ホルモン検査

最終更新日時:
2023-10-04
医師
torch clinic医師

女性ホルモン検査

E2・LH・FSH

卵巣予備能(卵巣の機能)を判断するために基本的かつ、とても重要な血液検査です。加齢などにより、卵巣機能の低下とともにFSH基礎値が上昇することが報告されています。

そのためtorch clinicでは最も評価しやすい月経1−5日目の測定を推奨しています。またFSHやLHのバランスは、排卵障害の鑑別にも用いられます。

ホルモンの名前

エストロゲン(E2):卵胞ホルモン

作用:生殖器や乳房の発育、子宮内膜を肥厚させます。

エストロゲンは女性のカラダ作りを助けるホルモンです。

エストラジオール(E2)はエストロゲンの中でもっとも活性が強く、一般的に検査で測定される血中エストロゲンの主成分です。エストラジオールは主に卵子を取り囲む顆粒膜細胞から分泌されます。卵子自身が分泌しているホルモンではありませんが、卵子の成熟度を間接的に示しています。不妊治療においては卵胞成熟の指標として利用されます。

月経中のE2はおよそ10-50pg/ml程度です。100pg/mlを超えている場合には、前周期の遺残卵胞が存在する可能性があります。

排卵が近づき卵胞が成熟してくると、卵胞1個あたり200pg/ml以上のE2を分泌します。E2がこれを下回る場合は「未成熟排卵」の可能性があります。

排卵誘発剤を使用した場合など、卵胞が複数あればその個数分の値を示しますので、E2が3000pg/mlを超えると「卵巣過剰刺激症候群」のリスクが高まります。

LH (lutenizing hormone): 黄体形成ホルモン

作用(女性):卵巣での卵胞成熟と**排卵を促します。**排卵後の黄体を刺激します。下垂体前葉から分泌されます。

*黄体=卵胞が排卵したあとの袋

血中のエストロゲンの上昇が一定時間以上(24〜36時間)継続すると、黄体形成ホルモンが放出され排卵が誘発されます(LHサージ)。LHサージが起きてから36-48時間に排卵するとされます。

LHが持続的に高値でFSHが正常な場合は多嚢胞卵巣症候群を疑います。

作用(男性):睾丸からの男性ホルモンの分泌を促します。

FSH (follicle-stimulating hormone): 卵胞刺激ホルモン

作用(女性):卵巣での卵胞発育を促します。下垂体前葉から分泌されます。 *卵胞=卵子の入っている袋

高値の場合は卵巣機能が低下している可能性があります。

異常高値の場合は卵巣機能不全(早発機能不全、閉経など)、異常低値の場合は視床下部性無月経、下垂体機能低下症などの可能性があります。

作用(男性):睾丸に働き、精子の形成を促します。

高値の場合は造精機能が低下している可能性があります。

異常高値の場合は精巣機能低下症(無精子症など)、異常低値の場合は下垂体性精巣機能低下症、視床下部性精巣機能低下症などの可能性があります。

プロゲステロン(P4):黄体ホルモン

作用:エストロゲンが働いた子宮内膜を分泌期に変化、基礎体温を上昇させ着床の準備を整えます。頸管粘液を減少させ、粘稠性を増加します。排卵後の黄体から分泌されるホルモンです。

異常高値となる場合は排卵誘発剤の使用後に多く、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などを来している場合があります。

<E2・LH・FSH・P4の基準値>

ホルモンの名称働き・意味月経期-卵胞期排卵期黄体期男性の基準値
LH : 黄体形成ホルモン(mIU/ml)成熟した卵胞を排卵させる2.4-12.614.0-95.61.0-11.41.7-8.6
FSH:卵胞刺激ホルモン(mIU/ml)卵胞の発育を促す3.0-10.05.0-24.01.3-6.21.8-12.0
E2:卵胞ホルモン(pg/ml)子宮内膜を厚くして着床の準備をする28.8-196.836.4-525.944.1-491.914.6-48.8
P4:黄体ホルモン(ng/ml)厚くなった子宮内膜を維持する0.3以下5.7以下2.1-24.20.2以下

AMH:抗ミュラー管ホルモン

作用:性分化の際に活躍する(男性のミュラー管を退化させる)ホルモンです。前胞状卵胞の顆粒膜細胞から分泌されます。

臨床の現場においては、残存する卵子の数や治療に反応する卵胞の数を評価する指標として利用されており、年齢とともに減少します。よく卵巣年齢とも言われますが、これは適切な表現ではなく、卵子の数を反映し質の良し悪しを表すものではありません

異常高値の場合は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、異常低値の場合は卵巣機能不全(早発機能不全、閉経など)の場合があります。

<AMH測定値の年齢別分布(中央値)>

年齢(歳)N(例)中央値(ng/ml)95%RI(ng/ml)
≦275584.690.76〜14.18
283874.270.84〜12.44
295554.140.86〜11.97
306634.020.79〜12.74
318653.850.44〜13.08
328723.540.62〜13.87
339593.320.40〜12.76
3410643.140.38〜11.16
3511912.620.37〜10.18
3611222.50.33〜9.93
3711542.270.24〜8.50
3812301.90.11〜7.81
3911761.80.13〜7.45
4010571.470.08〜6.13
418881.30.06〜5.52
4271510.05〜5.81
435090.720.03〜4.49
443090.660.03〜3.98
451440.410.03〜3.43
46≦1270.30.02〜1.67
全群155452.360.12〜10.67

参考:山本貴寛. 日本生殖医学会雑誌61.487.2016.

プロラクチン(PRL):乳腺刺激ホルモン

作用:妊娠中や分娩後に多く分泌され、母乳を作る働きをします。下垂体前葉から分泌されます。多量に分泌されることで無排卵や無月経、黄体機能不全を引き起こす可能性があります。

高PRL血症の頻度は、健康な女性で0.4%、月経異常のある女性で9.0%−17.0%と言われています。月経異常や乳汁分泌がある場合は測定が推奨されています。高PRL血症の鑑別として機能性高PRL血症、下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、薬剤性(向精神薬、抗うつ剤など)を疑います。

基準値:4.91〜29.32ng/mL

※PRLは1日の中でも変動が見られ、夜間に高く午前中に低くなります。食事や運動・ストレスによって一過性に高値となるため、空腹・安静時の測定が好ましいとされます。

参考:FML

テストステロン(TES):男性ホルモン

作用:テストステロン(Testosterone)は男性ホルモン(アンドロゲン)のひとつです。骨格や筋肉、体毛などの男性らしいカラダ作りを助けるホルモンです。男性の場合は主に精巣から分泌されます。精巣は4~5cm程度の卵型で、陰嚢の中にあります。精巣には精粗細胞があり、80日程度の時間をかけて細胞分裂をし精子となり、毎日約3000万個の精子がつくられています。女性も副腎や卵巣でテストステロンを分泌していますが、テストステロンが高い場合多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)など排卵障害を認める場合があります。

年齢男性(pg/mL)女性(pg/mL)
20-298.8〜31.71.5〜4.9
30-397.3〜28.90.8〜4.1
40-496.2〜24.90.5〜4.0
50-596.1〜25.0未設定
50-595.8〜18.2未設定

基準値(参考:FML, 加齢男性性腺機能低下症候群 – LOH症候群 – 診療の手引き)

甲状腺刺激ホルモン(TSH)

作用:甲状腺(前頸部)を刺激して、甲状腺ホルモンの分泌を促します。甲状腺機能異常は不妊症や流産の原因となることがあります。

異常高値の場合甲状腺機能低下症(橋本病)、異常低値の場合甲状腺機能亢進症(バセドウ病・亜急性甲状腺炎)などを疑います。

基準値:0.610〜4.230mIU/L

※不妊治療中は自己抗体の有無によって一般とは異なる厳しい基準値(TSH<2.5μIU/mL)で管理します。

(参考:FML)

甲状腺ホルモン(FT4):遊離型サイロキシン

作用:甲状腺ホルモンであるサイロキシン (T4) 量は、甲状腺機能亢進症では増加、機能低下症では減少します。血中 遊離型サイロキシン(FT4)量の測定は、甲状腺機能診断の有用な指標となります。

基準値:0.75~1.45 (ng/dL)

(参考:SRL総合検査案内)

βhCG:ヒト絨毛性ゴナドトロピン

作用:ヒト絨毛性ゴナドトロピンとは、妊娠中に産生されるホルモンです。受精卵が着床して妊娠が成立すると、形成された胎盤の絨毛という部分からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌されます。このホルモンは尿や血液から検出することができます。hCGは妊娠8~12週にピークに達した後出産まで検出されます。

妊娠週数hCG(mIU/ml)
非妊娠時8.8〜31.7
3週0〜50
4週20〜500
5週500〜5,000
6週3,000〜19,000

基準値(参考:BML)