妊娠初期に腰痛があらわれる原因・対処法|注意が必要な症状や痛み止めの使用可否についても解説

最終更新日時:
2024-11-27
市山 卓彦
市山 卓彦 医師
院長 婦人科 生殖医療科 医師
2010年順天堂大学医学部卒。2012年同大学産婦人科学講座に入局、周産期救急を中心に研鑽を重ねる。2016年国内有数の不妊治療施設セントマザー産婦人科医院で、女性不妊症のみでなく男性不妊症も含めた臨床及び研究に従事。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、優秀口頭発表賞および若手研究者賞を同時受賞。2021年には世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど、着床不全の分野で注目されている。2019年4月より順天堂浦安病院不妊センターにて副センター長を務め、2022年5月トーチクリニックを開業。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

妊娠初期でも腰痛の症状はあらわれる?原因は?

妊娠中の腰痛は、多くの人が経験するつらい症状の一つです。お腹が大きくなることで腰に負担がかかるのはよく知られているかと思いますが、まだお腹が目立たない妊娠初期でも腰痛が現れることがあります。

この記事では、妊娠初期に見られる腰痛の原因や対処法などについて解説します。

妊娠初期に腰痛があらわれる原因

妊娠初期に腰痛が現れる原因は、以下のようなものが考えられます。

ホルモンの変化

妊娠により分泌されるリラキシンというホルモンは、妊娠初期から分泌され、出産に備えて赤ちゃんの頭が骨盤を通過しやすいように、骨盤周辺の靭帯や関節を緩ませる作用があります。靭帯や関節が緩むことで腰に負担がかかりやすくなり、痛みを感じることがあります。

体重の変化

妊娠が進むにつれて体重が増加し、腰や背中に負担がかかりやすくなります。大きな体重変化がない妊娠初期でも、身体の重心が変わることで腰痛が引き起こされることがあります。

姿勢の変化

子宮が大きくなることで身体のバランスが変わり、無意識のうちに姿勢が悪くなることがあります。これが腰痛の原因になることがあります。

その他

つわりなどにより、思うように動くことができなかったり、同じ姿勢が長く続いてしまうなど、身体に負担のかかる状態が続くことで腰痛を引き起こすこともあります。もともと運動量が少ない場合や、安静によって筋肉量が減少してしまうことも、腰痛の要因となります。

妊娠初期に腰痛があらわれたときの対処法

無意識におなかを守る姿勢や背中を反らせた姿勢は腰に負担をかけます。

症状を和らげたり悪化させないための対処法をいくつかご紹介します。自分に合った方法を見つけ、無理なく取り入れていきましょう。

腰への負担を減らす姿勢・動作を心がける

長時間のデスクワークなど、同じ姿勢で過ごすことが多い場合は、筋肉や関節が固まって腰痛が起こりやすくなります。定期的に立ち上がったり、肩を回すなどして身体を動かすようにしましょう。足を組んだり、いつも同じ方向に重心を乗せたりするのは避けましょう。

座るときは、仙骨を立てるように意識することで、腰への負担が軽減されます。足の裏が床につくように椅子の高さを調整し、お尻の下にクッションなどを挟んで骨盤が後ろに倒れないようにすることで、姿勢が安定します。

寝るときは、横向きになって上側の手足を軽く曲げ、横向きから少しうつ伏せになると、腰の負担が軽減されることがあります。クッションなどを使用して、リラックスできる姿勢を見つけましょう。うつ伏せになるときは、お腹が圧迫されないように、枕を胸の下に入れるなど工夫してください。

寝ている姿勢から起き上がるときや、床など低い位置にあるものを取るときなどは、注意が必要です。腕で身体をしっかり支え、急激な動きを避けてゆっくりと動作しましょう。中腰など不安定な姿勢は避け、膝を曲げて腰を低くすることで腰に負担をかけないようにすることが大切です。

適度な運動やストレッチをおこなう

妊娠中の経過に問題がなく、治療中の病気などで禁止されていない場合は、妊娠中の運動は有益であり、腰痛の軽減効果も報告されています。

身体を動かすことで血行が促進され、ストレス発散や気分転換にもつながります。日常生活の中で取り入れやすいウォーキングやストレッチ、寝転んだままできる運動などから始めてみましょう。

運動中に、立ちくらみや頭痛、腹痛、息苦しさなど、普段と異なる症状が現れた場合は、すぐに運動を中止し、症状が改善しない場合は医師に相談してください。

妊娠中に行う運動について

種目備考
好ましい
スポーツ
ウォーキング、フィットネスバイク、
ダンス、柔軟運動、水中エクササイズ、
水泳、ウェイトやバンドを使った筋力トレーニングなど
好ましくない
スポーツ
サッカー、ホッケー、レスリング、
サーフィンなど
接触や腹部外傷の危険が高い
危険な
スポーツ
体操競技、重量あげ、乗馬、スキー、
スケート、ダイビングなど
転びやすく外傷を受けやすい

体を温めて血行を促進させる

腰痛に対する温熱療法の効果は、まだ明らかになっていませんが、一時的な痛みの緩和に役立つ可能性が報告されています。温めることで血行が促進され、痛みが和らぐと感じる人も多いようです。

心地よいと感じる場合は、体調に合わせて湯船に浸かったり、ホットパックやカイロなどを利用するのも良いでしょう。ただし、やけどの危険性があるため、カイロやホットパックを直接肌に当てないようにしてください。

歩きやすい履き物を選ぶ

ヒールが低く、安定感のある靴を選ぶことをおすすめします。スニーカーなど、足にフィットし、身体への負担が少ない靴を選ぶことで、正しい姿勢を維持しやすく、疲労感の軽減にもつながります。

妊娠初期において腰痛と同時に出現したら注意が必要な症状

腰痛と同時に下腹部痛や性器出血がある場合

腰痛は妊婦によく見られる症状ですが、下腹部痛や性器出血を伴う場合は、切迫流早産の兆候である可能性もあり、注意が必要です。また、足のしびれや痛みがある場合、腰椎椎間板ヘルニアを合併していることも考えられます。いずれの場合も、症状について医師に相談しましょう。

妊娠初期の腰痛に関連したよくある質問

Q:妊娠初期にみられる腰痛はいつからあらわれる?

腰痛の原因のひとつであるホルモンの影響もあり、妊娠3~7週目頃から腰痛を感じる方もいらっしゃいます。腰痛が現れやすいのは妊娠後期からですが、リラキシンは妊娠初期から出ており筋肉や靭帯は緩んでいるので、症状がなくても、妊娠初期から骨盤ベルトなどの対策をすることをすすめています。

Q:妊娠初期にあらわれる腰痛はどんな痛みを感じる?

腰痛の程度や部位についても個人差があります。張っているような痛みや、だるさを伴う腰痛などが見られます。痛みを感じる部位については、腰全体や腰の片側、腰から背中にかけてなど、さまざまです。

Q:妊娠初期で腰痛がひどいときは市販の痛み止めを使ってもよい?

薬の中で、赤ちゃんに影響を与えるものは一部に限られるとされています。しかし、妊娠初期は赤ちゃんの心臓や消化器など、主要な器官が形成される重要な時期です。薬の種類や服用時期によっては、赤ちゃんへの影響が出る可能性もあるため、自己判断で薬を使用せず、必ず医師に相談してください。

Q:妊娠初期で腰が痛いときは鍼治療を受けたり、マッサージチェアを使用したりしてもよい?

腰痛に対して鍼治療は有用であることはわかっていますが、妊娠中の腰痛に対する鍼治療やマッサージチェアの効果については、現時点では明らかになっていません。鍼治療や整体などを受ける場合は、医師に相談の上で受けることをおすすめします。

マッサージチェアやマッサージ機器の中には、妊娠中の使用が禁忌とされているものがあります。これは、万が一の事故などを考慮した安全面への配慮からです。使用前に必ず取扱説明書をよく読み、妊娠中の使用が可能かどうかを確認してください。

Q:妊娠初期の腰痛対策グッズとして骨盤ベルトは効果がある?

妊娠中の腰痛の軽減のため、骨盤ベルトの使用は推奨されています。また、最近では、妊娠中の骨盤ベルトの使用により姿勢が改善し、転倒リスクが減少するという結果も出ています。痛みが軽減すると感じる場合はもちろん、痛みが出る前の初期から使用するのも良いでしょう。

骨盤ベルトは、身体に合ったサイズのものを正しい位置に装着することが大切です。サイズの選択や装着方法などについて迷うことがあれば、助産師や医師に相談してみましょう。

*腰痛以外の妊娠初期症状について気になる方は、下記記事もご覧ください。

参考:妊娠初期症状はいつから?主な症状や原因について詳しくチェック

おわりに

トーチクリニックでは、将来妊娠を考えている方向けのブライダルチェックなども提供しています。ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。

トーチクリニックは恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております。

また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考ください。