葉酸はビタミンB群のひとつで、日本人女性が不足しやすい栄養素です。妊娠前から十分な量を摂取することで、赤ちゃんの「神経管閉鎖障害」のリスクを低減させるとされています。厚生労働省では、妊娠を計画している方や妊娠初期の方に対し、サプリメントからの摂取を推奨しています。
葉酸などが配合されたサプリメントは妊活に有効?
葉酸はビタミンB群に分類される水溶性ビタミンのひとつで、妊活に欠かせない栄養素として知られています。妊娠率が向上するとのイメージがありますが、妊娠率の向上が科学的に証明されたサプリメントはありません。
葉酸は、お母さんの貧血予防や赤ちゃんの正常な発育に重要な働きがあります。しかし、日本人女性は野菜の摂取量が不足しており、ビタミンやミネラルが不足しやすいのです。
十分な量の葉酸摂取は、赤ちゃんの先天異常のひとつである「神経管閉鎖障害」の発症リスクを低減させることがわかっています。厚生労働省では、妊娠前からバランスのよい食事に加え、サプリメントから1日400μg摂取することを推奨しています。
神経管閉鎖障害について
神経管閉鎖障害とは、赤ちゃんの神経管がうまくつながらないために生じる先天異常です。
妊娠初期は赤ちゃんの神経管がつくられる時期で、この時期に葉酸が不足すると、神経管閉鎖障害のリスクが高まるとされています。
無脳症や二分脊椎、髄膜瘤などがあり、日本では二分脊椎が大きな割合を占めています。二分脊椎とは、お腹の赤ちゃんに脊髄や脊椎の癒合不全が発生した状態です。生まれたときに背中の皮膚の欠損が認められ、早急な手術が必要になります。
背骨が曲がったり、足の変形を生じたりするなど障害の程度は個人差があります。
妊活中の人が葉酸サプリメントを摂取するタイミング
葉酸は妊娠前から摂取することが大切です。通常、妊娠に気づくのは、神経管ができる時期よりも遅くなります。そのため、妊活中(妊娠1か月以上前)から十分な量を摂取することが大切です。
葉酸は食品からの摂取も大切ですが、食品に含まれる葉酸は体での利用率が一定でないことがわかっています。一方、サプリメントで使用される合成型の葉酸は、体での利用率が高いとされています。「日本人の食事摂取基準」で示されている推奨量1)は以下のとおりです。
<葉酸の食事摂取基準(μg/日)>
葉酸サプリメントを購入するときの注意点
葉酸サプリメントを購入する際は、葉酸以外に含まれている成分を確認しましょう。安全性が不明確な成分が含まれている製品は避けてください。
日本人女性は葉酸や鉄、カルシウムが不足しやすい状況です。不足しがちな栄養素を補うための、ビタミンやミネラルのサプリメント利用は許容できるとされています。つわりで十分に食事をとれないときに利用するのも手です。
ポリフェノールやカフェインは、赤ちゃんの健康に影響を及ぼすことがわかっています。妊娠中や授乳中はポリフェノールやカフェインを含むサプリメントは避けましょう。
妊活中の食生活で意識すべきこと
妊活中の食生活は、妊娠したあとのお母さん、赤ちゃんの健康のために重要です。妊娠前から栄養バランスのとれた食事、適正体重を意識した食事を心がけましょう。
栄養バランスのとれた食事をとる
栄養バランスのよい食事とは、「主食」「主菜」「副菜」の揃った食事2)です。これらを意識して毎日3食とるのが理想です。さらに、牛乳や乳製品、果物を加えるとよいでしょう。
若い世代では、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事をとる頻度が低いとの報告があります。妊娠を計画している場合は、食事内容を見直してみましょう。
主食は、ご飯やパン、麺類などです。主食に含まれる炭水化物は、活動のエネルギー源になります。
主菜は、肉や魚、卵を使った料理で、たんぱく質や脂質を摂取しましょう。筋肉や血液をつくったり、ホルモンや細胞膜を構成したりするのに欠かせない栄養素です。
副菜は、野菜や海藻類、きのこなどを使った料理がおすすめです。ビタミンやミネラル、食物繊維が含まれ、体の調子を整える働きがあります。これらをまんべんなくとることが、健康な体づくりのために大事です。
葉酸や鉄分、カルシウムは、お母さんやお腹の赤ちゃんの生育に重要な栄養素です。さまざまな食品からとるようにしましょう。それぞれの栄養素が含まれる食品の例を紹介します。
- 葉酸:ほうれんそう・ブロッコリー・えだまめ・アスパラガス・ドライマンゴー
- 鉄分:干しひじき・あさり缶詰・きくらげ・豚のスモークレバー※・ごま(いり)
- カルシウム:牛乳・プロセスチーズ・切り干し大根・乾燥わかめ・しらす干し
※レバーは、葉酸や鉄分以外にビタミンAを多く含んでいます。ビタミンAの過剰摂取は、赤ちゃんの奇形につながる可能性があるので、食べ過ぎないようにしましょう。
適正体重を意識した食事を心がける
妊活中の食生活では、適正体重を意識して食事をとることが重要です。食べ過ぎによる肥満や、過度なダイエットによるやせすぎは注意しなければなりません。将来の健康リスクを高める可能性があります。
とくに近年は、過度なダイエットや偏食によって、やせすぎの方が増えています。自分の健康への影響だけでなく、流産や早産、赤ちゃんが小さく産まれるリスクが高まるため、注意が必要です。バランスのよい食事に加え、適度な運動を行ない、適正体重を維持しましょう。
体重はBMI(体格指数)を目安にしてください。BMIの基準と計算方法は以下のとおりです。
<BMIによる基準(妊娠前)>
<計算方法>
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
例:Aさん身長150cm、体重55kg
55÷1.5÷1.5=24.4
BMIは「ふつう」に該当
妊活中の生活のポイント
妊活中は、アルコールの摂取を控え、喫煙はやめましょう。感染症の予防対策も重要です。とくに風疹の抗体がない方は、ワクチン接種を検討しましょう。
喫煙・アルコールの摂取を控える
タバコは、がんや心臓病などさまざまな病気の原因になります。月経不順や不妊の原因になったり、赤ちゃんの発育に影響を及ぼしたりするおそれもあります。パートナーなどの喫煙による受動喫煙も影響があるとされており、注意が必要です。健康のためには、妊娠希望の有無に関わらず、禁煙することが大事です。
お酒は、妊活中から控えるようにしましょう。妊娠前の過度なアルコール摂取により、妊娠しにくくなり、流産や死産のリスクを高めるとされています。また妊娠中に飲酒すると、アルコールが胎盤を通過し、お腹の赤ちゃんに影響を与え、胎児性アルコール症候群を引き起こすおそれがあります。アルコールは、全妊娠期間を通して控えることが望ましいです。
ワクチン接種をおこなう(風疹)
風疹にかかったことがなく、ワクチンを1回も接種したことがない方は、妊娠前の接種を検討しましょう。妊娠中は、風疹の予防接種を受けられないためです。
風疹抗体を十分に持っているかどうかは血液検査で診断できます。風疹ワクチンを接種してから2か月間は妊娠を避ける必要があるので、妊娠を検討している方は早めの抗体検査をおすすめします。
なお、妊娠初期に風疹にかかると、お腹の赤ちゃんに感染し、難聴や心臓の病気を持って生まれてくる可能性3)があります。
ちなみに、感染を防ぐためにはパートナーの協力も必要です。パートナーも風疹の抗体がなければ、ワクチンを接種するようにしてください。
おわりに
参考文献
1)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書.日本人の食事摂取基準(2020年版).厚生労働省ウェブサイト
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
2)厚生労働省 令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業.“健やかなからだづくりと食生活Book”.子ども家庭庁ウェブサイト
https://sukoyaka21.cfa.go.jp/media/tools/s02_nin_gai008.pdf
3)東京都妊活課.妊娠のために知っておきたい知識.“妊娠のために知っておきたいこと”.東京都福祉局ウェブサイト
https://www.ninkatsuka.metro.tokyo.lg.jp/ninshin-shitteokitai/