体外受精の採卵とは?スケジュールや痛み・個数について解説

最終更新日時:
2024-04-25
市山 卓彦
市山 卓彦 医師
院長 婦人科 生殖医療科 医師
2010年順天堂大学医学部卒。2012年同大学産婦人科学講座に入局、周産期救急を中心に研鑽を重ねる。2016年国内有数の不妊治療施設セントマザー産婦人科医院で、女性不妊症のみでなく男性不妊症も含めた臨床及び研究に従事。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、優秀口頭発表賞および若手研究者賞を同時受賞。2021年には世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど、着床不全の分野で注目されている。2019年4月より順天堂浦安病院不妊センターにて副センター長を務め、2022年5月トーチクリニックを開業。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

採卵とは

採卵とは、卵巣で育った卵胞から卵子を得ることをいいます。一般的には、腟から針で卵胞を穿刺して内部の液を吸引することで、卵子を回収します。

詳しくはこちらもご参考ください。

採卵と体外受精

体外受精とは、採卵によって卵胞から取り出した卵子を、体外で精子と受精させる治療です。受精によって得られた胚(受精卵)は、数日間育てて、発育のよいものを子宮内へ戻します。

体外受精については、こちらもご参考ください。

体外受精の採卵手順とスケジュール

卵巣刺激によって卵胞を育てて、採卵2日前の夜に薬剤で排卵誘発を行います。、採卵後、卵子と精子の状態を確認して胚移植の方法を決定します。手順について、詳しくはこちらもご参考ください。

また、採卵当日のおおまかな流れについては動画でも説明しています (こちらからご覧いただけます)。

卵巣刺激

生理1日目から3日目の間に受診し、卵胞を育てる飲み薬もしくは注射を行います。その後、卵胞の大きさにあわせて採卵2日前の夜に、卵胞を成熟させるホルモン剤の服用(注射か点鼻スプレー)をしていただきます。成熟卵を得るために非常に重要な過程ですので、指定された服用時間を忘れたり遅れたりしないようにしましょう。

採卵

採卵当日は、あらかじめ朝7時に排卵を抑える座薬を挿入していただきます。その後来院していただき、採卵を行います。採卵の際に静脈麻酔といって、眠っている間に採卵が終わる麻酔方法を選ぶこともできます、担当医とご相談ください。1時間ほど休んでいただき、お身体に問題がなければご帰宅いただけます。

採卵の時間について

採卵の時間は、採卵の個数にもよりますが、平均5~10分ほどで終わります。麻酔のある場合は、前後に麻酔の時間が加わります。

採卵の個数について

排卵誘発によって成熟した卵胞の数で採卵の個数も変わりますが、平均すると10個前後です。採卵数が少ない場合は局所麻酔のみで採卵することができますが、多い場合には静脈麻酔をおすすめします。

採卵の痛みについて

膣壁は元々痛みを感じにくい部位ですので、採卵の個数によっては麻酔が必要ない場合もあります。局所麻酔では痛みは少ないことが多いものの、鈍痛を感じる方もいらっしゃいます。静脈麻酔を行う場合は、眠っている間に採卵が終了するため、痛みはありません。

採精

卵子は、体外に出て時間が経つほど受精能が低下するため、採卵当日には精子も必要となります。そのため凍結精子をあらかじめ準備していない場合は、当日朝にマスターベーションで採取していただき、精子を持参していただきます。

受精

採卵で取り出した卵子を受精させるには、体外受精と顕微授精という2種類の方法があります。受精障害がある場合や、精子の状態によっては、顕微授精が推奨されることがあります。

体外受精(IVF)

体外受精では、培養した卵子に精子をふりかけることで受精を促します。顕微授精に比べ高度な技術が不要で、価格も安価です。精子自体の力を利用するため、自然に近い授精方法ともいえます。

詳しくはこちらもご参考ください。

顕微授精(ICSI)

顕微授精では、卵子に細いガラス針を刺して精子を直接卵子に注入します。顕微鏡下で行う高度な授精法であり、体外受精ではうまく受精できない場合に行われます。

詳しくはこちらももご参考ください。

胚培養

採卵した卵子を受精させて子宮に戻すまでの間、培養器で受精卵を育てます。通常は採卵後3〜6日間行われます。卵管で通常行われる受精卵の成熟を模す必要があるため、体内環境に近づけた状態で培養を行います。

胚移植

採卵で得られた卵子を受精させた後、子宮内に受精卵を戻すことを胚移植といいます。採卵した周期にそのまま行う新鮮胚移植と、一度凍結した受精卵を移植する凍結胚移植があります。移植胚は、3日目の初期胚移植と、5日目の胚盤胞移植の2通りがあります。

妊娠判定

受精卵が着床すると、胎盤から特定のホルモンが分泌されます。このホルモンを血液検査で検出できた場合、妊娠が成立したとみなします。移植1回での妊娠率は、年齢にもよりますが、約23%とされています。詳しくはこちらもご参考ください。

体外受精の採卵後の過ごし方

採卵後1時間ほど安静にしていただき、検査で問題がなければそのままご帰宅いただけます。当日は激しい運動や性交渉を避け、湯船には浸からずシャワー浴にしてください。また、麻酔を行った場合は、当日は車の運転を避けていただきます。

よくある質問

体外受精の採卵前に気をつけることはありますか?

麻酔を行う場合は食べ物が肺に流れ込む誤嚥のリスクがあるため、当日の採卵前には食事ができません。排卵に関するお薬の服用を忘れないようにしてください。

採卵の痛みはどれくらいありますか?

採卵の際の痛みの感じ方は個人差がありますが、一般的には、発育した卵胞数が多いと穿刺の回数も増えるため、痛みが強くなります。鎮痛薬や麻酔を使用することができます。また、子宮内膜症などの既往歴や卵巣の位置によって、痛みが強くなる場合もあります。

採卵後に痛みがあります。どれくらい続きますか?

採卵後の痛みは徐々に軽減しますが、鎮痛剤を服用していただいて大丈夫です。ただし、痛みが持続する場合や強くなる場合は、採卵に伴う合併症の可能性がありますので、必ず受診をご相談ください。