妊娠初期にうまく眠れなくなってしまう原因・対処法|妊娠中期〜後期における睡眠の特徴についても解説

最終更新日時:
2024-11-30
市山 卓彦
市山 卓彦 医師
院長 婦人科 生殖医療科 医師
2010年順天堂大学医学部卒。2012年同大学産婦人科学講座に入局、周産期救急を中心に研鑽を重ねる。2016年国内有数の不妊治療施設セントマザー産婦人科医院で、女性不妊症のみでなく男性不妊症も含めた臨床及び研究に従事。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、優秀口頭発表賞および若手研究者賞を同時受賞。2021年には世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど、着床不全の分野で注目されている。2019年4月より順天堂浦安病院不妊センターにて副センター長を務め、2022年5月トーチクリニックを開業。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

妊娠初期にうまく眠れなくなるのは、ホルモンバランスの変化やつわり、不安やストレスなどが複合的に影響するためです。

日中に眠くなり、夜は眠れなくなってしまうようになると、日常生活に支障が出る場合もあります。10~20分程度の昼寝や適度な運動、就寝の2〜3時間前に入浴するといった方法を取り入れてみましょう。

また、意欲の低下や落ち込みといった変化があるときは、医療機関の受診が推奨されます。一人で抱え込まずに相談することも重要です。

妊娠初期にうまく眠れなくなってしまう原因

妊娠するとうまく眠れなくなるのは、ホルモンバランスの変化やつわり、不安やストレスの影響が大きいです。

妊娠によってホルモン分泌パターンは変化します。妊娠初期にはエストロゲン・プロゲステロンの分泌が一時的に変化しますが、中期・後期にかけて分泌量は増加します。妊娠初期は2つのホルモンの影響で、うまく眠れなくなる場合があります。

また、妊娠初期はつわりの起こる時期で、つわりによって夜に眠りにくくなることがあります。妊娠に対する不安やストレスも加わり、複合的な要因で不眠症状に悩まされる方が多いです。。

妊娠中に不眠(眠れない状態)の症状が出てしまう人の割合

約8割の妊婦さんが妊娠中に不眠症状があるといわれています。不眠症状の中には、寝つきが悪いことの他に、睡眠の質が悪い、夜間何度も起きてしまう、日中の眠気が強いなどの症状が報告されています。

夜間の睡眠が不十分な場合、日中の眠気や疲労感・イライラ・集中力の低下がみられ、日常生活に影響をもたらす可能性があります。

妊娠初期で眠れないときの過ごし方のポイント

妊娠初期で眠れないときは、昼寝の時間を短くする、負担の少ない運動をおこなう、就寝前に体を温めるなどで対策しましょう。一つずつ詳しくみていきます。

日中の仮眠は短時間にとどめる

妊娠初期は日中の眠気が強くなるため、眠ってしまうのも方法の一つです。とはいえ、長時間眠ってしまうと、夜の寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりするため注意しましょう。

昼寝は10〜20分程度を目安にしてみてください。できれば午後3時までにとるようにしましょう。目覚めたらすぐに起き、メリハリをつけることも大事です。

体への負担が少ない運動をおこなう

適度な運動は体力がつき、睡眠の質を改善してくれます。

ウォーキングやマタニティヨガなど、楽しく長続きする運動をおこないましょう。1日20〜60分、週1〜3回程度が目安です。激しい運動や転倒の恐れのある運動、過度な腹圧がかかる運動は控えましょう。

就寝前に体を温める

入浴は睡眠によい影響を与えます。就寝前に体温を一時的に上げると、寝付きがよくなるとされています。就寝の2〜3時間前に入浴するのが理想的です。38℃程度のぬるめのお湯で、25〜30分を目安にするとよいでしょう。

無理はせずに、自分の体調に合わせて入浴してください。入浴前後には水分補給も忘れずにおこないましょう。

睡眠環境を整える

良質な睡眠をとるには、生活リズムを整えることや環境作りも重要です。できるだけ一定の時間に起床・就寝・食事をするようにしましょう。寝る直前までスマートフォンやパソコンの画面をみると、睡眠の質が低下する可能性があるため、注意しましょう。以下を参考に、睡眠環境を整えてみましょう。

<睡眠環境を整える際のポイント>

  • 寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まない
  • 夜間の照明は明るすぎないように調節する
  • 寝室は暑すぎず寒すぎない温度にする(エアコンを使用する場合、夏場は25〜28℃、冬場は17〜22℃を目安に)
  • リラックスできるパジャマや寝具で休む
  • 起床後は朝日を浴びて体内時計をリセットする

妊娠中に眠れなくなることについてよくある質問

妊娠中に眠れなくなることについて、よくある質問をまとめました。

Q:妊娠超初期でもうまく眠れなくなってしまう場合はある?

妊娠の0週(最後の月経初日)〜13週6日までを妊娠初期といいますが、なかでも妊娠3週頃までの期間を「妊娠超初期」と呼ぶことがあります。妊娠するとエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量が増加し、体にさまざまな変化をもたらします。

妊娠超初期は、プロゲステロンの影響によって、眠気やだるさを感じる人も少なくありません。プロゲステロンは眠気を起こすほか、体温を上げる作用もあり、眠りに影響を与えます。日中に眠りすぎてしまう、夜は体温が下がらない、といったことが眠れなくなる原因になると考えられます。

また、妊娠超初期は妊娠検査薬で反応しない時期です。妊娠しているかどうかがわからず、期待や不安で混乱し、精神的に不安定になりやすいです。お腹の痛みや腰痛なども加わり、眠りにくくなります。

なお妊娠超初期症状については、「妊娠超初期症状があらわれる時期や主な症状」で詳しく解説しています。

Q:妊娠中期〜後期でも眠れない状態が続く?原因は?

妊娠中期(14週0日〜27週6日)はつわりが落ち着き、妊娠初期よりは眠りやすくなる方もいるでしょう。しかし、眠れない状態が続く方もいます。大きくなったお腹で息苦しさを感じたり、眠るときの姿勢が変化したりすることが原因のひとつと考えられます。赤ちゃんの胎動も始まる時期で、横になって静かにしていると、気になって眠れなくなるときもあるでしょう。

また、頻尿によって眠れなくなる場合もあります。赤ちゃんの成長にともない、子宮には多くの血液を送る必要があります。腎臓を通過する血液量が増え、尿量も増えるのです。子宮も大きくなっているため、膀胱が圧迫されることも原因になります。

妊娠後期(28週〜)は多くの妊婦さんが眠りにくくなる時期です。お腹の赤ちゃんに圧迫され息苦しく、頻尿が続きます。むずむず脚症候群や、こむら返りも起こりやすくなります。

むずむず脚症候群とは、夕方から夜にかけて、下肢を中心として「むずむずする」「痛がゆい」「じっとしていると不快」といった異常な感覚があらわれる病気です。眠くても眠りにつけず、寝付けたとしても睡眠が浅くなります。

対応策としては、入浴によって脚を温めること、寝る前に脚のストレッチやマッサージをすることが挙げられます。また、むずむず脚症候群の原因として鉄不足や葉酸不足、ビタミンD不足が報告されていて、妊娠中はこれらの栄養素が不足することが多いです。これらの栄養素を意識して摂取できるように食事を工夫したり、食事での摂取が難しい場合はサプリメントをうまく取り入れることをおすすめします。ご自身で対策してもむずむず脚症候群が改善せず、てつらい場合は、医療機関で相談するのもひとつの手段です。

さらに、妊娠中期から後期にかけては、ふくらはぎがけいれんし、脚がつった状態になる、こむら返りが起こりやすくなります。眠っているときにこむら返りが起こると、痛みで覚醒してしまい、睡眠不足になる場合があります。

こむら返りは運動不足やミネラル類の不足が原因と考えられているため、適度な運動とバランスのよい食事を心がけましょう。

病院の受診が推奨されるケース

妊娠中はさまざまな要因によって夜間眠りにくくなりますが、状況によっては治療が必要な場合もあります。以下の場合は医療機関を受診するようにしましょう。

<睡眠に関連する症状で受診する必要があるとき>

  • 大きないびきやあえぎ・息をとめる・息苦しさがある(睡眠時無呼吸症候群の可能性)
  • 眠れない状況に加え、意欲の低下やひどい悲しみなどが2週間以上続く(うつ状態の可能性)
  • むずむず脚症候群の症状がなかなか改善しない

Q:産後も眠れない状態が続く?原因は?

出産後はマタニティブルーや産後うつ病によって、不眠になる場合もあります。マタニティブルーは、産後3〜5日頃に発症しやすい傾向です。出産後の女性の30〜50%が経験するとされており、涙もろくなる・気分が落ち込む・眠れないといった症状がみられます。

原因は、人生の大きなイベントを乗り越えたあとの気持ちの変化や、慣れない育児によるストレスと考えられます。女性ホルモンの急激な変化も原因のひとつです。一時的な症状であり、通常は10日程度で自然によくなるため、あまり心配しないようにしましょう。

ただし、長引く場合は産後うつ病に移行するリスクがあり、注意が必要です。産後健診の機会に、産婦人科医や助産師によく相談してください。一人で抱え込まないことが重要です。周囲の方は、お母さんの体調に気づかうようにしましょう。

おわりに

トーチクリニックでは、ブライダルチェックや不妊検査を提供しています。恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

ブライダルチェックや不妊検査にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております

また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考ください。