卵巣から卵子が排出される排卵日は、妊活において重要な時期です。排卵日は、基礎体温の変化、排卵日予測検査薬などで予測できます。この記事では排卵日の予測や基礎体温の測り方、月経周期などについて解説します。
排卵日とは
排卵日とは「卵巣から卵子が排出される日」をいいます。排卵日前後は排卵期と呼ばれ、おりものは精子が子宮内に進んでいきやすいように変化します。卵子と精子が出会いやすく、妊娠する可能性が高いタイミングです。
排卵日は「オギノ式」と呼ばれる計算方法を用いて予測できます。オギノ式では、月経予定日から14を引いた日を排卵日と推定します。例えば月経周期が28日の場合「28−14=14」で、月経予定日から14日前が排卵日になると考えます。
排卵日は基礎体温から予測できる
排卵日は基礎体温から予測ができます。基礎体温とは、朝起きてすぐ、寝たままの状態で舌の下で測定した体温です。婦人体温計で測定します。
基礎体温は通常二相性を示し、およそ2週間ごとに低温期と高温期を繰り返します。月経が始まる直前に体温は低くなり、排卵後はプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響によって、体温は0.3~0.5℃程度高くなるのです1)。この低温期から高温期へ移行した日が排卵日と予測できます。
基礎体温は排卵日の予測のほか、心や体のリズムを知るのにも有効です。
基礎体温と月経周期の関係性

月経周期はホルモンによって調整されており、月経期のほか、卵胞期、排卵期、黄体期に分けられます。それぞれの時期に起こる女性の体の変化を見ていきましょう。
月経期~卵胞期
卵胞期は卵子が排出される前の期間で、月経終了後から排卵期までの期間です。月経開始から排卵までの期間は平均的には13〜14日間です。卵胞期には、卵巣にある卵胞が発達します。
月経期のはじめでは、エストロゲンとプロゲステロンの血中濃度が低下するため、子宮内膜が剥がれ落ち、月経が起こります。同時期に、下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH:follicle stimulating hormone)の量がわずかに増加し、刺激によって何個かの卵胞が成長をはじめます。
各卵胞には1つずつ卵子が入っている状態です。卵胞期の後半になると、卵胞刺激ホルモン(FSH)の血中濃度は低下し、成長を続けるのは1つの卵細胞だけになります。この卵胞からはエストロゲンが分泌され、徐々に分泌量が増加し子宮内膜は厚くなっていきます。

排卵期
排卵期は、脳下垂体から分泌される、黄体形成ホルモン(LH:luteinizing hormone)※)の分泌量の急上昇によって始まります。この黄体形成ホルモンの血中濃度の急上昇をLHサージといいます。LHサージの開始から34~36時間後、LHの血中濃度のピークから約10〜12時間後に卵子が放出されます。放出された卵子が受精できる期間は、長くても12時間程度です2)。
一方で、精子は射精後、女性の体内で3〜5日間生存できるといわれています。
以上のことから、各周期において妊娠可能期間は約6日で、排卵の5日前から排卵の1日後までと考えられています。ただし、実際の妊娠可能日数は個人差があります。
人によっては、排卵の前後に「排卵痛」または「中間痛」と呼ばれる下腹部痛が起こる場合もあります。下腹部の左右どちらかに感じる鈍い痛みです。原因は明らかにはなっていませんが、卵胞の発育や排卵時の微量な出血により起こると考えられています。
※)黄体形成ホルモン(LH):女性ホルモンの一種で、普段から少量分泌されている。排卵を促す働きがある。
黄体期
黄体期は、排卵後から月経直前までの期間です。妊娠が成立しない場合、14日間程度続き月経の直前で終了します。
排卵を終えた卵胞は黄体に変化し、プロゲステロンを分泌します。黄体期はエストロゲンの分泌量も増加し、受精卵が着床した場合に備えて子宮の準備を整えるのです。
受精が起こらなかった場合や受精卵が着床しなかった場合は、黄体は退化します。エストロゲンとプロゲステロンの分泌量は低下し、次の月経周期が始まります。
基礎体温の正しい測り方
基礎体温は、次の月経予定日や妊娠しやすい時期、妊娠の可能性を予測するのに役立ちます。必要物品や正しい測り方を知り、自分の体の状態を把握しましょう。1日くらい忘れても問題ありません。継続することが大事です。
必要なもの
基礎体温の測定に必要なものは以下のとおりです。
- 婦人体温計
- 基礎体温表(薬局や病院などで購入可能。パソコンでダウンロードできるものもある。スマートフォンのアプリなどもある)
測定方法
測定は以下の方法でおこないましょう。
- 就寝前に婦人体温計を枕元に準備しておく。
- 朝目覚めたら、寝たままの状態で舌の下に体温計を入れ、約5分間(デジタル体温計は電子音が鳴るまで)測定する。
- 測定中は口を閉じたままにする。
- 基礎体温表に記録する。
- 月経や体調不良、睡眠状況、性交日などは一緒にメモしておく。
- 連日測定し、測定を忘れたときは欄を空白にし、翌日とは実線で結ばない。
基礎体温以外で排卵日を知る方法
排卵日予測検査薬を使用する
排卵日予測検査薬とは、尿中の黄体形成ホルモン(LH)を検出し、LHサージをとらえるための検査薬です。
排卵予測検査薬を使用するとLHサージを把握でき、排卵日の予測に利用できるのです。
排卵予測検査薬については排卵日予測検査薬の基礎知識で詳しく解説していますので、合わせてお読みください。
クリニックで検査を受ける
妊娠を望むカップルが避妊をしていないにも関わらず、1年以上妊娠に至らない場合は、不妊症の可能性があります。早めに検査をし、治療を開始することが重要です。
検査では、排卵の有無、卵管や精子の状態を調べます。女性の検査は月経周期に合わせておこなわれるため、検査を終えるまでに1〜3か月程度かかります。女性のおもな検査は以下のとおりです。
排卵日と基礎体温に関するよくある質問
排卵日と基礎体温についてのよくある質問をまとめました。
Q:排卵後に基礎体温が上がらない(二相性にならない)のは問題?
基礎体温は一般的に、女性ホルモンの影響により低温期と高温期の二相性を示します。しかし、排卵日後も基礎体温が上がらず、低温期が続くようなら、無排卵が考えられます。月経周期が不順で、月経量・月経持続期間の異常があるときなどです。
無排卵月経は、初経が始まって間もない頃や閉経前に多く見られ、不妊の原因にもなります。視床下部の機能異常、多囊胞性卵巣症候群(PCOS)の場合、無排卵月経を引き起こす可能性もあります。
無排卵月経の可能性があるときは、早めに産婦人科を受診しましょう。
詳しくは、排卵してない?無排卵月経が疑われる特徴や原因・治療法を紹介をお読みください。
Q:排卵後に基礎体温の高温期が長く続くのは正常?
排卵後の高温期は、通常12〜14日続きます。16日以上高温期が続く場合は、妊娠の可能性があります1)。基礎体温表を持参し、産婦人科を受診するようにしてください。
Q:不妊治療において基礎体温の測定は必須?
妊娠を望む場合、基礎体温を測定した方がよいと考える方は多いでしょう。しかし、不妊治療において、基礎体温の測定は必ずしも必要ありません。
排卵が起きているかどうかの手がかりにはなりますが、経腟超音波検査と排卵予測検査をおこなえば、排卵日の特定が可能です。
おわりに
参考文献
1)厚生労働省事業.東京大学産婦人科学講座監修.ヘルスケアラボ.“基礎体温”.女性の健康推進室 ヘルスケアラボウェブサイト
https://w-health.jp/fetation/temperature/
2)MSDマニュアル家庭版.“月経周期”.MSDマニュアル家庭版ウェブサイト
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/22-女性の健康上の問題/女性の生殖器系の生物学/月経周期