自宅でできる妊活法!シリンジ法とは?費用は?
シリンジ法は一般不妊治療におけるタイミング療法の一種で、自宅でできる妊活法のひとつです。具体的には、針のない注射器のような器具(シリンジ)を使用して精液を採取し、排卵期に合わせて女性の膣内に精液を注入する方法のことを指します。
シリンジ法専用のキットは市販されており、1回あたりの費用としては500円〜1000円程度で購入することができます。
■一般不妊治療におけるシリンジ法の位置付け
人工授精との違い
人工授精は、女性の排卵期に合わせて、洗浄・濃縮した精液を子宮内に直接注入して妊娠を図る不妊治療法です。人工授精の場合は、クリニックで医師が必要な検査をした後、専用の器具を用いて精液を子宮に注入する医療行為のため、それなりに費用がかかります。目安としては、人工授精1回あたり、自費診療で約5万円、保険適用で約1.5万円程度かかります。
一方、シリンジ法は精液を子宮内に直接ではなく膣内に注入するという点と、市販のキットを用いて自分で自宅で簡単に実施でき、費用も抑えられるという点で人工授精と異なります。
■人工授精とシリンジ法の違い
妊活においてシリンジ法が適している方
妊活においてシリンジ法という手段を実施するためには、男性と女性の双方が自然妊娠が可能な状態であることが前提となるため、まずはクリニックで検査をして検査をすることをおすすめします。
その上で、妊活においてシリンジ法が向いている方は以下の通りです。
【男性・女性問わず】
・性行為で痛みを感じる方
・性行為自体が苦手な方
・精神的、肉体的な負担を減らして妊活をしたい方
・高額な不妊治療を実施する前に、まずは費用を抑えて妊活をしたい方
【男性側】
・ED(勃起障害)や射精障害があり腟内射精ができない方
【女性側】
・年齢が35歳以下の方
・月経周期の乱れが少ない方
・病院での検査で子宮筋腫や子宮内膜症などの異常がないことが確認できている方
妊活でシリンジ法をおこなうメリット
妊活でシリンジ法を行うメリットは大きく分けて4つあります。
性行為ができない場合でも取り組める
男性女性問わず、性交痛があって性行為に臨めない方や、男性の場合はEDや腟内射精障害などで性行為自体ができても腟内で射精ができない方でも、自宅で妊活に取り組める点はシリンジ法のメリットと言えます。
また、物理的に性行為ができないときだけではなく、お互いに仕事で時間を合わせられなかったり、既に子供がいて第二子を検討しているけれど子供のお世話で時間が取れなかったりといった時間的な制約で性行為ができない場合にも取り組める点もメリットと言えるでしょう。
体や心への負担が少ない
シリンジ法は、体外受精や人工授精と比べて心身の負担が少ないという特徴があります。また、ホルモン剤や排卵誘発剤といった薬を使用しないため、副作用のリスクが少なくなるという点でも体の負担が少ない妊活と言えます。
その他、排卵日に必ず性行為をしなければならないという精神的なプレッシャーを感じている人にとっても、心へあまり負担をかけずに妊活に取り組めるという点はメリットと言えます。
自宅で簡単に行える
クリニックに行かず自宅で簡単に行えることは、メリットのひとつです。人工授精を考えているが精神的なハードルが高いと感じている人にとって、最初のステップとして試してみることにも向いています。また、他の不妊治療中でクリニックに通院しながらであっても並行して実施できるという点もメリットと言えます。
費用が安い
人工授精や体外受精といった高度な不妊治療法は治療費が高額になりやすいですが、シリンジ法は1回あたりの費用として500円〜1000円程度と安価で行えるため、費用が安いという点はメリットと言えます。
妊活でシリンジ法をおこなうデメリット
妊活でシリンジ法を行うデメリットは、感染症リスクへの対策が必要という点です。人工授精などクリニックで実施する不妊治療の場合は、衛生管理が徹底されている環境で治療を実施できますが、シリンジ法は自宅で自分とパートナーとで実施するため、無菌状態を保つことが困難です。そのため、少しでも感染症リスクを軽減するために衛生管理に十分注意を払う必要があります。
自宅でシリンジ法を実施する場合、感染症リスクを軽減するために次の3つの点に注意しましょう。
・処置を行う場所を事前に消毒し、清潔な環境にしておく
・シリンジなどの器具は消毒または滅菌されたものを使用し、一度使ったものは再利用せずに廃棄する
・処置を行う前に手洗いと消毒をし、可能なら清潔な使い捨ての手袋を着用する
妊活でのシリンジ法の妊娠率
2024年8月現在、シリンジ法における妊娠率についての明確なデータはありませんが、おおよそタイミング法による自然妊娠と同等の妊娠率が期待できると考えられています。
参考情報として、夫婦55組を年齢別に3グループに分けてシリンジ法の平均妊娠率を調査した海外の研究で、1回の排卵期を1サイクルとし、排卵予定日前後一日おきに自宅でシリンジを用いた膣内授精を繰り返した結果、20〜33歳のグループ29組で68.9%、33〜36歳のグループ14組で42.8%、36〜40歳のグループ12組で25.0%という妊娠率であったと報告されています。
タイミング法の妊娠率
日本産婦人科学会の調査によると、原因不明の不妊症患者におけるタイミング法1回(1周期)あたりの妊娠率は約5%、6ヶ月間の累積妊娠率は約50%、24ヶ月間の累積妊娠率は約60%というデータがあります。一般的に、4〜6回のタイミング療法を行っても妊娠しない場合は、タイミング法ではない別の不妊治療を検討することが推奨されます。
妊活でシリンジ法を実践したい!使用方法や成功のコツを解説
シリンジ法で使用するシリンジ法キットの使い方とコツは以下の通りです。
1.手指や器具を置くテーブルなどの周辺環境を消毒し、清潔な状態にする
2.採精容器を開封し、採取した精液を採精容器に入れる
3.採取直後の精液はゲル状で粘度が高いため、10〜15分程放置し、サラサラな状態にする
4.滅菌パックからシリンジを取り出し、精液をすべて吸い上げる
5.シリンジを膣内に挿入し、精液を注入する
※精液は長時間放置するとほこりなどの不純物が混入し不衛生になるため、採精してから遅くとも30分以内には膣内に入れることが望ましい
6.シリンジを膣から抜き出し、精液が膣から流れ出ないように約10〜15分程腰を高くした状態を保つ
シリンジ法の妊娠率を上げるポイント
シリンジ法の妊娠率を上げるポイントは、精子の質を上げつつ、精液の量もできるだけ多く採精できるようにすることです。そのためには2つのポイントを意識しましょう。
1点目は、排卵日直前は少し禁欲期間を設けることです。排卵日の大体4〜5日前くらいから禁欲することで、十分な精液の量を確保できる可能性が高まります。逆にあまり長く禁欲すると、死んだ精子と新しい精子が混在し、質の高い精子の割合が低くなるため、禁欲期間の目安は長くても1週間程度に留めておきましょう。
2点目は、男性側の体のコンディションを整えておくことです。寝不足や疲れ、ストレスが溜まっていると精子の質が悪くなるため、男性は排卵日が近づいたらなるべく睡眠時間と休息を取ることを心がけましょう。
おわりに
トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。
恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。
不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ご予約はウェブからも受け付けております。
また、すでに不妊治療を受けている方々のお悩みやセカンドオピニオンにも対応しております。セカンドオピニオンを含めたクリニックへのよくあるご質問はこちらをご参考ください。