妊娠超初期症状とは?いつからあらわれる?
妊娠初期とは、0週(最後の月経初日)〜13週6日までを目安としています。その中でも、妊娠3週頃までの期間を妊娠超初期と分けて呼ぶことがありますが、正式な医学用語として使われることはありません。妊娠初期には、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)というホルモンが増加します。
このホルモンの作用により、まだ妊娠検査薬で陽性反応が出ない段階であっても、いつもと違う症状の変化やちょっとした体調の変化などを感じる方もいらっしゃいます。
ただし、症状には個人差があり、すべての症状が起こるわけではありません。
妊娠超初期症状と想像妊娠(思い込み妊娠)との見分け方
強く妊娠を希望している場合や、妊娠に対する不安が大きい場合など、強いストレスがかかることにより、実際には妊娠していなくても、体調不良や月経の遅れなど、妊娠初期と似たような症状が現れることがあります。
妊娠初期に現れるさまざまな症状は、主にホルモンによって引き起こされます。ホルモンとは、からだのさまざまなはたらきを調節する化学物質で、脳からの指示を受けて分泌されます。妊娠を強く意識することでホルモンバランスが乱れてしまい、症状が出ることがあります。
妊娠超初期の想像妊娠(思い込み妊娠)と、本当の妊娠ではどのように違うのでしょうか?
妊娠超初期には、採血や尿検査では、妊娠かどうかは確認できません。妊娠超初期と想像妊娠の主な違いは、基礎体温の変化です。妊娠超初期後半(月経予定日直前)には、プロゲステロン分泌が急激に低下するため、基礎体温は低下しますが、妊娠していれば基礎体温は上昇したままです。妊娠していなくても、風邪などの感染症で体温が上昇している場合など例外もありますが、基礎体温をつけて月経周期を把握しておくことは大切です。
妊娠4週(月経予定日)以降、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)という、妊娠すると産生されるホルモンが分泌されはじめます。市販の妊娠検査薬は、尿に排出されるhCGを検出します。
一部の商品では月経予定日から検査が可能なものもありますが、妊娠5週頃から尿中hCGが急激に増加するため、市販の妊娠検査薬は、月経予定日の1週間後から使用可能なものがほとんどです。妊娠検査薬は、正しい時期に正しく使用すれば、99%以上の精度で尿中hCGを検出することができるといわれています。
少しでも早く妊娠しているか知りたい気持ちもあると思いますが、妊娠超初期では妊娠の可能性が正しく判定できないため、適切な時期に使用することが大切です。また、不妊治療でhCGを含む排卵誘発剤を投与されている場合、妊娠していなくても陽性が出ることがありますので注意が必要です。
妊娠超初期にあらわれる主な症状
おりものの量や色が変化する
おりものはエストロゲンの影響を受けているため、月経周期や妊娠により量が変化します。正常なおりものはにおいがなく、乳白色またはサラサラした透明です。排卵期直前にはエストロゲンが上昇しているため、特にのびのいい透明なおりものを認め、排卵後にはプロゲステロンの影響で乳白色となります。
妊娠するとエストロゲンの分泌が増えるため、おりものの量が増えます。透明や白っぽく、さらっとよく伸びることが多いです。
また、人によっては、妊娠4週頃に着床出血を認めることがあります。着床出血とは、受精卵が子宮内膜に着床する際に、子宮内膜の血管を傷つけることで起こる少量の出血のことをいいます。、少量の出血がおりものに混ざり、ピンクや茶色っぽくなるため、月経と勘違いされることもあります。
これらの変化には個人差があり、妊娠してもおりものの量や状態が変わらない、あるいは減少する場合もあります。
眠気やだるさを感じる
妊娠初期にはプロゲステロンが増加します。プロゲステロンは、子宮の筋肉をゆるめて妊娠を継続させる働きがあります。また、基礎体温を上昇させるため日中でも眠気を感じやすく、睡眠と覚醒のメリハリがつかず寝つきが悪くなったり、だるさや集中力の低下といった症状が現れることがあります。
食欲不振になったり食欲旺盛になったりする
プロゲステロンは、食欲を増加させる一方で、胃腸の機能を低下させるため、胃酸や胃内容物が食道へ逆流して胸やけを起こす原因にもなります。
においに敏感になり、芳香剤や香水、柔軟剤の香りにも敏感に反応することがあります。また、吐き気などによる食欲不振や、逆に食欲旺盛になるほか、好みや味覚が変化することもあります。
プロゲステロンは妊娠後期まで上昇しますが、つわりは妊娠16週頃までに治まることが多く、つわりの原因は解明されていません。
乳房の張りや乳頭の痛みを感じる
プロゲステロンは乳腺の発達を促進する作用があります。乳房全体の張りを感じたり、乳頭やその周辺に痛みや違和感を覚えたりすることがあります。
精神的に不安定になる
妊娠初期は、ホルモンの急激な変化により、精神的に不安定になりやすいです。妊娠前には気にならなかったことにイライラしたり、気分が落ち込みやすくなる、涙もろくなるなど感情がコントロールしづらくなることがあります。
熱っぽさや体のほてりを感じる
女性の体温は月経周期に応じて変動し、低温期と高温期の2つの段階を示します。妊娠初期には、通常の月経周期であれば低温期に移行するはずの時期にも高温期が継続します。このため、「何となく熱っぽい」や「風邪の症状かもしれない」と感じることがあります。
唾液や鼻水の分泌量が増加する
唾液腺や鼻の粘膜が刺激され、唾液や鼻水が増えることがあります。妊娠に伴うホルモンの急激な変化から、自律神経系の乱れが影響しているかもしれないと言われていますが、はっきりとはわかっていません。
便秘や下痢になりやすくなる
プロゲステロンの増加により腸の動きが鈍くなります。また、つわりによる食欲不振で食事量が減少することもあり、便秘になりやすくなります。一方で、ストレスやホルモンバランスの変化から自律神経系が乱れ、下痢を引き起こすこともあります。
お腹の張りや腹痛・腰痛を感じる
妊娠すると徐々に大きくなり、子宮を支える靭帯が引っ張られます。これにより、生理痛に似たような腹痛や引きつるような痛みを感じることがあります。さらに、ホルモンの影響で胃腸の動きも鈍くなるため、便やガスが腸内にたまることで腹部の張りや腹痛を感じることもあります。また、妊娠初期から出るリラキシンというホルモンにより、骨盤や背骨の関節、靱帯が緩むため、腰痛や恥骨痛が現れやすくなります。
頭痛やむくみを感じやすくなる
プロゲステロンは、体内に水分を溜める作用があるため、むくみが現れることがあります。また、プロゲステロンは血管を拡張させるため、頭痛や片頭痛を起こします。
肌荒れや口内炎がおこりやすくなる
妊娠に伴うストレス、ホルモンの急激な変化により、肌が敏感になったり、汗や皮脂が増えたり、湿疹など肌のトラブルを引き起こしやすくなります。ホルモンバランスの変化に加え、栄養不良、免疫力の低下などで口内炎が起こりやすくなります。
めまいや立ちくらみが起きやすくなる
妊娠に伴うホルモンの急激な変化により、自律神経系のバランスを崩し、血圧の調整や血管の収縮・拡張へ影響を与えます。その結果、めまいや立ちくらみを引き起こしやすくなります。
妊娠の可能性があるときに気をつけるべきコト
お酒を飲まない
アルコールは胎盤を通過し胎児に移行します。
妊娠中の飲酒による胎児への悪影響は、「胎児性アルコール症状群」と総称されます。
多くの研究により、胎児の形態異常や脳萎縮、胎児発育不全や、先天奇形(心臓・聴覚異常)、神経発達障害が増加することが明らかになっています。また、母体への影響として、妊娠高血圧症候群や常位胎盤早期剥離のリスクとも言われています。
妊娠全期間を通じて禁酒することが勧められます。
タバコを吸わない
妊娠中の喫煙は、妊娠・出産・児の健康に悪影響があることが報告されています。ニコチンや一酸化炭素などの有害物質が胎盤を通過し、胎児への酸素供給を減少させることで、流産・早産の増加、妊娠合併症の増加、先天異常のリスクが上昇します。
長期的には、生まれてくる子どもの健康にも影響を与えます。呼吸器系の問題、発達障害、肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクが上昇することが報告されています。
重要なのは、これらの影響が直接喫煙だけでなく、受動喫煙によっても引き起こされることです。
また、加熱式タバコや電子タバコにもニコチンや発がん性物質などの有害成分が含まれていると言われており、これらの受動喫煙も、母体や胎児、こどもの成長に悪影響をもたらす可能性が高いです。
これらの理由から、妊娠中はもちろん、妊娠を計画している段階から禁煙することが強く推奨されます。また、家族やパートナー、周囲の人々も、禁煙や喫煙場所への配慮が必要です。
ビタミンAの過剰摂取を避ける
ビタミンAは妊婦にとって重要な栄養素ですが、過剰摂取には注意が必要です。
ビタミンAは視覚、皮膚や粘膜の保護、生殖機能等に関わるとともに、胎児の細胞や器官の成長に重要な栄養素ですが、妊娠初期に摂りすぎると先天奇形のリスクが高まることが報告されています。妊娠初期を含めて、成人女性のビタミンAの耐容上限量は 2,700 µg RAE/日とされています。
ビタミンAは、葉酸サプリメントやマルチビタミンなどに含まれていることがあります。妊娠を希望する女性および妊娠初期の女性は、摂取しているサプリメントに含まれているビタミンAの量を確認しましょう。
妊娠中の貧血対策に、鶏や豚レバーを食べたいと考えると思いますが、2/3本以上食べると1日当たりの上限量を超えてしまいます。
耐容上限量は、毎日食べてもリスクがない上限値ですので、一度でも食べ過ぎたら危険というわけではありません。気づかず食べてしまっても心配せず、しばらく控えるようにしましょう。
緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイド(β-カロテン、クリプトキサンチンなど)は体内でビタミンAになりますが、カロテノイドによるビタミンAの過剰症の心配はありません。
バランスの良い食事を心がけ、特定の栄養素に偏らないようにすることが大切です。
カフェインを控える
カフェインはコーヒーや紅茶、緑茶以外にも、食品添加物の苦味料として、栄養ドリンクやエナジードリンクなどにも含まれています。
カフェインの摂りすぎによって、中枢神経系の刺激によるめまい、心拍数の増加や興奮、消化器系の不調などが起こると言われています。特に妊娠中に摂り過ぎると、胎児の発育に影響が及ぶ可能性が指摘されています。
国内では、カフェインの摂取量について規定されていませんが、諸外国の基準を参考に、摂りすぎに注意をしましょう。
妊娠中のカフェイン摂取量は、1日200〜300mgまでを目安にするのが安心です。これは、コーヒーでカップ2杯程度になります。
コーヒーを飲む習慣がある人は、カフェインの少ないコーヒー(デカフェやカフェインレス)を試してみるのもいいでしょう。
大切なのは、自分の体調に合わせて、適量を心がけることです。
※デカフェ、カフェインレスは、コーヒーのカフェインを 90 %以上取り除いたものと定義されています。
薬を服用する際は医師に相談する
基本的には、受精から 2 週間(妊娠 3 週末)まで、ごく少数の医薬品(角化症治療薬のエトレチナート、C 型肝炎治療用抗ウイルス薬のリバビリンなど)を除き、先天異常出現率は増加しないと言われています。
そのため妊娠超初期に飲んでしまった薬が原因で奇形となる可能性は、ほぼありません。
持病の治療のために普段から飲んでいる薬は、妊娠を理由に薬の使用をやめるべきでない場合もあります。自己判断で薬を飲んだり、中断したりせずに、かかりつけの医師に相談しましょう。
激しい運動はおこなわない
妊娠超初期には、運動が直接流産の原因となることはありません。持病やその他の理由で禁止されていない場合、ウォーキングやフィットネスバイクやストレッチなどの有酸素運動を行うことは有益であると言われています。
ただし、妊娠中は、過度な腹圧がかかるものや転倒や転落のリスクがあるもの、接触による外傷性リスクの高い運動は避けましょう。
妊娠初期はホルモンバランスの急激な変化により、体調不良や、めまいやふらつきなどが現れやすい時期です。習慣的に運動をしている方でも、疲れやすい、身体がだるいなど感じることがあると思います。妊娠超初期は無理をせず、日常生活でも、疲れたらすぐに体を休めるなど、特にこまめな休息が大切です。
レントゲンに注意する
受精後10日までの被曝では、奇形発生率の上昇はなく、受精後11日〜妊娠10週での被曝は奇形を誘発する可能性はありますが、50mGy未満では奇形発生率は上昇しません。
病院で受ける一般的なレントゲン検査による平均的な胎児被曝量は、0.01mmGy以下〜10mmGy程度、健康診断でよく行われる胸部単純レントゲン検査の胎児被曝線量は 0.01mGy以下であるため、胎児に影響を及ぼすとされる量よりもずっと少ないのです。
しかしながら、不要な被曝は避けたいので、妊娠超初期にレントゲン検査を受ける場合には、妊娠の可能性があることを必ず伝えてください。
感染症対策をおこなう
妊娠中は免疫機能が低下するため、感染症にかかりやすく、かかると重症化しやすいです。これは、胎児を異物として認識しないように免疫反応が抑制されるためです。生肉、生のチーズの摂取はしないようにし、他の生ものを食べるときにも注意しましょう。
ちなみに、何らかの細菌、ウイルスなどが母親から赤ちゃんに感染することを「母子感染」と言います。
妊娠中に特に注意が必要な感染症には、風疹、B型肝炎、HIV、トキソプラズマ症、サイトメガロウイルス感染症などがあり、胎児奇形などを起こします。日頃から感染症の理解を深めると共に、手洗いやうがいなどの感染予防に努めましょう。食品は洗浄・加熱をしっかり行い、食中毒を防ぎましょう。
妊娠を希望する時から、医師と相談し、抗体検査や予防接種などの予防策を行うことも重要です。
産婦人科を受診するタイミング
妊娠検査薬で陽性反応が出た場合は、必ず早めに病院を受診して妊娠の確定診断を受けましょう。
妊娠検査薬は、hCGという妊娠のホルモン値を見ているだけですので、異所性妊娠(子宮外妊娠)や流産を見分けることはできません。何度も通院するのは大変だから胎児が見える時期に受診すればいいと考えるかもしれませんが、異所性妊娠の場合、胎児が見える時期には胎嚢は破裂し、大量出血で母体死亡につながります。妊娠検査薬で陽性反応が出たら、早めに病院を受診してください。
結果が陰性でも月経が遅れている場合は、病気の可能性も考えられますので、病院を受診することをおすすめします。
関連してよくある質問
妊娠超初期症状がなかった人はいる?
妊娠超初期の症状として、必ず起こりうることは基礎体温の上昇です。その他の症状は個人差があるため、全くない方、感じない方もいらっしゃいます。
症状の有無と妊娠継続とは直接関係はないため、症状がないからといって心配する必要はありません。
妊娠超初期(1〜3週)のエコー検査で胎児の様子はわかる?
妊娠超初期と言われる時期では、胎児の様子は確認できません。
経腟超音波では、妊娠45週から子宮内に胎嚢が確認できるようになります。胎嚢は子宮内膜に受精卵が着床すると形成される赤ちゃんを包む袋のようなものです。
ただし、月経不順の方など、排卵が遅れた場合には、妊娠週数がずれますので、最終月経から計算した週数で必ず見えるわけではありません。
妊娠前もしくは妊娠超初期から葉酸は摂取するべき?
妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の神経管閉鎖障害(NTD:neural tube defects)の発症率が高まることがさまざまな研究で示されています。
神経管の閉鎖は妊娠6週で完成するため、胎児のNTD発症予防には、妊娠が成立する1か月以上前からの葉酸補充を行うことが重要です。
そのため、妊娠を希望する女性または妊娠の可能性のある女性にはサプリメントによる1日 0.4mg(400μg)の葉酸を接種することが推奨されています。
妊娠超初期の着床出血と月経の見分け方は?
着床出血とは、受精卵が子宮内膜に着床する際に起こる少量の出血です。
着床出血は起こるタイミングも症状も月経と似ているため、見分けがつきにくいことがあります。
また、月経にも個人差があるため、一つの目安として下記を参照ください。
NIPT(新型出生前診断)を受けられるタイミングは?
NIPTは、母体血中の胎児由来cell-free DNAを分析し、21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーの可能性を調べる出生前遺伝学的検査です。
一般的に妊娠10〜16週頃に実施されています。検査時期が早すぎると胎児DNAが不十分で偽陽性・偽陰性のリスクが高まります。一方、遅すぎると、陽性判定後の羊水検査などの追加検査が遅れてしまいます。
NIPTを受ける場合は、指定された時期に受けるようにしましょう。
おわりに
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