着床の症状とサインについて〜受精から着床まで〜

最終更新日時:
2024-07-31
市山 卓彦
市山 卓彦 医師
院長 婦人科 生殖医療科 医師
2010年順天堂大学医学部卒。2012年同大学産婦人科学講座に入局、周産期救急を中心に研鑽を重ねる。2016年国内有数の不妊治療施設セントマザー産婦人科医院で、女性不妊症のみでなく男性不妊症も含めた臨床及び研究に従事。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、優秀口頭発表賞および若手研究者賞を同時受賞。2021年には世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど、着床不全の分野で注目されている。2019年4月より順天堂浦安病院不妊センターにて副センター長を務め、2022年5月トーチクリニックを開業。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

着床とは?着床完了のサインは?

着床とは

着床とは、卵管膨大部と呼ばれる卵管の先の部分で受精した受精卵が卵管を通って子宮内膜に接着し、子宮内膜の内部に侵入するまでの過程のことをいいます。着床することで妊娠が成立します。

着床して数日が経過し受精卵が発育すると、子宮内膜と受精卵の表面に絨毛(じゅうもう)と呼ばれる細かい毛のような突起が複数ある組織が作り上げられ、そこから胎盤が形成されていきます。やがて、受精卵はその絨毛を使って母胎の血管から栄養や酸素を吸い上げて育つようになります。

着床について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

着床完了のサインとタイミング

まず最初にお伝えしておきますと、着床が完了したかどうかを明確に判断できる全員に共通したサインはありません。着床出血や着床痛など、着床時期に起こりやすい症状はいくつかありますが、必ずしもこれらの症状が着床のサインとはいえないことと、逆に無症状でも着床しているケースもあるため、特定の症状から着床が完了したかどうかを断定することは難しいです。

なお、明確に判断できるかどうかは別として、着床出血や着床痛などの症状が起こりやすいタイミングは、一般的に妊娠3〜4週目頃と考えられています。着床時に見られる症状について詳しくは「着床時に見られる症状について」の項目にて後述しています。

受精時に見られる症状

性行為後、受精が成立すると、女性ホルモンの影響により女性の身体や体調に少しずつ変化が訪れます。体調の変化はちょっとした症状から始まることもあるため、人によっては気付かない場合もあります。

症状が見られる時期は排卵のタイミングと近いため、最後の生理から約2週間後くらいが目安になります。具体的な症状の代表例としては、頭痛・眠気・腰痛などが挙げられます。

症状が起こる原因

受精後に頭痛・眠気・腰痛などの症状が起こりやすい主な原因は、ホルモンバランスの変化です。

頭痛は、受精後に女性ホルモンのひとつであるプロゲステロンが増加することで脳の血管が拡張され、脳の神経を刺激しやすくなるために起こると考えられています。また、プロゲステロンには体温を上げたり眠気を強くしたりする働きもあるため、眠気も感じやすくなります。

人によって腰痛を感じるのは、女性ホルモンのバランスが変化することで子宮内膜の状態が変わるからだと考えられています。受精すると受精卵が着床しやすくするために、子宮内膜が厚くなっていくため、その変化によって腰痛を感じる人もいます。

着床時に見られる症状

着床時期には女性の体にさまざまな変化が訪れます。ここでは、着床時期に見られる代表的な体の変化について解説します。

着床出血

着床時期に起こりやすい代表的な症状のひとつは着床出血です。着床出血とは、受精卵が子宮内膜に着床する際に、子宮内膜の血管を傷つけて少量の出血を起こしてしまう現象のことをいいます。また、着床出血は着床が完了したことを示すサインのひとつとも考えられています。

着床出血が起こる時期としては大体着床の前後1〜2日程度と考えられており、出血量は少ないのが特徴です。着床したら100%起こるわけではなく、着床しても着床出血が起こらない場合もあります。

なお、着床出血は月経の開始予定日とほぼ同じタイミングで起こることが多いため、月経と間違いやすいところも特徴のひとつです。

着床出血と月経の違い

着床出血は月経と同じようなタイミングで起こるため間違いやすいですが、着床出血と月経とではそれぞれ異なる特徴があります。着床出血と月経の主な違いと見分け方は以下の通りです。

着床出血 月経
血が混じったような薄いピンクや茶色 赤色から暗めの茶色
血の量 少量 量が多く、血の塊が出ることもある
期間 1〜2日程度。長くても3〜4日前後。 3〜7日程度
症状の程度 お腹の奥がチクチクと痛み、軽い生理痛のような症状 個人差が大きいが、人によっては激しい腹痛が起こることもある

※症状には個人差があるため、表の内容はあくまで目安です

おりものの変化

着床時期は女性ホルモンのバランスが変化するため、おりものの量や性質が変わりやすくなる時期でもあります。ここでは着床時期に見られる、特徴的なおりものの変化について解説します。

おりものの量

受精時期には女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌量が増えるため、おりものの量が増えやすくなります。普段はおりものがあまり出ないという人であっても、おりものが出ることがあります。

おりものの性状としては普段よりも水っぽくサラサラとしていることが多いです。

おりものの色

着床時期に見られるおりものの色の変化としては、普段半透明だったものが白濁して乳白色になったり、クリーム色や黄色っぽくなったりすることがあります。また、着床出血が起こるとおりものに少量の血が混ざるため、ピンクや薄い茶色っぽい色になることもあります。

おりものの臭い

おりものの臭いは、普段と比べて酸っぱいような少しきつい臭いになることがあります。

着床時期のおりものの変化については、おりものの量・色・臭いともに個人差が大きいため、必ずしもこれらの状態に当てはまらない人もいます。

着床痛

着床痛は着床時期に起こりやすい代表的な症状のひとつです。正確にお伝えすると、着床痛は医学的に明確に根拠がある症状ではありませんが、着床時期に生理痛とは若干異なるチクチクやピリピリとした腹痛または腰痛のような症状を感じる方が多いため、便宜上「着床痛」という言葉が使われることがあります。痛みの強さは人によっても異なり、生理痛のような鈍痛、胃痛、お腹や胸の張りなどを感じる方もいれば、逆に何も症状がない方もいらっしゃいます。

着床痛がなぜ起こるのかといった理由については、子宮の収縮によるものではないかといった説もありますが、明確にはわかっていません。

基礎体温の変化

通常、排卵後は基礎体温が上昇し、生理の直前になると基礎体温が下がる傾向があります。しかし、着床して妊娠が成立すると女性ホルモンのプロゲステロンの分泌量が増えるため、生理予定日の直前になっても基礎体温は低下せず、基礎体温が高い状態を保ったままになります。

※グラフは月経周期を28日と仮定した場合の、通常時と着床時の基礎体温の変化を比較したイメージ

月経前症候群(PMS)と似た症状

着床時期には、hCGホルモン・卵胞ホルモン(エストロゲン)・黄体ホルモン(プロゲステロン)といった女性ホルモンが多く分泌されることによってホルモンバランスが乱れるため、着床出血・着床痛・おりものの状態の変化といった症状の他に、月経前症候群(PMS)と似た以下のような症状が現れることもあります。

つわりや風邪のような症状

着床して妊娠が成立すると女性ホルモンのプロゲステロンの分泌量が増えるため、いつもの生理予定日前になっても基礎体温が下がらず、高いままの微熱のような状態が続きます。また、プロゲステロンの分泌量の増加に伴って、眠気や疲労感、寒気、吐き気(つわり)のような症状が現れることもあるため、風邪を引いてしまったように感じる人もいます。

月経がこない

着床時期に見られる最もわかりやすい身体の変化は月経が来ないという点です。

通常の月経周期では、月経が始まる日に向けて少しずつ黄体ホルモンの分泌量が減少し、子宮内膜が剥がれ落ちて月経を迎えます。一方、受精卵が子宮内膜に着床した場合、黄体ホルモンが多く分泌されて子宮内膜が剥がれ落ちずに成長し続けるため、月経が来ないのです。

しかし、単純に月経予定日が遅れているのか着床したことによって月経が遅れているのかの判断がしづらいため、もし妊娠したかどうかを確認したい場合は妊娠検査薬を使用したりクリニックを受診したりするのもひとつの手です。

体外受精の着床と違いはある?

自然妊娠による着床と体外受精による着床に大きな違いはありません。あえて挙げるとすれば、受精卵が着床するまでの流れが異なります。

まず、自然妊娠の場合は、性行為後に精子と卵子が出会い受精し、その受精卵が子宮内膜に着床することで妊娠が成立します。一方、体外受精の場合は、排卵前の卵子を採取して体外で精子と受精させ、受精卵を数日間培養して育ててから、より着床しやすい受精卵を子宮内に戻すという流れになります。

体外受精の場合、受精卵の培養期間によって初期胚移植と胚盤胞移植の2つに分けることができます。初期胚移植では、受精した胚を2〜3日程度培養した後に子宮内に移植し、移植後約4〜5日で子宮内膜に着床すると考えられています。胚盤胞移植では、受精した胚を5〜6日程度とやや長めの期間培養した後に子宮内に移植し、移植後約1〜2日で子宮内膜に着床すると考えられています。

着床を確認する方法

月経が予定通りに来なかったり、着床のような兆候が見られたりしても、妊娠したかどうかを自身で判断することは難しいと思います。そのため、ここでは着床して妊娠したかもと感じたときに具体的に何をすれば良いかについて紹介します。

妊娠検査薬の使用

着床して妊娠しているかもと感じたら妊娠検査薬を使用するのも良いでしょう。妊娠検査薬を使用するタイミングとしては、月経開始の予定日から約1週間後が目安です。月経予定日やその前など早いタイミングで検査をすると、妊娠したときに分泌されるhCGというホルモンが尿中に含まれる量がまだ少なく、妊娠していても陰性になる可能性があるためです。

また、もし妊娠検査薬を一度使用して陰性だったとしても、1〜2週間程度様子を見て、生理が始まらないようでしたら再度妊娠検査薬を使用するのも良いでしょう。

妊娠検査薬を使用して陽性反応が出た場合は、妊娠検査薬の結果で自己判断せずに、必ず一度産婦人科やクリニックを受診してください。時期としては、月経予定日から数えて約1〜2週間後を目安にしましょう。

クリニックでの診断

着床して妊娠しているかもと感じたら、最初にクリニックを受診するのもひとつの手です。もしその時点で妊娠したかどうかがわからなかったとしても、これからどうすれば良いかといった適切な指示をもらえる上に、専門的な知識や経験がある医師に診察してもらえることで安心感が得られるからです。クリニックを受診するタイミングの目安としては、月経予定日から数えて約1〜2週間後が良いでしょう。

また、妊娠検査薬で陽性反応が出た場合も、その結果で自己判断せずに必ず一度産婦人科やクリニックを受診して確定診断を受けましょう。

よくある質問

着床から何日で陽性反応が出ますか?

性行為後、精子と卵子が出会い受精し、受精卵になってから約12日後に着床が完了し、妊娠が成立します。そして着床後、だいたい10日前後で妊娠検査薬を使うと陽性反応が出ます。とはいえ、具体的に何日に着床したかを自分で判断することは難しいので、妊娠検査薬を使用する日を決めたいのであれば、月経予定日から数えて約1〜2週間後を目安にすると良いでしょう。

着床後はどう過ごすべきですか?

着床後はホルモンバランスが変化したり胎盤ができ始めたりと、心身に大きな変化が訪れるため、安静に過ごすことが望ましいでしょう。

その上で、ホルモンバランスや体調を整えるために、健康的な生活習慣を維持することが大切になります。具体的には、自身にとって十分な睡眠時間の確保、ストレスの管理、バランスの良い食生活を意識すること、糖質の高い食べ物を食べ過ぎないことなどが挙げられます。特に、アルコールの摂取や喫煙は控えてください。

運動については、ウォーキングなどの適度な運動であれば子宮の血流改善も見込めるので問題ありませんが、激しい運動は控えましょう。

おわりに

トーチクリニックでは、ブライダルチェックや不妊検査を提供しています。恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週6日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

ブライダルチェックや不妊検査にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております