つわりとは？症状が現れる期間とおさまる時期
つわりとは、妊娠初期を中心に起こる吐き気、嘔吐、食欲不振などを指します。一般的には妊娠5週ごろから始まり、16週くらいで自然に治ることが多いです。
ただし、つわりには個人差が大きく、妊娠中期まで症状がある方や妊娠期間中を通じて症状を感じる方がいる一方で、全くつわりの症状を感じない方もいます。つわりの症状に個人差があるのはホルモンが関係しているといわれていますが、現在でもはっきりと分かっていません。一部のホルモン分泌が多い場合や、多胎妊娠などで子宮内の絨毛の量が多い場合はつわりが重症化しやすい傾向があるといわれています。
つわりの原因と発症割合
つわりは、約7〜8割の妊婦さんが経験する症状です。
つわりの原因は、未だ医学的にははっきりと分かっていませんが、最近の研究によって胎盤を通じて胎児から受け取る特定のホルモンに関連するのではないかといわれています1)。
つわりの症状には個人差がありますが、吐き気のために飲食ができず、体重減少や脱水症状で入院加療が必要となる場合もあります。重度のつわりは「妊娠悪阻（にんしんおそ）」と呼ばれ、日常生活に支障が出るばかりではなく、胎児の成長や母体の安全にも関わるため、注意が必要です。
つわりで起こる主な症状
つわりで起こる症状はさまざまです。多くの症状は吐き気や嘔吐で、空腹時に症状が強くなる方もいます。他にも、胃の不快感、胸やけ、食欲不振などの消化器症状、においに敏感になる、唾液が多くなる、だるさが続く、眠気が強くなる、頭痛、めまいなどといった症状があり、いくつかの症状が同時に出るケースも少なくありません。
つわりの種類と特徴
つわりの種類と主な特徴は下記のとおりです。
つわりのときにおすすめの食べ物・避けたほうがよい食べ物
つわりのときは、無理をせず食べられるものを食べられるタイミングで食べるようにしましょう。においを感じづらいメニューや温度にするなど、調理法を考慮し、無理なく食べられるように工夫してください。
つわりのときにおすすめの食べ物
・水分の多い野菜やフルーツ
・ゼリー状の栄養補助食品
・豆腐、素麺、冷やしそば など
つわりのときに避けるもの
・揚げ物など脂っこいもの
・辛いものなど刺激が強いもの
・においの強いもの など
つわりのときの食事のポイント
つわりのときは食べられるときに食べられるものを摂取するのがおすすめです。一般的には「1回の食事量を少なくして食事回数を増やす」「よく噛んで消化しやすくする」「こまめに水分を摂る」といったことを心がけると、負担が減るといわれています。
つわりのタイプに適した対策をおこなう
つわりの中でも代表的な症状である「食べつわり」「においつわり」「吐きつわり」に関する対処法を解説します。妊娠中に必要な栄養を無理なく摂取し、母体に負担なく胎児の発育にも影響がない食生活をキープしましょう。
「食べつわり」があるときの対処法
食べつわりの場合は空腹になると気持ちが悪くなるため、ムカつきを軽減するためにはこまめに食べることが大切です。ただし、食欲のおもむくままに食べすぎてしまうと体重増加につながり、出産時に悪影響を及ぼすこともありますので注意しましょう。
こんにゃくゼリーや野菜など、比較的カロリーが少ないものを摂取すると体重増加への影響が少なくてすみます。
「においつわり」があるときの対処法
つわりの中でも比較的多くの妊婦さんが感じる症状が、においつわりです。一般的に「悪臭」と言われるもの以外でも、ご飯の炊けるにおい、タバコ臭、石鹸や洗剤のにおい、妊娠前に愛用していた香水のにおいなどで辛くなってしまうこともあります。
においつわりの場合は、マスクをして少しでもにおいを感じにくくする、定期的に換気をする、無香料の消臭剤をつかう、料理やゴミ出しなどは家族に依頼する、においの強い食べ物を避ける、温かいものは冷ます、好みの香りを持ち歩くといった対応がおすすめです。レモンやグレープフルーツなどの柑橘系の香りやペパーミントなどのスッとする香りには不快感を感じにくいようです。
ただし、香りには好みや感じ方の個人差が大きいため、自分にあった香りを探してみましょう。
「吐きつわり」があるときの対処法
吐きつわりの場合は何を食べても吐いてしまうことが多いため、無理をせずに水分補給だけでも大丈夫です。水分は水やお茶以外にも、炭酸飲料、シャーベット、野菜スープ、氷を舐めることでも摂取できます。ゼリー飲料にも水分が多く含まれていますので、無理なく飲めるものを少しずつこまめに飲むようにすると良いでしょう。
ビタミンB6を摂取する
つわりの症状が出る原因として、ビタミンB6の不足が関連していると考えられています。
ビタミンB6は水溶性ビタミンのひとつで、タンパク質や神経伝達物質など体内の調整機能に大切な役割を担っています。特に女性の場合は、エストロゲンというホルモンにも関連しているといわれ、美容目的としてだけでなく積極的な摂取が望ましいとされています。
妊娠中はホルモンバランスの変化や胎児の発達などのために消費量が増え、ビタミンB6が不足しがちです。つわりのときは、セロトニンの合成、アミノ酸やホルモン代謝の補助などを行うビタミンB6の働きによってつらい症状を軽減することが期待できます。
食事で補うことが難しい場合は、サプリメントでの摂取も検討してみましょう。
妊娠悪阻の疑いがある場合は受診を推奨
つわりを軽減するために対策や工夫を重ねても症状が改善しないこともあります。何も食べられず水分も飲めない状態で嘔吐が続くと、体は脱水症状となり体内の電解質が乱れ、母体にも胎児にも危険が及ぶ場合があります。このような重度のつわりを「妊娠悪阻」といい、治療の対象になります。
妊娠悪阻の場合には点滴などで水分や栄養補給をする必要があるため、我慢しすぎず、医療機関を受診してください。
つわりに関連したよくある質問
ここからはつわりに関するよくある質問について解説します。
Q：つわり中の食べ物の好みの変化で、赤ちゃんの性別がわかるというのは本当？
よく「つわりが重いと男の子、つわりが軽いと女の子」と言われますが、つわりの程度や食べ物の好みの変化と赤ちゃんの性別に関連性はありません。
Q：つわりが突然終わると稽留流産の可能性がある？
つわりが突然終わることが、必ずしも稽留流産の兆候とは限りません。
つわりには個人差があり、開始時期も終了時期も人それぞれで、始まり方や終わり方も千差万別です。健康な経過をたどる妊婦さんでも「朝起きたらつわりが無くなっていた」という方もいます。
稽留流産の多くは出血や腹痛などの症状が出現することが多いのですが、一方で、稽留流産によってつわりの終わりを感じる方もいます。稽留流産には自覚症状がない場合もあるため、気になる時は早めに医療機関で診察を受けましょう。
Q：妊娠中に食べたほうよいものや避けたほうがよいものは？
妊娠中の母体や胎児にとって大切な栄養素を摂取しましょう。胎児の発育に必要なタンパク質や臓器の形成に欠かせない葉酸、貧血予防のための鉄分や骨の形成や維持に大切なカルシウム、妊娠中の血糖上昇を緩やかにする食物繊維などが代表的な栄養素です。また、つわりの軽減に効果があるとされるビタミンB6も摂取するのが望ましいでしょう。
妊娠中に必要な栄養素を多く含む食品
タンパク質：肉類、卵 など
葉酸：ほうれん草、ブロッコリー、納豆 など
鉄分：レバー、赤身魚、牛乳 など
カルシウム：小魚、牛乳、乳製品 など
食物繊維：ひじき、大豆、おから など
ビタミンB6：赤身魚、ごま、落花生 など
一方で、妊娠中は摂取に注意が必要な食物もあります。ナマモノやアルコール、カフェインなどに加えて、妊娠中にはビタミンAやヨウ素、塩分の過剰摂取には注意が必要です。
・ビタミンA
過剰摂取することで胎児の器官形成に影響することもあります。特に多く含まれるのは、うなぎやレバーです。その他の栄養素とのバランスを考慮して「うなぎの蒲焼は週1回程度」「レバーは串焼きを週1本程度」を目安にしてください。
・ヨウ素
不足しても過剰摂取しても胎児に影響が出る可能性があります。昆布に多く含まれているため、昆布の佃煮や塩昆布は控えめにし、昆布出汁をかつお出汁に変更するなど対策しましょう。また、茶色いうがい薬にもヨウ素が多く含まれますので要注意です。
・塩分
妊娠中はむくみや高血圧予防のために塩分は控えめにしましょう。手軽なインスタント食品や惣菜、外食時には特に注意し、麺類のスープを残したり味の濃いおかずを多量に摂らないなど、工夫してください。
参考：妊娠中に意識して摂りたい食べ物と避けたほうがよい食べ物
おわりに
トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。
恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、土曜日も開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。
ご予約はウェブからも受け付けております。
また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考ください。
参考文献
1）Fejzo M, Rocha N, Cimino I, et al. GDF15 linked to maternal risk of nausea and vomiting during pregnancy. Nature. 2023;625(7996):760-767.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10808057/
