妊娠初期には、比較的多くの方が不正出血を経験します。
不正出血の原因として着床出血がよく知られていますが、その他にも不正出血の原因があるため、注意が必要です。
本記事では、妊娠初期に見られる不正出血の原因について解説します。出血の量や状態もまとめていますので、病院に行く前の注意すべきポイントとしてお役立てください。
不正出血とは?
通常の月経以外の異常な性器出血を、不正出血と呼びます。主な不正出血の種類と原因は以下の通りです。
月経と不正出血を見分けるためには、出血のタイミングや期間、血の色や量などを観察し、普段の月経と異なる点があるかどうかを確認します。普段と異なる場合、出血の様子を医師に報告できるようにしておきましょう。
また、月経周期が不定期な方は、基礎体温を記録し、出血前に体温変化があったかどうかを確認しましょう。体温に変化がない場合、不正出血の可能性が高くなります。
妊娠初期に出血するのは不正出血?
妊娠初期の出血は、通常の月経とは異なる「不正出血」に分類されます。
妊娠初期に起こる出血の種類
妊娠初期の出血の原因と状態について、一覧にまとめました。原因によって、出血量、色、状態などが異なります。
それぞれについて詳しく解説していきます。
妊娠初期に起こる不正出血の原因
着床出血
妊娠初期の出血のうち、比較的多くみられるのが「着床出血」です。着床出血は必ずみられるわけではなく、妊娠した方の約20%が経験するといわれています。
着床出血は、受精卵(胚盤胞)が子宮内膜に着床する際に、子宮内膜の血管を傷つけ、少量の出血を起こしてしまう現象であり、着床が完了したことを示すサインの一つです。
着床出血の際の血の色は、薄いピンク色・薄い茶色・淡い赤色といった、月経と比べて薄い色になることが特徴です。
月経予定日の約1週間前に始まり、持続期間は月経よりも短く、個人差はありますが、およそ2〜3日程度が目安です。
着床出血かもしれないと思ったら、妊娠検査薬を使って確認するのも一つの方法です。
以下の記事で着床出血について詳しくまとめていますので、詳しく知りたい方は参考にしてください。
絨毛膜下血腫
絨毛膜下血腫(じゅうもうまくかけっしゅ)は、胎盤と子宮壁の間に血が溜まってしまう状態です。
妊娠初期の性器出血を初発症状として発見されることが多く、超音波検査で血腫を確認することで診断されます。腹部の痛みを伴うことがあり、痛みの程度は血腫の状態により異なりますが、下腹部に痛みを感じることが多いと言われています。
出血の色や量は、血腫の状態や場所によって異なります。鮮やかな赤い出血は新しい出血で、茶色がかっている色の場合は過去の出血が体外に排出されていると考えられます。また、レバーのような血の塊が混じることもあります。
絨毛膜下血腫は自然に吸収され、小さくなり消失する場合も多いです。ただし、血腫が大きい場合は、流産・早産に移行することがあります。
切迫流産
切迫流産は、妊娠初期から中期にかけて、流産となる危険がみられる状態を指します。
少量の性器出血や腹痛など、流産となってしまう可能性はあるものの、まだ完全に流産にいたっていない状態です。そのため、子宮収縮がある場合には子宮収縮抑制薬を使うなど対処をしながら、妊娠の継続を目指します。
出血量は少量〜多量で、状態によって異なります。切迫流産の初発症状としては、鮮やかな赤い出血が見られることが比較的多いとされています。
なお、切迫流産の症状が落ち着いてきたときに、茶色や黒っぽい出血が認められることがありますが、これは過去の出血が体外に排出されたものと考えられます。
早期流産
早期流産は、妊娠12週未満での流産です。
早期流産の主な原因は胎児側の染色体異常とされています。これは、精子や卵子がつくられる過程や受精の過程で染色体に異常が生じ、正常な成長が難しくなることによるといわれています。
出血量には個人差があり、少量から月経よりも多い場合と幅があります。最初の頃は、茶色がかった赤やピンク色の出血が見られ、時間が経つにつれて鮮やかな赤い血に変わり、出血量が増えていきます。また、多くの場合、下腹部に痛みを伴います。
ちなみに後期流産(妊娠12週以降〜22週未満)のときにも不正出血が見られることがあり、その場合は出血量が比較的多い傾向にあります。
異所性妊娠
異所性妊娠とは、受精卵が子宮内膜以外の場所に着床してしまう妊娠のことで、以前は「子宮外妊娠」と呼ばれていました。
通常、受精卵は子宮体部の内膜に着床し、胎児へと成長していきますが、何らかの原因で、卵管などの本来の着床部位以外の場所に着床することがあります。
異所性妊娠による出血では、強い腹痛や貧血に伴うめまいを伴うことがあります。これらの症状が出たら、すぐに病院に連絡してください。
出血は少量から始まり、断続的にだらだらと続くことが多いとされています。時間の経過とともに、出血が増加する場合もあり、体内に出血が溜まることもあります。異所性妊娠の出血は、古い血液であることが多く、その場合は茶褐色や暗赤色の色合いになります。
胞状奇胎
胞状奇胎は、受精卵が正常に成長せずに、絨毛の一部または全体が、ぶどうの房のような形状になる状態を指します。
胞状奇胎は、完全奇胎と部分奇胎に分けられ、それぞれ以下の特徴があります。
・完全奇胎:全ての絨毛が異常となる
・部分奇胎:正常な絨毛と異常な絨毛が混在する
胞状奇胎の場合、妊娠初期からの不正性器出血のほか、つわり症状が長く続くなどの症状も見られます。ただし、超音波検査の発達により、自覚症状が見られる前に発見されることも増えてきています。
前置胎盤
前置胎盤は、胎盤が子宮の下部に位置し、子宮口を部分的または完全に覆ってしまう状態を指します。妊娠初期にも確認されることはありますが、通常は妊娠中期以降に問題として確認されます。
前置胎盤の場合は、妊娠中期から後期にかけて、出血が認められることがあります。少量の鮮血が不規則にくり返す場合には、病院で診断を受けて安静にする必要があります。
また、妊娠後期に急に多量の出血が起きることもあります。妊娠後期に子宮の収縮や胎児の体重がかかることで、胎盤が剥がれやすくなるためです。多量の出血がある場合は、母体や胎児へのリスクが高まるため、医療機関での対処が必要です。
子宮腟部びらん
子宮腟部びらんは、子宮の腟に近い部分に赤みが見られる状態のことを指します。
びらん自体は多くの女性に自然に見られることも多く、妊娠とは直接関係がありません。ただし、妊娠中はホルモンの影響で子宮頸部の血流が増えるため、びらん部分が刺激を受けやすくなり、出血やおりものが増えることがあります。
出血した血の状態はサラサラとした状態の赤やピンク色で、通常の月経より少ない場合が大半です。
子宮頸管ポリープ
子宮頸管ポリープは、子宮の頸管内にできる小さな良性の腫瘍です。
見た目は小さな突起物状で、子宮頸管に付着しているように見えます。良性の腫瘍なので経過観察をすることが多いですが、出産時に邪魔になる場合には事前に切除することもあります。
また、多くのケースでは無症状ですが、一部のケースでは少量の出血、おりものが増える場合もあります。その場合、サラサラとした赤い血や、おりものに混じった茶色がかったものが見られます。
妊娠初期に注意した方がいい出血は?
妊娠初期の出血で注意したいのは、月経の経血と比べて出血の量が多く、それが続く場合です。断続的であっても注意が必要です。
水道の蛇口から水が出るように、短時間で多量の出血がある場合などは、病院に連絡しましょう。血の色が鮮やかな赤で量が多く、出血が続く場合には、何らかの疾患が原因になっている可能性があります。暗赤色や褐色の場合も、量が多い場合には要注意です。
妊娠初期に不正出血が起こったらどうしたらいい?
妊娠初期に不正出血が起きたら、血液の色や量などの状態を観察しましょう。血液の状態がサラサラか、ドロっとした状態で塊が混じっていないか、においが強くないかどうかも確認します。
今回、解説した原因では、血液の鉄のにおいがする場合がほとんどですが、ほかに感染や炎症がある場合には、強いきついにおいがするケースもあります。
また、腹痛やめまい、吐き気など、出血に伴う他の症状も、出血の状態とともに記録しておきましょう。記録した出血の状態や症状、発熱しているかについて報告して、医師の指示を仰ぎましょう。
妊娠初期の不正出血に関するよくある質問
Q:妊娠初期の不正出血を予防する方法はありますか?
妊娠初期の不正出血を予防する方法はありません。
しかし、重たい物を持ったり、長時間立ったまま過ごしたりすることなどを避けて、身体に負担がかからないように過ごしてください。
Q:不正出血があった場合に受診するタイミングは?
通常の月経よりも薄い色の血が少し出血して、出血が止まった場合は、記録だけ残しておいて、定期診断の際に報告するとよいでしょう。
出血の量が月経と同じくらいか、それよりも多い、出血が続くなどの場合には、病院に連絡しましょう。
おわりに
トーチクリニックでは、将来妊娠を考えている方向けのブライダルチェックなども提供しています。ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。
トーチクリニックは恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。
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また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考ください。