妊活中にお酒は飲めるか|アルコールの影響やいつからやめるかなどを解説

最終更新日時:
2024-11-23
市山 卓彦
市山 卓彦 医師
院長 婦人科 生殖医療科 医師
2010年順天堂大学医学部卒。2012年同大学産婦人科学講座に入局、周産期救急を中心に研鑽を重ねる。2016年国内有数の不妊治療施設セントマザー産婦人科医院で、女性不妊症のみでなく男性不妊症も含めた臨床及び研究に従事。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、優秀口頭発表賞および若手研究者賞を同時受賞。2021年には世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど、着床不全の分野で注目されている。2019年4月より順天堂浦安病院不妊センターにて副センター長を務め、2022年5月トーチクリニックを開業。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

妊活中の飲酒は控えるようにしましょう。お酒に含まれるアルコール成分によって女性特有の健康リスクを高めたり、妊娠率に影響を及ぼしたりするためです。妊娠に気づかずに飲酒を続けた場合、赤ちゃんの健康にも悪影響を与える場合があります。現代女性はお酒を飲む習慣がある人も少なくありません。妊娠を考える場合は、周囲の人のサポートも重要です。

妊活中はお酒を控えるのが安全|その理由は

妊活中はお酒を控えるのが望ましいです。女性特有の飲酒リスクがあり、飲酒量や時期によっては妊娠率が低下するとの報告もあります。妊娠に気づかずに飲酒した場合、胎児へ悪影響を及ぼす可能性もあります。理由を一つずつみていきましょう。

女性特有の飲酒の影響がある

近年は、女性の飲酒が一般的になっています。しかし、お酒の影響による女性特有の健康リスクが高まるため注意が必要です。代表的なリスクは以下のとおりです。

  1. 血中のアルコール濃度が高くなりやすい
  2. 乳がんや胎児性アルコール症候群などのリスクを増大させる
  3. 早期に肝硬変やアルコール依存症になりやすい

これらのリスクを避けるためには、適量を知ることが重要です。厚生労働省では節度ある飲酒の目安として、1日平均純アルコールで約20g程度とし、かつ女性は男性よりも少ない量が適当としています。おもなお酒のアルコール度数・純アルコール量は以下のとおりです。

<おもなお酒のアルコール度数・純アルコール量>

種類アルコール度数純アルコール量
ビール:中瓶1本500ml5%20g
清酒:1合180ml15%22g
ウイスキー・ブランデー:ダブル60ml43%20g
焼酎35度:1合180ml35%50g
ワイン:1杯120ml12%12g

参考:健康日本21(アルコール)アルコール/厚生労働省

飲酒量や時期によっては妊娠率が低下する報告もある

飲む量や頻度によって差はあるものの、飲酒によって妊娠率が低下するとの報告があります。

アメリカの研究では、「アルコール飲料の多量摂取(週6杯以上)は妊娠率低下と関連しており、中等度の摂取(週3~6杯)でも黄体期では妊娠率の低下と関連している」という報告もあります。妊活中は、お酒の飲みすぎに注意しましょう。

妊娠後も気づかず飲酒した場合、胎児への影響が出る可能性がある

妊娠に気づかずに飲酒を続けた場合、アルコール成分が胎児に影響を及ぼす可能性があります。アルコール成分は、胎盤を通してお腹の赤ちゃんに運ばれてしまうためです。

早産や流産の原因となったり、赤ちゃんの発育に影響が出たりする場合があります。妊婦さん、赤ちゃんが健やかに過ごすために、お酒は妊活中から控えるのが望ましいです。

妊活中で特にお酒の影響を受けやすいタイミングは?

生理周期全体を通して、多量(週6杯以上)の飲酒をすると、飲まない人と比較した場合、妊娠率が低下します。生理周期の時期による影響を評価した文献はほとんどありませんが、ある論文では、黄体期に中程度(週3〜6杯)の摂取でも妊娠率が低下するという研究結果があります。

飲酒はいつからやめるべき?

妊娠がわかったら、飲酒は控えましょう。

妊活中は、月経期(生理の時期)は適量であれば影響がないと言われていますが、排卵後は少し控えめにしたほうがいいかもしれません。ストレスがたまらないように、健康なからだ作りを心がけましょう。

妊活中は男性もお酒を控えるべき?

妊活中の男性は、節度を持った飲酒を心がけましょう。

男性は、適量のアルコール摂取では妊娠率に差がないとされています。しかし一方で、毎日のように飲酒している場合、精液量、正常形態率に影響が出るとの報告もあります。

男性においても、適度な飲酒がすすめられます。妊活のタイミングで、パートナーと一緒に生活習慣を見直すのもよいかもしれません。

妊活中のよくある質問

妊活中のよくある質問についてまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

お酒をなかなかやめられないときはどうする?

お酒をなかなかやめられないときは、健康支援ツールを使用するのも手です。厚生労働省の「習慣を変える、未来に備える あなたが決める、お酒のたしなみ方(女性編)」を活用してみるとよいでしょう。

周囲の人の支援も大事です。アルコールが赤ちゃんに与える影響を伝え、協力してもらいましょう。それでもやめられない場合は、医師に相談するようにしてください。

妊活中にアルコール以外で注意したいものは?

妊活中にアルコール以外で注意したいものは、喫煙とカフェインです。タバコは早めにやめるようにしてください。カフェインは、適量であればあまり心配ないとされています。理由をそれぞれ解説します。

喫煙

煙に含まれるニコチンは、血管収縮作用があり血流を減少させます。喫煙は、生殖能力や妊婦さん・赤ちゃんの健康に影響を及ぼしますので、やめるようにしましょう。

タバコを吸っていると、避妊をやめてから妊娠するまでの期間が長くなったり、閉経が早まり妊娠できる期間が短くなる、といった不妊への影響が報告されています。

また、妊娠後は、赤ちゃんや胎盤にうまく酸素が回らなくなり、低出生体重児や早産のリスクが高まります。子宮外妊娠や前置胎盤など命にかかわるリスクも指摘されており、注意しなければなりません。

自分が吸うだけでなく、受動喫煙でも胎児の発育へ影響します。パートナーや周囲の人にも協力してもらう必要があるでしょう。

カフェイン

カフェインは、適量であれば大きな問題はありません。飲みすぎは妊婦さんや赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があるため、摂取量に注意しましょう。

世界保健機関(WHO)は妊婦に対し、コーヒーを1日3〜4杯までにすることを呼びかけています。

妊活中に推奨される食材や飲料

妊活中から積極的にとるとよい栄養素は、葉酸・ビタミンD・亜鉛・抗酸化ビタミンなどです。葉酸は、厚生労働省でもサプリメント等での摂取を推奨しています。栄養バランスのよい食事をとることも重要です。

葉酸は妊娠前からの摂取がよい

葉酸とは水溶性ビタミンB群の一種で、赤血球の形成やDNAの合成に関わる重要な栄養素です。妊娠初期に不足すると、赤ちゃんの脳や脊椎の癒合不全といった「神経管閉鎖障害」のリスクが高まるとされています。神経管の閉鎖は妊娠6週で完成するため、妊娠成立の1か月前から葉酸補充が必要です。

葉酸の多い代表的な食品は以下のとおりです。緑黄色野菜や果物、豆類などに多く含まれます。

<葉酸を多く含む食品>

1食あたりの含有量(μg)100gあたりの含有量(μg)
なばな(ゆで)192240
グリーンアスパラガス(ゆで)180180
ほうれん草(ゆで)88110
枝豆(ゆで)78260
いちご7290
玉露(浸出液)225150

神経管閉鎖障害のリスクを減らすためには、食事による葉酸の摂取だけでは十分ではありません。普段の食事に加え、サプリメント等での葉酸摂取が推奨されています。妊活中から妊娠初期にかけては、モノグルタミン酸型葉酸を1日400μg摂取する必要があるとしています。サプリメントはさまざまなタイプがあるので、利用する際は、医師や薬剤師、管理栄養士に相談してから購入するようにしましょう。

ビタミンD・亜鉛・抗酸化様物質の摂取も意識する

葉酸のほか、ビタミンD・亜鉛・抗酸化ビタミンの摂取も心がけましょう。

ビタミンDが充足状態にある女性は、欠乏している女性に比べて、出産に至る確率が28%高いことがわかっています。また、ビタミンD欠乏症の男性は、精液所見が不良になります。パートナーが共にビタミンD欠乏でないカップルは、共に欠乏しているカップルと比較して、出産に至る可能性が高いことも報告されています。

ビタミンDは、日光を浴びると骨で生成されるビタミンです。日本人女性は日焼けを気にして紫外線を避ける人が多く、不妊女性の8割以上はビタミンD欠乏症と言われています。食事では補えないためサプリメントで補充したり、適度に太陽の光を浴びたりすることで改善します。昼は紫外線量が多くなるため、午前のうちがおすすめです。

亜鉛は、たんぱく質やDNAの合成に関わる栄養素で、精子・卵子の形成や質に影響をおよぼします。国内のデータで、精液検査が正常な男性は、無精子症の男性に比べて血液中の亜鉛濃度が明らかに高いというデータが出ています。女性では、排卵や着床に関係する多くのホルモンに亜鉛が必要不可欠です。

酸化ストレスは卵子や精子を損傷させて、妊娠率の低下や流産率の増加をひきおこします。酸化ストレスに対抗する抗酸化様物質には、前述の葉酸、亜鉛の他、ビタミンA・ビタミンC・ビタミンE、カロテノイド、ポリフェノールやコエンザイムQ10などがあり、活性酸素の働きを抑え、細胞のダメージや老化を防ぎます。

栄養成分が豊富な食材を表にしました。ただし、同じ食品だけでなく、多様な食品をまんべんなく摂取するのが重要です。

<栄養素が豊富な食材の例>

栄養素ビタミンD亜鉛ビタミンA
(レチノール活性当量)
ビタミンCビタミンE
(αートコフェロール)
食材・乾燥きくらげ
・まいわし丸干し
・紅さけ焼き
・いわし缶詰味付け
・牛リブロース
・牡蠣
(水煮・生・フライなど)
・牛挽き肉
・牛肩赤身
・ピュアココア
・ほたて貝、煮干し
・ほたるいか、ゆで
・ウナギかば焼き
・にんじん
・ほうれん草
・ドライマンゴー
・赤ピーマン
・キウイフルーツ
・ブロッコリー、レンジ調理
・いちご
・大根
・アーモンドフライ
・落花生
・いくら
・まぐろ缶詰油漬け
・かぼちゃ、焼き

バランスのよい食事を心がける

食事は妊娠前から、バランスよく摂取するようにしましょう。

厚生労働省の調査によると、若い女性は、脂質エネルギーの比率が高めであり、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度も少ないことがわかっています。葉酸の摂取源である緑黄色野菜も十分にとれていません。食習慣は急激に変えることは難しいため、妊娠前から適切な栄養をとることが重要です。

以下を参考に食生活を見直し、健康に過ごせるようにしましょう。

<バランスのよい食事をとるポイント>

  • 主食を中心に、エネルギーをしっかりとる
  • 副菜をたっぷりとり、ビタミン・ミネラルを補給する
  • 主菜を組み合わせて、たんぱく質を十分にとる
  • 乳製品・緑黄色野菜・豆類・小魚などでカルシウムを十分にとる

参考:妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~ 解説要領/厚生労働省

おわりに

トーチクリニックでは、将来妊娠を考えている方向けのブライダルチェックなども提供しています。ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。

トーチクリニックは恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております。

また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考ください。