排卵してない?無排卵性月経が疑われる特徴や原因・治療法を紹介

最終更新日時:
2024-07-25
市山 卓彦
市山 卓彦 医師
院長 婦人科 生殖医療科 医師
2010年順天堂大学医学部卒。2012年同大学産婦人科学講座に入局、周産期救急を中心に研鑽を重ねる。2016年国内有数の不妊治療施設セントマザー産婦人科医院で、女性不妊症のみでなく男性不妊症も含めた臨床及び研究に従事。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、優秀口頭発表賞および若手研究者賞を同時受賞。2021年には世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど、着床不全の分野で注目されている。2019年4月より順天堂浦安病院不妊センターにて副センター長を務め、2022年5月トーチクリニックを開業。
医学博士、日本生殖医学会生殖医療専門医 / 日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科学会専門医指導医 / 臨床研修指導医
torch clinic医師

無排卵性月経とは?

月経のような出血はあるにもかかわらず、排卵を伴わない状態のことを無排卵性月経といいます。無排卵性月経では月経周期は不順になりがちで、不正出血も見られます。初経が始まって間も無い頃や、更年期の女性に比較的多く見られます。

排卵してない?無排卵性月経が疑われる特徴

無排卵月経症の簡易セルフチェックリストを作りましたのでご参考ください。

月経周期の乱れがある

無排卵性月経では月経周期は不順なことが多く、頻発月経(月経周期が24日以内)や希発月経(月経周期が39日以上)を認めることが多いです。

月経量の乱れがある

一般的な月経周期は25日から38日周期です。月経開始後2週間ほどで排卵し、その後2週間で月経が来ます。 しかし無排卵性月経では、排卵が行われないことで出血のタイミングが不順になりやすく、出血量も通常の月経と比べて多くなったり、場合によっては少なくなったりすることもあります。

基礎体温が二相性にならない

通常、排卵されていれば月経周期は基礎体温が二相性ですが、無排卵の場合では基礎体温が低温の一相性になることがほとんどです。通常は排卵がきっかけで基礎体温が上昇し、排卵から月経開始までが高温期になります。しかし無排卵性月経では排卵がないために基礎体温が変化せず、一相性になるのです。

月経周期以外の出血がある

病的な原因がなく、ホルモンバランスの乱れで起こる出血のことを機能性出血と言います。無排卵性月経ではホルモンバランスが崩れるため、月経周期以外でこの機能性出血がよく見られます。ホルモンバランスが不安定な思春期や更年期に多くみられます。

妊活中にもかかわらず不妊である

無排卵性月経ではその名前の通り、排卵が起こらないため、高い確率で不妊になります。 たとえ月経が来ていたとしても、排卵が起こらなければ卵子と精子が出会うことはなく、妊娠は成立しません。

排卵してないのはなぜ?無排卵性月経が起こる原因

過度なダイエットやストレス

無理なダイエットで急激に体重が減少したり、ストレスがかかるとホルモンを分泌する脳の機能が乱れ、ホルモンバランスが崩れることで無排卵月経につながります。

薬剤

抗精神病薬などを服用した際に慢性的な無排卵が見られることがあります。これは、抗精神病薬にドーパミンの放出を抑制する作用があり、これによってドーパミンによって抑制されていたプロラクチンが過剰に放出されることが原因です。プロラクチンは脳下垂体から放出されるホルモンの一種で、乳汁分泌などに関与します。しかし、血中のプロラクチン濃度が高いと無月経や無排卵性月経を引き起こすことがあります。

多嚢胞性卵巣症候群

排卵がうまくいかない状態で、アンドロゲン(男性ホルモン)過剰、LH(黄体化ホルモン)高値、卵巣の多嚢胞性変化などのほか、肥満や男性化など多彩な症候を伴う疾患です。若い女性に多く見られます。詳細については以下の記事を参考にしてください。

多嚢胞性卵巣症候群を持つ人の妊娠率を上げる方法は?診断方法や治療についても解説

多嚢胞性卵巣症候群でもやはりホルモンバランスが崩れるために無排卵が起こります。

視床下部の機能異常

女性の体は、視床下部ー下垂体ー卵巣ー子宮が協調して働くことで正常月経周期が成立します。 このうち、一番中枢とも言える視床下部が機能しなくなると排卵が起こりません。視床下部は腫瘍やストレスによって障害を受け、ゴナドトロピン(LH、FSH)が放出できなくなると、排卵ができなくなります。

甲状腺機能異常

甲状腺ではヨウ素を原料にして甲状腺ホルモンが作られています。甲状腺の病気では、バセドウ病をはじめとする甲状腺機能亢進症、橋本病をはじめとする甲状腺機能低下症がありますが、これはどちらも女性の発症が多く、20歳代~30歳代という若い世代によくみられます。甲状腺ホルモンは女性ホルモンの分泌にも関係しているため、月経不順や無排卵などを起こし、不妊を引き起こすことがあります。

無排卵周期症の治療方法

甲状腺の機能異常や、原因となるお薬の内服など、明らかな原因がある場合はそちらの対策をします。

以下に、明らかな原因が見つからない場合の対策についてご説明します。

生活習慣の改善

生活習慣を改善させることでホルモンバランスが整います。 睡眠や食事、運動やストレスの排除などによりホルモンバランスが整い、自然に排卵が再開することもあります。

妊娠の希望がない場合|ホルモン療法

たとえ妊娠の希望がなかったとしても、無排卵性月経を放置しておくと、骨粗しょう症や子宮体がんなどのリスクを高める可能性があります。そのため、3ヶ月以上月経が来ない場合や、無排卵性月経が続く場合はホルモン療法が推奨されます。

妊娠の希望がある場合|排卵誘発

妊娠希望がある場合は、排卵誘発剤を使います。内服薬や自己注射によって排卵誘発を行います。重症度に応じて、クロミフェン製剤あるいはゴナドトロピン製剤(FSH製剤、hMG製剤など)が用いられます。

おわりに

トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。

恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週6日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。

不妊治療にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ご予約はウェブからも受け付けております

また、すでに不妊治療を受けている方々のお悩みやセカンドオピニオンにも対応しております。セカンドオピニオンを含めたクリニックへのよくあるご質問はこちらをご参考ください。