稽留流産(けいりゅうりゅうざん)とは、腹痛や出血といった流産のサインがなく、赤ちゃんが子宮の中で亡くなっている状態をいいます。
原因の多くは、赤ちゃんの染色体異常です。治療には、待機的療法と自然療法があり、医師の診察やお母さんの希望によって選択されます。流産は、妊娠している方は誰でも起こる可能性があり、ご自分を責める必要はありません。
稽留流産とは?どのような症状がある?
稽留流産の場合、赤ちゃんが亡くなってしまっている状態ですが、お母さんには腹痛や出血の症状はありません。お母さんは自分では気づかず、医療機関の検査で確認されます。
稽留流産の検査・診断
稽留流産はおもに、超音波検査によって診断されます1)。稽留流産と診断される状態は3通りあります。
1つ目は、赤ちゃんの存在が確認できても、心拍を確認できないときです。通常、妊娠5週を過ぎる頃から赤ちゃんの心拍が確認できます。しかし、8週を超えても確認できない場合は、稽留流産と診断されます。
2つ目は、赤ちゃんの心拍を確認できなくなったときです。赤ちゃんの発育が順調であれば、心拍も確認しやすくなりますが、心拍が確認できないと稽留流産と診断されます。
また、初診時に子宮内膜に胎嚢(子宮内で赤ちゃんを包む袋)と、卵黄嚢(赤ちゃんの栄養源)が確認できても、赤ちゃんと心拍が確認できず、再検査をしても同様であれば、稽留流産となります。
稽留流産の治療
稽留流産の治療には、待機的療法(自然排出)と手術療法があります2)。どちらを行うかは、医師の判断やお母さんの希望で選択されます。治療内容をそれぞれ見ていきましょう。
待機的療法(自然排出)
待機的療法とは、赤ちゃんを含む妊娠組織の自然な排出を待つ方法です。手術の必要がないため、体へのリスクは少ないとされています。
排出するまでにかかる時間は約2週間程度ですが、個人差が大きいです。手術の必要はありませんが、何も処置をしないため、排出までに時間がかかる可能性があります。また、赤ちゃんが出たあと、大量の出血や腹痛が起こることがあり、場合によっては手術が必要になることがあります。
手術療法
手術療法2)は、主にそうは術(子宮の内容物を手術用具の1つである鉗子を用いて除去する方法)と、吸引法(吸引器を用いて除去する方法)があります。
吸引法はこれまで、自動吸引法(EVA)が一般的でしたが、最近では手動吸引法(MVA)が採用されることも増えました3)。それぞれの違いは、手術で使用するカニューレ(細い管)の材質や、吸引力の調整のしやすさです。EVAで使用するカニューレは金属製ですが、MVAはプラスチック製であるため、痛みが少なく、組織に傷を付けにくいとされています。
治療は短期間で済み、日常生活の復帰予定が立てやすいことがメリットです。ただし手術であるため、子宮を傷つけたり、感染したりするリスクがあります。また、術後数カ月出血が見られるケースもあります。このような合併症の頻度は低いですが、理解しておく必要があるでしょう。
そもそも流産とは?
そもそも流産とはどのような状態を指すのでしょうか。
流産とは、妊娠22週未満の時期に赤ちゃんの発育が停止する、または亡くなってしまうことです。日本産婦人科学会では、妊娠12週未満の流産を「早期流産」、妊娠12週以降22週未満の流産を「後期流産」と定義しています。
2016年の厚生労働省の発表による「母体の年齢別出生数の割合」4)では、35歳以上の方では、妊娠しても25%程度が流産してしまうことがわかっています。
流産の頻度や徴候、原因についてそれぞれ解説します。
流産の頻度
流産の発生頻度は15〜20%5)6)程度です。なかでも、妊娠12週未満での流産が8割以上を占めています。また、40歳以上では妊娠の約半数が流産するとの報告もあります。流産の70%程度は、染色体異常で起こるとされています。
流産の兆候
流産の兆候では、腹痛や出血が見られるケースがあります。ただし、正常な経過でも同様の症状が見られることがあり、流産かどうか見分けるのは困難です。まずは安静にして経過を見るようにしましょう。
ただし、明らかに出血量が多いときや腹痛がひどいときは、早急に医療機関を受診してください。流産や異所性妊娠(子宮外妊娠)の可能性があります。
詳しくは「妊娠初期の流産について」で解説しています。
流産の原因
流産の原因はいくつかあり、最も多いのは赤ちゃんの染色体異常です7)。早期流産の60〜70%程度を占めています。染色体異常の内訳で多いのは、通常2本で1対の染色体が3本1対になる「トリソミー」です。母体の高年齢化が誘因のひとつとして考えられています。
また、子宮の形態異常や糖尿病、自己免疫疾患、感染症といったお母さん側の異常も流産の原因になることがあります。そのほか、喫煙やアルコール、ストレスも原因として考えられています。
早期流産は赤ちゃん側の異常によって起こる場合が多く、後期流産はお母さん側の要因によって起こる場合が多いとされています。
流産を経験すると、自分を責めてしまう方も少なくありません。しかし、このように流産にはさまざまな原因が考えられるため、決して自分を責めないようにしましょう。
流産の種類
ここでは流産の分類、名称について解説します。
- 原因による分類
- 症状による分類
- 進行具合による分類
- 回数による名称
- 時期による名称
それぞれ見ていきましょう。
原因による分類
原因による分類は、人工流産と自然流産の2つです。それぞれ詳しく解説します。
人工流産
人工流産とは、人工妊娠中絶のことです。母体保護法では「人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその付属物を母体外に排出すること」としています。
人工妊娠中絶を実施できる時期は「通常満22週未満」とし、指定医師によって手術が行われます。
自然流産
自然流産とは、妊娠22週未満で自然に起こる流産です。妊娠12週頃までに起こりやすいとされています。22週の根拠は、高度な医療処置によって、赤ちゃんが生育できる限界と考えられていることです。
症状による分類
症状による分類は、稽留流産と進行流産です。それぞれ詳しく解説します。
稽留流産
稽留流産とは、腹痛や出血が見られないのに、赤ちゃんが子宮の中で亡くなっている状態をいいます。妊娠12週頃までに発症するリスクが高いです。
進行流産
進行流産とは、現在流産が進行中という状況です。出血し、赤ちゃんや胎盤などが出てこようとしている状態をいいます。出血量には個人差があり、多い人もいれば少ない人もいます。
流産の進行具合による分類
流産は進行の状況により、完全流産と不全流産に分けられます。それぞれ見ていきましょう。
完全流産
完全流産とは、赤ちゃんや胎盤・羊水などがすべて排出してしまった状態をいいます。腹痛や出血は次第に治まります。多くの場合、手術の必要はありません。子宮が自然に回復するのを待ちます。
不全流産
不全流産とは、赤ちゃんや胎盤・羊水などが完全に排出されず、一部が残っている状態をいいます。腹痛や出血が続き、手術が必要になるケースが多いです。
流産の回数による名称
反復流産と習慣流産は、流産の回数によって名付けられることが特徴です。どちらも「不育症」8)と関係しています。不育症とは、流産もしくは死産を2回以上経験したことがある方と定義されています。
反復流産と習慣流産について、それぞれ見ていきましょう。
反復流産
反復流産とは、流産を2回以上繰り返した場合をいいます。およそ2〜5%の頻度で起こるとされています。
習慣流産
習慣流産とは、流産を3回以上繰り返した場合のことです。3回以上繰り返す場合は、両親に何らかの病気がある可能性があります。子宮の形態異常やホルモンの異常、染色体異常などが原因とされています。
流産の時期による名称
流産の時期による名称には、化学的流産があります。
化学(的)流産
化学的流産とは、妊娠検査で陽性反応は出たものの、超音波検査では妊娠が確認できず、早い段階で流産してしまった状態をいいます。妊娠に気づかず、月経と考えて過ごすケースもあるようです。
稽留流産に関連するよくある質問
稽留流産に関連する、よくある質問についてまとめました。
Q:稽留流産と診断されましたが、つわりが続いています。どうしたらいい?
稽留流産後につわりが続くのは、ホルモンの影響が考えられます。流産によって胎盤の働きは停止しますが、胎盤から分泌されるhCGホルモンの働きがなくなる場合もあれば、hCGの分泌が続く場合もあるためです。
つわりが続くか治まるかは、人によって違いがあります。また、稽留流産による心への影響で、気分が悪くなったりすることもあるでしょう。
心や体がつらいときは、主治医に対処方法を相談してください。つらい気持ちを自分だけで抱えないことも重要です。
Q:稽留流産は何週が多い?
稽留流産は、妊娠12週未満で起こるリスクが高いです。流産の80%以上が12週未満に起きており、稽留流産も多いと考えられています。しかし、妊婦さんの自覚症状がないため、明らかな割合はわかっていません。
Q:流産すると次の妊娠に影響する?
自然流産が1回であれば、次の機会に赤ちゃんを授かる可能性は高いでしょう。ただし、流産を2回・3回と繰り返す場合や死産を繰り返す場合は不育症が考えられます。しっかりと検査をし、次の妊娠に備えるようにしましょう。治療をすれば、赤ちゃんを授かりやすくなります。
また、不育症が考えられる際は、パートナーと一緒に医療機関でよく相談しましょう。
Q:切迫流産とは?妊娠を継続できる?
切迫流産とは、妊娠を継続できていても、流産になりかけている状態をいいます6)。通常の流産とは異なり、妊娠が継続する見込みがあります。
ただし、これまでの妊娠で早産の経験がある方は、切迫早産のリスクが高いとされており、日常生活で注意が必要です。全身運動を伴うような作業は避け、立ち仕事は休みながら行うなど気をつけましょう。
おわりに
トーチクリニックでは、将来妊娠を考えている方向けのブライダルチェックなども提供しています。ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。
恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、土曜日も開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。
医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。
ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております。
また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考ください。
参考文献
1)日本産婦人科医会.“稽留流産の診断”.日本産婦人科医会ウェブサイト
https://www.jaog.or.jp/lecture/8-稽留流産の診断/
2)女性の健康推進室・ヘルスケアラボ.“妊娠初期の流産治療について”.厚生労働省研究班
https://w-health.jp/fetation/miscarriage_treatment/
3)日本産婦人科医会. “3. 早期流産(以下、妊娠12週未満の人工妊娠中絶)について”.日本産婦人科医会ウェブサイト
https://www.jaog.or.jp/note/3.早期人工流産(以下,妊娠12-週未満の人工妊娠/
4)日本産科婦人科学会.第2回妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会.2019年3月15日 妊産婦の診療の現状と課題.厚生労働省ウェブサイト
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000488877.pdf
5)日本産婦人科医会.No.103産科異常出血への対応 序. 日本産婦人科医会ウェブサイト
https://www.jaog.or.jp/note/序-2/
6)日本産科婦人科学会.“流産・切迫流産”.日本産科婦人科学会ウェブサイト
https://www.jsog.or.jp/citizen/5707/
7)日本産婦人科医会.No.99.流産のすべて 総論 日本産婦人科医会ウェブサイト
https://www.jaog.or.jp/note/1.総論/
8)平成 23 年度厚生労働科学研究費補助金. 反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル.厚生労働省ウェブサイトhttps://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0b505d2e-87a3-488b-a78c-46a38fbcf38b/272a1b3a/20230401_policies_boshihoken_manuals-etc_03.pdf