AMHを改善したい!AMHが妊娠に与える影響や低下してしまう原因・改善方法の有無を解説

最終更新日時:
2024-10-22
市山 卓彦
市山 卓彦 医師
院長 婦人科 生殖医療科 医師
2010年順天堂大学医学部卒。2012年同大学産婦人科学講座に入局、周産期救急を中心に研鑽を重ねる。2016年国内有数の不妊治療施設セントマザー産婦人科医院で、女性不妊症のみでなく男性不妊症も含めた臨床及び研究に従事。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、優秀口頭発表賞および若手研究者賞を同時受賞。2021年には世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど、着床不全の分野で注目されている。2019年4月より順天堂浦安病院不妊センターにて副センター長を務め、2022年5月トーチクリニックを開業。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

AMHとは

AMHとは、抗ミュラー管ホルモン(Anti-Mullerian Hormone)の略称で、発育過程の卵胞から分泌されるホルモンです。卵巣予備能の評価指標によく用いられます。女性のAMHは女性が生まれたときから分泌され始め、閉経するまで分泌され続けます。

血液中のAMHの分泌量は25歳頃にピークを迎え、その後徐々に減少すると考えられています。

AMH検査とは?妊娠や不妊治療との関係は?

AMH検査は、血液中のAMH濃度を測定する血液検査の一つです。この検査により、卵巣にどのくらいの卵子が残っているかを推測することができるため、多くの不妊治療クリニックで治療方針を決める際の参考にされています。

また、AMHは他の女性ホルモンに比べて月経周期による変動が少ないため、月経周期によらずいつでも測定が可能です。

なお、2024年4月に行われた診療報酬の全面改定により、2024年6月からAMH検査は一般不妊治療の方にも保険適用されるようになりました。ただし、AMH検査が保険適用となるのは、検査頻度が6か月に1回までとなっているため、その点に注意してください。

AMH値からわかるコトは?低いと妊娠に影響する?

AMH値が示すのは原始卵胞(休眠している卵胞)の数であり、卵子の質とは無関係です。つまり、値が低いからといって妊娠しにくい、高いからといって妊娠しやすい、というわけではありません。AMH値からわかるのは、あくまで「AMHを分泌している卵胞の数がどのくらいあるのか」ということです。

AMH値が低い場合、AMHを分泌している卵胞の数が少ないため、原始卵胞の数が少ないと推測されます。しかし、値が低いからといって必ずしも妊娠できる可能性が低いわけではなく、AMH値が低くても自然妊娠している方もいます。妊娠において大切なのは卵子の質であり、AMH値が低くても質の良い卵子が排卵されれば、自然妊娠できる可能性はあります。

一方、AMH値が正常範囲よりも高い場合は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と呼ばれる、月経異常や不妊の原因となる病気が疑われることもあります。

AMHと不妊治療との関係

AMHは不妊治療を行うにあたって、治療方針を決定するための参考情報として活用されています。特に、一般不妊治療では、不妊治療のステップアップのスピードや、体外受精・胚移植といった生殖補助医療(ART)に進むタイミングを決めるための判断材料として利用されています。

また、生殖補助医療(ART)において、1回の採卵で得られる卵子の数とAMH値には相関関係があり、卵巣刺激法の選択や妊娠可能性の予測に有用であると考えられています。

AMHが低下してしまう原因

AMHが低下してしまう原因は主に3つあります。

1:加齢

AMHの分泌量は25歳頃をピークに徐々に下降し、年齢とともに減少していきます。

2:疾患

早発卵巣不全や子宮内膜症などがAMH値の低下に影響を与えることがあります。

3:喫煙

喫煙習慣がある人はAMH値低下のリスクがあると考えられています。

AMHの年齢別の中央値

女性は生まれつき約200万個の原子卵胞(卵子の入った袋)を持っており、AMHも生まれたときから分泌され始めます。

AMH濃度は思春期から20代前半にピークを迎え、その後は加齢に伴い低下し、閉経後はほぼ検出されなくなります。AMH値の年齢による変化の様子は以下のとおりです。

年齢(歳)中央値(ng/mL)
〜274.69
284.27
294.14
304.02
313.85
323.54
333.32
343.14
352.62
362.5
372.27
381.9
391.8
401.47
411.3
421
430.72
440.66
450.41
46〜0.3
全体2.36

出典:アクセス AMH(IVD)添付文書 (2024年8月作成)

AMHを改善する方法はある?

AMHを改善(増加)させる方法はありません。

女性のAMHの分泌量は、上の図のように年齢とともに減少し、基本的に増えることはないです。一人の女性が卵巣で産生できる卵子の数は決まっていると考えられており、生活習慣の改善などでAMHの分泌が増加されるかどうかについては、2024年10月現在、明確なエビデンスはありません。

AMHに関するよくある質問

Q:AHMを改善したい場合のサプリメントや漢方、自然療法(食事など)はある?

AMHを改善するような漢方・サプリメント・自然療法は現在のところありません。

女性が卵巣で産生できる卵子の数は決まっていると考えられており、特別な治療や生活習慣の改善によって卵子の数を増やすことはできないためです。

Q:卵子の質の低下防止や妊娠に向けた身体づくりで大切なことは?

食生活の見直し

妊活中は、バランスの良い食事を取るように心がけることが大切です。しかし、日々の食事だけでは摂取しにくい栄養素もあるため、サプリメントなどを上手に活用して補うようにしましょう。具体的に意識すべきポイントは以下のとおりです。

出典:国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所ホームページ https://www.nibiohn.go.jp/eiken/ninsanpu/
「お母さんと赤ちゃんの健やかな毎日のための10のポイント」を加工して作成

冷え性対策

体が冷えていると血行が悪くなり、子宮に酸素や栄養素が十分に届かず、子宮内膜へ受精卵が着床しにくくなると言われています。また、同様の理由で卵巣の機能低下に関連している可能性もあります。

40℃前後のぬるま湯にゆっくり浸かったり、足首やお腹を冷やさないような服装を心がけたりするなど、適度に体を温めるようにしましょう。

ストレス解消

ストレスは、女性の妊娠に深く関わるホルモンである黄体形成ホルモン(LH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌、エストロゲンの合成を低下させ、月経周期や卵子の質の低下に影響を及ぼすおそれがあります。

また、ストレスによる自律神経の乱れは不妊症や不育症の原因となります。これは女性に限らず、男性もストレスが精子濃度や運動率、正常形態率などの低下の原因になり得ます。

ストレスを完全になくすことは難しいですが、妊活中はストレスを溜めないよう、自分に合った適切なストレス解消方法を見つけるようにしましょう。

十分な睡眠

睡眠障害や睡眠不足は妊娠に悪影響を及ぼす可能性があるため、規則正しく質の高い睡眠を取ることが大切です。快適な睡眠を確保するための睡眠時間やパターンは人によって異なりますが、生殖年齢の成人には一般的に6〜8時間程度、少なくとも6時間以上の睡眠時間を確保することが推奨されています。

質の高い睡眠を取るために、日中にしっかりと太陽の光を浴びたり、適度な運動を行うようにしましょう。なお、寝酒や午後3時以降のカフェイン摂取は、入眠を妨げたり睡眠の質を低下させるおそれがあるため、できるだけ控えるようにしましょう。

適度な運動

適度な運動を行うことによって血液の流れが良くなります。女性の場合、特に骨盤内の血流が増加し、生殖器官の機能が向上します。しかし、BMIが25未満の女性が激しい運動を習慣的に行うと、妊娠率が低下するおそれもあるとされています。

このことから、BMIの数値にかかわらず、ウォーキングのような負荷の少ない運動を行うことが、安全に妊娠率を向上させる可能性があると考えられます。

適切な体重管理

ダイエットや不摂生によりエネルギーの摂取量が少ない傾向にあると、不妊を引き起こす可能性があります。また、朝食を食べないことが多かったり、食事の時間が不規則であることも、不妊を引き起こす要因となります。

妊娠しやすいとされるBMIは20〜24の範囲とされています。過度の肥満や痩せすぎは不妊の一因になり得るため、適切な体重管理を心がけましょう。

おわりに

トーチクリニックでは、将来妊娠を考えている方向けのブライダルチェックなども提供しています。ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。

トーチクリニックは恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております。

また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考ください。