人工授精(AIH)とは
人工授精(AIH)とは、男性から採取した精液を洗浄、濃縮し、運動性の良い精子を排卵日にあわせて直接子宮内に注入する方法です。
人工授精には、自然な排卵の周期で行う方法と排卵誘発を併用した治療方法があります。排卵誘発剤の使用により、妊娠率が向上するという報告もありますが、不妊症の原因などから適応が検討されます。また、排卵誘発剤を使用する場合は、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)に注意する必要があります。
2022年4月より施設基準を満たす医療機関において配偶者間人工授精(AIH)は保険診療の適応となりましたが、提供精子を用いた人工授精(AID)は保険診療で行うことはできません。
人工授精が適応されるケース・向いていないケース
人工授精が適応されるケース
- 精子・精液の量的・質的異常(乏精子症・精子無力症など)
- 射精障害や性交障害
- 頚管因子(子宮頸管の分泌液が少ない、精子-頚管粘液の不適合など)
- 原因不明不妊(機能性不妊)など
人工授精が向いていないケース
- 卵管性不妊症
子宮内膜症などによる卵管閉塞や卵管の手術などにより、両側の卵管機能が失われている場合など治療困難な場合
- 重度の乏精子症・精子無力症などの男性不妊症
治療困難な卵管性不妊症や重度の男性不妊症は、生殖補助医療(ART)の適応となります。また、原因不明不妊においてARTは、タイミング療法や人工授精の一般不妊治療に比較して妊娠率が高いと報告されています。
人工授精での妊娠率
人工授精の1周期あたりの妊娠率は5〜10%1)と言われています。
人工授精で妊娠しない原因
妊娠の成立には、卵子と精子が出会い、受精卵となり、着床する、という多くのプロセスがあります。そのため、妊娠しない原因は、排卵・卵管・子宮・男性側など複数の因子が重複していたり、逆に検査をしても、どこにも明らかな不妊の原因が見つからない場合もあります。
卵管のピックアップ障害
卵管采と呼ばれる卵管の先端部分が動いて卵子を卵管内に取り込み、受精の場所となる卵管膨大部へ卵子が移動します。しかし、卵管の炎症や過去に受けた手術などの影響で、卵管采が卵子をうまく取り込めなくなる場合があり、これをピックアップ障害といい、不妊の原因の一つと言われています。
ピックアップ障害の代表的な原因は、卵管周囲の癒着です。癒着の原因は子宮内膜症や性器クラミジア感染症の影響、子宮筋腫や卵巣嚢腫の手術、虫垂炎など腸の手術などが挙げられます。卵管采が正常に機能しないと卵子を卵管に取り込むことができず、妊娠に至らないことがあります。
卵子の質の低下
女性は35歳以上になると、妊娠率が低下します。これは、加齢による卵子の染色体異常や受精後の胚発育の悪化により起こると考えられています。そのため、自分自身の卵子による治療では、女性の年齢が上がるにつれて、妊娠率・生産率は低下します。
しかし、「卵子の老化」の詳細なメカニズムは現在のところ解明されていません。
精子の受精障害
男性不妊の原因の82%は造精機能障害です2)。精子は精巣で作られ、精巣上体を通過する間に運動能力を得て、受精する能力を獲得します。精子形成や成熟過程に異常があると、精子数の減少や運動率の低下、奇形率の増加などにより受精しづらくなります。重度の乏精子症や精子運動不良など、人工授精による妊娠が期待できない場合には生殖補助医療(ART)が有効である2)と言われています。
無精子症や重度の乏精子症では、精路通過障害に対する精路再建術や精索静脈瘤に対する外科的治療や精巣または精巣上体からの精子採取なども検討されます。
人工授精で妊娠できない場合
人工授精で妊娠が成立したカップルの約90%が4回以内で妊娠していると報告されています。このことから人工授精を試みる回数の目安は3〜4回を目安にしておくとよいでしょう。
そこまでの治療で妊娠に至らない場合には、その後の人工授精を継続しても妊娠成立しにくいと考え、生殖補助医療(ART)の導入を考慮するのが妥当であるとされています。
人工授精の治療回数は、年齢や不妊期間、不妊の原因、社会的状況などを考慮し、幅を持たせながら検討されています。
人工授精についてよくある質問
Q:人工授精による治療回数は何回ですか?
人工授精の施行回数は、前述のとおり3〜4回が目安とされています。年齢や不妊期間、原因、社会的状況などをふまえて、施行回数が検討されます。妊娠が成立しない場合は、次のステップである生殖補助医療(ART)の導入も検討することになります。
Q:人工授精の成功はいつわかりますか?
月経周期の35日前後になっても月経がない場合は、妊娠の可能性を考えて妊娠反応検査を受けるとよいでしょう。
月経がきた場合は、再度受診し、医師と次の治療方針を話し合いましょう。
おわりに
トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。
恵比寿駅・上野駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、土曜日も開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。
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