妊娠初期に生じるつわりの症状。つわりのうち、多くの妊婦さんが経験するのが「吐き気」です。多くの妊婦さんにとって負担となる妊娠中の吐き気について、いつまで続くのか、その原因と対処法を解説します。
妊娠初期や妊娠中の吐き気
妊婦さんの約8割が妊娠中に吐き気や嘔吐を経験します。いわゆる「つわり」の症状の一つですが、妊娠初期に感じる方が最も多く、症状も重い傾向にあります。
妊娠中の吐き気の原因は人それぞれで、特定のにおいや空腹感などが引き金となることが多いといわれています。
妊娠悪阻(にんしんおそ)とは
妊娠悪阻は、つわりの症状が重症化して、脱水や電解質異常などが生じた状態です。
何も食べられず何も飲めない状態で嘔吐が続いた場合、体は脱水症状となり、体内の電解質に乱れが生じます。母体の体内電解質の乱れを放置すると、母体だけでなく胎児にも危険が及ぶため、妊娠悪阻の場合は安静保持や点滴治療など、医療的な介入が必要となります。
妊娠中の吐き気はいつからいつまで続く?
多くの場合、妊娠中の吐き気は妊娠5週目頃から始まり、16週目頃まで続きます。
しかし、つわりの症状や時期には個人差が大きく、妊娠4週目から感じる方もいれば、妊娠後期や出産まで吐き気に悩まされる方もいます。一方で、妊娠期間を通じて全くつわりを感じない妊婦さんもいます。つわりの期間に個人差が生じる原因は、妊婦さんの体内ホルモンが関連しているという説もありますが、確実なことは未だ解明されていません。
現在は、一部のホルモン分泌が多い場合や多胎妊娠などで子宮内の絨毛の量が多い場合は、つわりが重症化しやすい傾向があるといわれています。
つわりが起こる原因
つわりが起こる原因は、現在でも医学的に明らかになっていません。
しかし、最近の研究により、胎盤を通じて胎児から母体に移行する特定のホルモンが関連しているのではないか、ということがわかってきました。また、環境や精神的な要素も大きく影響するともいわれています。
吐き気や嘔吐を伴うつわりの症状と対処法
つわりの症状として多いのが、吐き気や嘔吐です。 特に空腹時に症状が重くなることが多く、吐き気や嘔吐に伴って胃部不快感や胸焼けなどの消化管症状が起こる、においに敏感になり特定のにおいで吐き気を生じる、唾液が多くなる、体の怠さが続く、眠気が強くなる、頭痛や目まいを生じるなど、つわりにはさまざまな症状があります。いくつかの症状が同時に出るケースも少なくありません。
食べづわり
食べづわりとは、食物を食べていないと吐き気を感じるつわりです。
食べづわりの症状
空腹感を感じると吐き気や嘔吐の症状が強まり、何らかの食物を摂っていれば症状が和らぎ、楽に感じることが多いです。
食べづわりの対処法
食べづわりの場合は、常に何かを食べていたくなります。食べるものは人それぞれ違いますが、吐き気を回避するためにアメや一口チョコレートなど手軽に口に入れられるものを頻繁に食べてしまいます。1回に食べる量は少なくても何度も食べることで、食べづわりの方は体重過多や高血糖などに注意が必要です。
対処法は食べるものを工夫することです。豆腐やゼリー状補助食品、水分が多い野菜スティックなど、カロリーが少ない食材に置き換えると、頻回に食べても過剰なカロリー摂取を防ぐことができます。
においつわり
においつわりとは、これまでは平気だったにおいでも気持ちが悪くなり、吐き気や嘔吐を生じるようになるつわりをいいます。
においつわりの症状
においつわりの場合は、さまざまなにおいに敏感になるため、洗濯洗剤や食器用洗剤、ボディソープや使い慣れた化粧品など、これまでにも日常的に使用してきたものでも吐き気を生じることがあります。
他にも、炊きたてのご飯、飲食店のにおい、車の中のにおいなど、人によって違いはあれど多様なにおいによって吐き気を生じるようになります。
においつわりの対処法
においつわりの対処法としては、においのするものを避ける工夫が必要です。 洗剤や洗浄剤はにおいの少ないものに変更する、ご飯の盛り付けは家族に依頼する、車用の芳香剤を無臭のものに変えるなど、身の回りのものをにおいの少ないものに変えることで対処するとよいでしょう。
ちなみに、浴室の湯気のにおいが苦手になる方の場合は、1日のなかで入浴のタイミングなどを変更すると負担が軽減されるケースもあります。また、タバコのにおいが負担になる場合は、胎児や母体の健康の観点からも、ご家族に禁煙や分煙を依頼することが大切です。
吐きづわり
吐きづわりとは、吐き気や嘔吐するつわりをいいます。
吐きづわりの症状
吐きづわりは、食事や水分の摂取を試みても嘔吐してしまいます。嘔吐の回数は人それぞれですが、症状が重い場合は毎日何度も嘔吐する方も少なくありません。
吐きづわりの対処法
吐きづわりの方は、時間帯や食べるものにこだわらずに、食べられるものを食べられるタイミングで摂るようにしてください。温かいものよりも冷たいもののほうが吐き気を感じづらいため、アイスや氷を舐めるだけでも水分の補給になります。
それでも頻回な嘔吐が続く場合は、日常生活に支障が出るばかりでなく、体内の電解質のバランスが乱れ、母体や胎児に影響を及ぼす場合もあります。水分や栄養がとれず脱水症状になった場合は、体重が減る、尿量や尿回数が減り色の濃い尿が出る、尿が出ない、めまいや頭痛を生じるなどの自覚症状が出ます。
嘔吐が続く場合は、医療的な処置が必要な場合がありますので、無理をせず、かかりつけ医に相談してください。
吐き気や嘔吐を伴うつわりの胎児への影響は?
吐き気や嘔吐を伴うつわりそのものが胎児に影響を与えることはありません。つわりの症状によって胎児の健康に害を及ぼすこともありませんし、つわりがあることが胎児の病気を意味することもありません。
また、かつては「つわりは赤ちゃんが元気な証拠」「つわりが重いと男の子」等の言われもあったようですが、つわりの有無や程度が胎児の健康状態や性別に関連することはありません。
ただし、脱水症状を起こすほどの嘔吐の場合は医療的な治療の対象になりますので、かかりつけ医にご相談ください。
注意した方がいいつわりの症状は?
つわりに対するさまざまな対処法を行っても症状が軽減せず、嘔吐が続き水分も取れない場合には「妊娠悪阻」といい、治療が必要となります。
具体的には、毎日嘔吐がある、尿の回数や量が減る、体重が減るなどの症状がみられる場合は注意が必要です。
吐き気、下痢、冷や汗、腹痛を伴う場合は?
妊娠中は、つわりの症状だけでなく、さまざまな体調の変化が起こりやすいものです。ホルモンバランスの変化によって、体温が高くなったり、眠気やだるさを感じたり、イライラしやすくなったりすることがあります。また、おりものの量や性状の変化、乳房の張りなど、心身にさまざまな変化が現れます。
下痢や腹痛、腹部の違和感などは、正常な妊娠経過でも見られる症状です。しかし、持続する頭痛、頻回な水下痢、出血を伴う下腹部の痛み、ふらつきを伴うめまい、けいれんや冷や汗などの症状が見られた場合は、何らかの治療が必要となる可能性があります。早めに医師の診察を受けてください。
薬を使用しても大丈夫?
妊娠中、特に妊娠初期に薬を使用する場合は、かかりつけの産科医に相談するのが安心です。
つわりによる吐き気を抑えるための吐き気止めや、妊娠前に常用的に飲んでいた内服薬や貼り薬の中にも、妊娠経過や胎児に影響を与える可能性のある薬剤があります。市販の胃腸薬や風邪薬、花粉症薬の中にも、使用に注意が必要な薬剤が含まれていることがあります。
妊娠前に使用経験がある薬剤であっても、妊娠中に使用する場合は医師に相談することをおすすめします。
妊娠初期症状と感じたらクリニックへ
妊娠に気づくきっかけは人それぞれです。多くの場合、性行為から2~3週間後に生理の遅れや熱っぽさを感じることで妊娠に気づくことがあります。
定期的な生理周期の方であれば、生理予定日を1週間過ぎても生理が始まらない場合は、妊娠を疑って検査してみることをおすすめします。市販の妊娠検査薬では、hCGホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)という妊娠した女性に特有のホルモンを測定し、妊娠の有無を判定します。
また、基礎体温の上昇、着床時に起こる微量の出血、乳房の張り感、生理痛のような下腹部痛なども、妊娠の初期症状としてよく見られます。性行為から2~3週以降にいつもとは違う体調の変化を感じた場合は、妊娠の可能性があるため、市販の妊娠検査薬の使用をおすすめします。
おわりに
トーチクリニックでは、将来妊娠を考えている方向けのブライダルチェックなども提供しています。ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。
トーチクリニックは恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。
医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。
ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております。
また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考ください。