基礎体温が低い期間(低温期)しかない場合に起こる影響|正しい測り方や周期の見方も解説

市山 卓彦
市山 卓彦 医師
理事長・恵比寿院院長 婦人科 生殖医療科 医師
2010年順天堂大学医学部卒。2012年同大学産婦人科学講座に入局、周産期救急を中心に研鑽を重ねる。2016年国内有数の不妊治療施設セントマザー産婦人科医院で、女性不妊症のみでなく男性不妊症も含めた臨床及び研究に従事。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、優秀口頭発表賞および若手研究者賞を同時受賞。2021年には世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど、着床不全の分野で注目されている。2019年4月より順天堂浦安病院不妊センターにて副センター長を務め、2022年5月トーチクリニックを開業。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

妊活中に基礎体温をつけ始めると、「体温がずっと低いままで、高温期が見当たらない」「基礎体温が他の人より低い気がする」と、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、基礎体温の基本的な知識から正しい測り方、周期の見方、そして低温期しか続かない場合に起こり得る影響について詳しく解説します。基礎体温が低い期間が続いている方は、ぜひ参考にしてみてください。

基礎体温とは

基礎体温とは、朝起きてすぐに身体を動かす前の、最も安静な状態の体温を指します。毎日同じ条件で測ることで、月経周期の変化を把握できる大切な指標になります。

基礎体温がわかると何が良い?

排卵日をある程度予測できる

排卵後は黄体ホルモン(プロゲステロン)が増え、体温が0.3〜0.5℃ほど上昇するため、グラフ上で排卵期の目安がつきやすくなります。

ホルモンバランスの乱れを早期に察知できる

通常は低温期(卵胞期)と高温期(黄体期)の2相に分かれますが、何らかのトラブルで二相にならない場合には無排卵やホルモン異常の可能性があります。

妊娠しやすいタイミングを把握できる

妊娠を希望する場合、排卵のタイミングを把握することは大切です。基礎体温を計測することで排卵のタイミングを予想しやすくなります。

基礎体温の測り方と周期の見方

では、基礎体温はどのように測ればいいのでしょうか。正しい測り方と周期の見方について解説しましょう。

正しい測り方

1.基礎体温計を使用する

基礎体温は脇の下で測定する一般的な体温計とは違い、口の中で測定するため、専用の基礎体温計が必要です。

2.起床直後に測定する

目覚ましが鳴ったら起き上がる前に体温計を口の中に入れて測ります。体を動かすと体温が上がってしまうので、なるべく体を動かさずに測定したほうが正確です。基礎体温計は横になった状態でも手が届く場所に置いておきましょう。

3.舌下で測る

舌の奥に体温計を挟み、唇を閉じて身体を動かさないようにしながら計測します。

4.毎日なるべく同じ時間に測る

平日と休日で起床時間が大幅に違う方は、時間の誤差が記録に影響する場合があります。やむを得ないときは、何時に測定したかをメモしておきましょう。

基礎体温の周期の見方

基礎体温は、一般的に1カ月の月経周期の中で以下のように変化します。

・月経期(低温期)
・卵胞期(低温期)
・排卵期(体温が一気に上がるタイミング)
・黄体期(高温期)

排卵が起こると高温期に移行し、次の生理が始まる直前に体温が下がり、低温期に移行します。多くの方は、低温期が36.5℃前後、高温期が37.0℃前後を示します。

低温期が14日程度続き、その後高温期が14日程度続くのが正常な状態です。

つまり、体温が低めの低温期と、ホルモンの影響で体温が高めになる高温期が交互に現れる、二相性を示すのが基礎体温の特徴です。

基礎体温が低い状態(低温期)が続く原因

高温期が見当たらず、常に低温期という場合は、以下の原因や影響が考えられます。

ホルモンバランスの乱れ

基礎体温が低温期と高温期の二相性を示す理由は、前述のとおりプロゲステロンが体温を上昇させるためです。プロゲステロンの分泌が不足すると、排卵後に体温が上がらなかったり、わずかにしか上がらないことがあります。

ストレスや睡眠不足、過度なダイエットなど、生活習慣が乱れるとエストロゲンやプロゲステロンの分泌に影響が出ることがあります。無排卵月経の可能性

基礎体温の値がほぼ変わらず横ばいで、低い状態が続く場合は、無排卵月経の疑いがあります。無排卵月経は無排卵周期症とも言われ、生理の出血はあるのに、排卵を伴わない状態のことを指します。

生理周期が不順で生理の出血量・生理の期間の異常があり、基礎体温が一相性(基礎体温の変化が少なく横ばいが続いている)を示す場合、無排卵月経と診断されます1)

無排卵月経になりやすい時期として初経から1〜2年の間や思春期、閉経前などが挙げられます。一方で、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と呼ばれる病気によって無排卵月経となっているケースもあるため、原因を調べることが重要です。

無排卵月経が疑われる特徴

無排卵月経が起こっている場合、上のグラフのように低温期が続き高温期に移行しない一相性を示すことが多いです。

・基礎体温表で二相性が見られない
・月経はあっても経血量が普段より極端に少ない、または多い
・月経周期が不順で、頻発月経(月経周期が24日以内)や希発月経(月経周期が39日以上)がある
・月経周期以外の出血がある

これらの症状が続く場合は、無排卵月経の可能性があります。できるだけ早めにクリニックで相談・検査を受けることが大切です。

おわりに

トーチクリニックでは、将来妊娠を考えている方向けのブライダルチェックなども提供しています。ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。

恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、土曜日も開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております。

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また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考にしてください。

ブライダルチェック
ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。

参考文献

1)日本女性心身医学会. 女性の病気について. 日本女性心身医学会ウェブサイト
https://www.jspog.com/general/details_07.html