妊娠初期のお腹の張りとはどのような感じ?原因や対処法、受診を推奨する症状についても解説

最終更新日時:
2024-11-15
市山 卓彦
市山 卓彦 医師
院長 婦人科 生殖医療科 医師
2010年順天堂大学医学部卒。2012年同大学産婦人科学講座に入局、周産期救急を中心に研鑽を重ねる。2016年国内有数の不妊治療施設セントマザー産婦人科医院で、女性不妊症のみでなく男性不妊症も含めた臨床及び研究に従事。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、優秀口頭発表賞および若手研究者賞を同時受賞。2021年には世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど、着床不全の分野で注目されている。2019年4月より順天堂浦安病院不妊センターにて副センター長を務め、2022年5月トーチクリニックを開業。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

妊娠初期のお腹の張りとはどのような感じ?

妊娠をすると、妊娠経過とともにホルモンバランスや子宮の大きさの変化など、さまざまな要因によりお腹の張りを感じやすくなります。お腹の張りは、妊娠中期・後期だけでなく、妊娠初期に感じる人も少なくありません。

妊娠初期は子宮の収縮や肥大によって感じる物理的なお腹の張りよりも、「下腹部が重い」「便秘のような感覚」「ガスが溜まっているみたい」といった症状を自覚される方が多いです。

妊娠初期にお腹の張りを感じる原因

妊娠初期にお腹の張りを感じる原因は、大きく分けると生理的なものと病的なものに分かれます。ここでは、生理的な要因によって感じるお腹の張りの代表的な原因について解説します。

からだの冷え

妊娠中はホルモンバランスや自律神経の乱れなどによって体が冷えやすくなります。体が冷えると血流が悪化し、子宮の血管が収縮しやすくなるため、お腹が張っていると感じやすくなります。

また、冷えによって胃腸の動きが悪くなって便秘につながり、ガスや便が溜まることによってお腹の張りを感じることもあります。

ストレスや疲れ

ストレスや疲れが溜まると自律神経が乱れやすくなります。そのため、血流が悪化し、子宮の血管が収縮しやすくなるため、お腹の張りを感じやすくなるのです。

また、血流が悪化することによってからだが冷えやすくなることで、胃腸の動きが悪くなり、ガスや便が溜まることによってお腹の張りを感じることもあります。

動きすぎ

子宮は普段やわらかく緩んでいますが、激しい運動などで動きすぎると一時的に子宮が収縮してお腹の張りを感じることがあります。

また、長時間立ちっぱなしで過ごしていた場合なども、足や腰などの筋肉などからの刺激の影響でお腹の張りを感じることがあります。

もし、動きすぎや立ちっぱなしなどが原因と考えられる場合は、なるべく椅子に座るなどして安静にした状態で休息しましょう。

便秘

妊娠初期は、便秘が原因でお腹の張りを感じることがあります。妊娠中はホルモンバランスや食生活の変化により、便秘になりやすくなります。

妊娠中は女性ホルモンである黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌量が増加します。黄体ホルモンには腸の動きを抑制する働きがあるため、便秘になりやすいと考えられています。

また、つわりによる食生活の変化や水分摂取の不足も便秘の原因となります。

妊娠初期にお腹の張りを感じたときの対処法

妊娠初期にお腹が張ることは珍しいことではなく、多くの場合は生理的な反応によるもののため、軽い痛みであれば痛みがおさまるまで横になるなどしてなるべく安静に過ごしましょう。安静にして落ち着くようであれば、引き続き様子を見て過ごしても問題ありません。

ただし、しばらく安静にしていてもお腹の張りや痛みが治らなかったり、少量でも出血を伴ったりするようであればかかりつけの産婦人科に相談してください。

また、以前と比べて痛みが強かったり、痛みを伴うお腹の張りの頻度が増えたりしている場合も同様に、かかりつけの産婦人科に相談しましょう。

妊娠初期でお腹の張り以外に痛みや出血があるときは受診を推奨

妊娠初期にお腹の張り以外に痛みや出血の症状がある場合は、病気のサインであることがあります。ここでは、妊娠初期にお腹の張りに伴って痛みや出血の症状があるときに原因となる可能性のある病気について解説します。

切迫流産

妊娠22週未満の方に腹痛や出血の症状がある場合、切迫流産と診断されます。病名に“流産”と付きますが、流産していそうな人という意味ではなく、「流産を念頭において治療にあたる人」全員を切迫流産と診断します。切迫流産と診断されたとしても必ずしも流産するわけではないため、診断を受けても過度に心配することなく、主治医と相談して治療を行いましょう。

切迫早産

妊娠22週から37週未満で出産してしまうことを早産といい、早産になる危険性が高い状態のことを切迫早産といいます。切迫早産の兆候としては、安静にしても治まらないお腹の張りや痛み、性器からの出血、破水感、胎動の減少などが自覚症状として現れます。

内診や経腟エコー検査などで切迫早産のリスクがあると判断された場合は、早産を予防するために、子宮収縮抑制剤を用いることがあります。状態が落ち着いている場合は通院治療となりますが、早産となる危険性がかなり高いと判断された場合は入院して治療を受けることになります。

子宮外妊娠

子宮外妊娠は異所性妊娠とも呼ばれ、受精卵が子宮体部以外の場所に着床してしまうことをいいます。着床する部位によって卵管妊娠・卵巣妊娠・子宮頸管妊娠・腹腔妊娠・子宮角妊娠などに分類され、最も頻度が高いのは卵管妊娠です。

子宮外妊娠の主な症状は、性器からの出血や下腹部の痛みで、痛みの強さは鈍い痛みや差し込むような痛みなど人によって異なります。万が一、子宮外妊娠で妊娠部位の破裂が起こると、下腹部の激しい痛みやふらつき、症状がひどいと失神するケースもあります。

子宮外妊娠は100件の妊娠のうち約2件の割合で起こると考えられており、子宮外妊娠では胎児は生存できず母体にも影響を及ぼすおそれがあるため、早めの診断と治療が必要となる病気です。

子宮外妊娠について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

胞状奇胎(ほうじょうきたい)

胞状奇胎(ほうじょうきたい)は、妊娠した子宮内にぶどうの房のような組織が大量に発生する病気です。胞状奇胎は、受精卵に異常が生じることにより発生し、500件の妊娠のうちに1件程度の割合で起こると考えられています。。主に流産の後や出産後に子宮に残った細胞、子宮外妊娠が発生した場所などから発生しますが、稀に妊娠中に胎児が生存している場合でも発生する場合があります。

胞状奇胎は症状に乏しく、胞状奇胎だけに現れるような特徴的な症状はありませんが、性器からの出血や腹痛、吐き気などの症状が現れることがあります。妊娠2〜3か月程度の時期に超音波検査(経膣エコー)で発見することができるため、性器からの出血や腹痛などの症状がある場合は担当医に相談することを推奨します。

妊娠初期の日常生活の送り方のポイント

妊娠するとホルモンの分泌量が大きく変化するとともに、身体や心にも変化が現れやすくなります。ここでは妊娠初期に日常生活を送る上でのポイントについて解説します。

家での過ごし方

妊娠の経過が順調で体調も問題がなければ、料理・掃除・洗濯といった家事をしても差し支えありません。

ただし、重いものを持ち上げる・前屈みになる・反動をつけて起き上がるといった腹圧がかかるような動作は避けることが大事です。

排泄については我慢しなくても大丈夫ですが、あまり強く力まないようにしましょう。妊娠初期は便秘になりやすいので、水分摂取を意識することをおすすめします。便秘になってしまった場合は、妊娠中でも飲める薬もあるので、かかりつけに相談して薬を処方してもらうことも有用です。

入浴やシャワーについては妊娠前の日常生活と同様で問題ありませんが、妊娠初期はおりものが増えるため清潔に保つことを意識しましょう。

また、つわりが多いと胃酸によって歯が溶けやすくなる上に、気持ちが悪くて歯ブラシの回数が減り虫歯になりやすくなります。歯を磨くのが難しくても口をゆすぐなどして、なるべく歯や口腔内を清潔に保つように心がけましょう。

なお、日常生活全般にいえることとして、妊娠初期は体調の変化が大きいため、どんな時も無理をせずに睡眠や気分転換などで休息を取ることが大切です。

運動

妊娠初期であっても、散歩やウォーキングといった適度な運動をすることは問題ありません。適度な運動はストレスの解消や気分転換にもつながるため、体調が良ければ積極的に取り組みましょう。

ただし、長時間立ちっぱなしになるような作業や、長距離マラソン・短距離走のような激しい運動、重量上げ・腹筋のような腹圧がかかってしまう運動は避けましょう。

食生活

妊娠初期は心身の変化が大きく、いつもと同じような食事が取れないこともあります。無理に食事を取ろうとするとかえってストレスになり、心身に負担がかかってしまうため、食べられるときに食べられる物を食べるようにしましょう。

つわりの時は、温かい食べ物だと匂いで吐き気を催すこともあるため、食べにくいと感じた場合は冷たくて口当たりの良い豆腐やゼリー状の栄養食品などがおすすめです。

夫婦の営み

夫婦生活において、性行為は大切なコミュニケーションのひとつですが、妊娠初期は夫婦の営みを控えることを推奨します。妊娠初期はまだ妊娠が安定していない時期のため、性行為による刺激によって流産を引き起こすおそれがあるからです。性行為時に感染症にかかってしまうリスクも少なからず考えられます。

ただし、過度の禁欲によって逆にストレスを抱えてしまう場合は、パートナーと話し合い、以下の点に気をつけた上で性行為をしてください。

1)コンドームを着用すること:感染症予防のため

2)激しい行為を避けること:刺激を抑えるため

3)お腹に負担のかからない体位にすること:腹圧をかけないため

妊娠初期に関する関連してよくある質問

Q:妊娠初期と妊娠超初期の違いは?

妊娠初期とは、妊娠0週(最後の月経初日)〜13週6日までを目安としています。その中でも妊娠3週頃までの期間を妊娠超初期と分けて呼ぶことがあります。

実は“妊娠超初期”という言葉は正式な医学用語ではなく、時期や症状の違いについての明確な定義はありませんが、一般的には妊娠初期のうち、妊娠3週頃までの期間を妊娠超初期と呼ぶことが多いです。

妊娠初期の症状と妊娠超初期の症状について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

Q:お腹の張り以外の妊娠初期の症状は?

妊娠初期は、お腹の張り以外にもさまざまな症状が現れやすい時期です。妊娠初期に起きる主な症状は以下の通りです。

妊娠初期の症状について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

Q:妊娠中期や後期ではお腹の張りを感じる?

妊娠中期や後期は、子宮の血流が増えて子宮が大きくなるため、お腹の張りを感じやすくなります。特に後期になるにつれて赤ちゃんも大きくなるため、物理的にお腹が張りやすくなります。

お腹の張りを感じたら無理をせず、椅子に座ったり横になったりするなど、過ごしやすい体勢で安静に過ごすことを心がけましょう。

おわりに

トーチクリニックでは、将来妊娠を考えている方向けのブライダルチェックなども提供しています。ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。

トーチクリニックは恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております。

また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考ください。