性因子が24%、女性と男性の両方の因子が関与する割合が24%であり、原因が不明なケースが11%と報告されています。
今回は女性不妊の原因である「排卵因子」「卵管因子」「頸管因子」「子宮因子」「免疫因子」、そして原因不明の不妊について説明します。
女性不妊の原因
排卵因子
健康な女性では、生理開始日の約2週間前に排卵が起こり、女性ホルモンの分泌が変化し、子宮内膜が妊娠に向けて準備されます。しかし排卵障害があると、生理周期が乱れていたり、出血があっても排卵をしていないことがあります。排卵がない原因には、基礎疾患や肥満・やせ、ストレスなどによるホルモンバランスの一時的な異常などがあり、これらの場合は自然妊娠できる確率が低く医療の手助けが必要なことがあります。排卵が起きているかどうかを確認する簡単な方法は、基礎体温(朝目覚めた直後の、安静時の体温)の記録です。基礎体温が低温期と高温期に分かれている場合、排卵が起きている可能性が高いといえます。
原因となりうる疾患
高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、早発卵巣不全、甲状腺機能異常
卵管因子
卵管因子の不妊は女性側の原因の中で最も多く、30〜40%を占めるといわれています。
精子や受精卵の通り道である卵管が炎症や癒着によって詰まると自然妊娠が困難になります。この原因にはクラミジア感染症や子宮内膜症、下腹部の手術既往などがありますが、クラミジア感染症が原因であることが最も多く、60%以上とされています。
原因となりうる疾患
性器クラミジア感染症、子宮内膜症、骨盤腹膜炎
頸管因子
排卵期には糸を引くような透明の帯下(おりもの)が増えますが、子宮頸部の手術や炎症によって頸管粘液が少なくなると、精子が子宮内に入りにくくなり、不妊症になる可能性があります。
頸管粘液になんらかの異常がある場合(頸管粘液産生不全)は子宮内に精子を直接注入する人工授精が適していることがあります。
原因となりうる疾患
頸管炎、頸管粘液産生不全
子宮因子
子宮になんらかの異常があることで受精卵が子宮内膜へ着床しにくくなり、不妊症の原因となります。生まれつきの子宮の形態異常や過去の子宮手術が影響していることもあります。
子宮因子の原因疾患の治療は主に手術であるため、他の不妊原因に対処しつつ、年齢や治療期間を考慮して治療方針を決定する必要があります。
原因となりうる疾患
子宮筋腫、子宮内膜炎、子宮内膜ポリープ、子宮奇形、子宮発育不全、Asherman症候群
免疫因子
抗精子抗体という精子を攻撃する抗体を持つ女性の場合、この抗体が子宮頸管や卵管に分泌されることで精子の運動性が失われ、不妊症になることがあります。
抗精子抗体が原因である場合、抗体価(抗体が多いか少ないか)によって治療方針を決定することがあります抗体価が高い場合は、人工授精で妊娠を得るのは難しいため、はじめから体外受精や顕微授精をおすすめする場合があります。
また、抗透明帯抗体を持つ女性では、卵巣機能の低下や受精障害を認める傾向があるという報告もあります。
原因不明不妊
不妊に関する検査をすべて行ったにも関わらず、原因を特定できないものを原因不明不妊症といい、不妊のカップルの10〜20%が該当するといわれています。ただし本当に原因がないのではなく、検査では見つからない原因が存在していることもあります。
原因不明不妊は夫婦の年齢が上昇すると割合が高くなるといわれており、これは精子・卵子の機能が加齢により低下していることが考えられます。そのため、早い段階で検査・治療を行うことが求められます。
不妊治療の検査方法
ブライダルチェック
- 女性
- ホルモン検査
- AMH検査
- 子宮卵管造影検査
- 甲状腺ホルモン検査
- 不育症検査
- 着床不全検査
- ビタミン・ミネラル検査
- 男性
- 精液検査
ホルモン検査
血液検査によって、妊娠に関わるホルモンの値を計測します。生理周期の異なる時期(月経期、排卵期、黄体期)に測定することで意味合いが異なります。
AMH検査
AMHとは抗ミュラー管ホルモンのことで、不妊治療の分野では「残りの卵子の数」や、排卵誘発剤を使用する際に「反応する卵胞の数」を予想する指標として利用されています。
子宮卵管造影検査
腟から子宮口に細い管(カテーテル)を入れて造影剤を注入し、卵管が詰まっていたり狭まっていたりしないか、子宮の中にくっついている箇所がないか、その他の病変はないかを調べる検査です。この検査では卵管に造影剤を通すため、検査をすることで卵管の通りがよくなり、妊娠率が高まることもあります。
甲状腺ホルモン検査
妊娠中の甲状腺機能の異常は、流早産や低出生体重、胎児発育不全、生まれた子どもの脳の発達などに影響するといわれています。そのため、血液検査によって甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの値を測定します。
不育症検査
不育症の検査には、子宮形態検査、内分泌検査、夫婦染色体検査、抗リン脂質抗体検査があります。2回以上の流産や死産、早期新生児死亡を繰り返した場合に、検査がすすめられます。
ビタミン・ミネラル検査
ビタミンD、亜鉛、鉄は妊娠・出産に深く関わっている栄養素です。不足している場合には、食事やサプリメントで補います。
精液検査
トーチクリニックでは男性の検査も提供しています。精液検査は禁欲2〜5日後に精液を採取し、精液量や精子の数、精子の運動率などを調べる検査です。
トーチクリニックでは不妊症の予防や早期発見を目的としたブライダルチェックに力を入れており、ブライダルチェックとして上記の検査をご提供しております。結婚しているかどうかに関わらず、これらの検査によってご自身の妊娠する力(妊孕性)を早めに知っておくことは非常に重要です。
ブライダルチェックについて、詳しくはこちら
不妊の原因は女性だけではない
ここまで女性側の不妊の原因について解説しましたが、はじめに述べた通り、不妊の原因は男性側にも存在します。そのためカップル双方が検査を受けることが非常に重要です。
男女ともに加齢は不妊の原因となります。早めに検査を受けて妊孕性を意識することは、将来の選択肢を増やすことにつながります。
トーチクリニックは不妊治療に特化したクリニックです。結果に応じて生殖医療専門医や助産師、胚培養士による専門的なカウンセリングも行なっておりますので、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q.不妊になりやすい人の特徴は?
年齢は不妊に影響を与える重要な要素です。女性の場合、30代後半から40代にかけて、卵巣の機能が低下し、卵子の質が低下する傾向があります。男性も加齢により精子の質や量が低下することがあります。
また不健康な生活習慣は不妊のリスクを高めます。喫煙や過度のアルコール摂取、過度のストレスや極端なダイエットは避けましょう。
子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群など医療の介入が必要な疾患が不妊の原因となることがあるため、産婦人科での相談・治療をおすすめします。
Q.不妊の前兆はありますか?
以下のような症状が、不妊の原因を示している場合があります。
・生理の異常:不規則な生理周期、生理時の過度の出血や少なすぎる出血、生理周期が短すぎる・長すぎる、またそもそも生理が来ないといった場合、排卵に問題がある可能性があります。
・下腹部の痛み、重い生理痛:子宮内膜症、卵管の炎症、子宮筋腫といった疾患の可能性があります。
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おわりに
トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。
恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。
不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ご予約はウェブからも受け付けております。
また、すでに不妊治療を受けている方々のお悩みやセカンドオピニオンにも対応しております。セカンドオピニオンを含めたクリニックへのよくあるご質問はこちらをご参考ください。