淋病とは
淋病は性感染症(STI)の一つで、20歳代に多く見られます。日本における淋病の患者数は、性感染症全体のうち女性が約10%、男性が35%を占め、それぞれ2番目、4番目に多い性感染症です[^1]。
悪化すると不妊の原因になる可能性があるほか、近年の研究では淋菌感染によりHIVにかかりやすくなることが報告されており[^2]、早期に治療を開始することが大切です。
淋病の症状
淋病は主に性器への感染が多いですが、オーラルセックスの普及に伴い感染が増加しているのどのほか、目や直腸への感染も見られます。
のどの症状はのどの痛み・腫れ・咳などの風邪のような症状が、目の症状は強い充血・腫れ・膿状の目やになどがありますが、のどへの感染は特に自覚症状に乏しいことが多いです。
女性の性器淋病の症状
女性は男性に比べて症状が軽く感染が自覚されないことが多いですが、症状がある場合、以下のような子宮頸部の症状が一般的です[^3]。
- おりものの異常(黄色、量の増加)
- 排尿時の痛みや熱感
- 性器不正出血
- 下腹部痛
頻度は低いものの子宮頸部や尿道の炎症が子宮内膜炎、卵管炎、骨盤内炎症症候群(PID)の順に進行し、下腹部の痛みに加え肋骨の下のあたりの慢性的な痛み(右季肋部痛)をきたすこともあります。
男性の性器淋病の症状
男性が淋病に感染すると、一般に以下のような尿道の症状がみられます[^3]。
- 尿道からの分泌物(黄白色、膿性)
- 排尿時の痛み
尿道内の淋菌が精巣上体までたどり着くと、精巣上体炎をきたすことがあります。精巣上体炎の症状としては、陰嚢の腫大、局所の疼痛がみられ、多くは発熱など全身の炎症症状を伴います。
淋病の原因
原因
Neisseria gonorrhoeae(ナイセリア・ゴノレア;淋菌)と呼ばれる細菌に感染することで発症します。
感染経路
淋菌の感染経路として最も一般的なのは、感染部位の粘膜や分泌物との接触によるものです。
妊娠中に淋菌に感染し子宮頸管炎を合併すると、分娩時に経腟感染で赤ちゃんに結膜炎を発症させることがあります。
潜伏期間
男性の淋菌性尿道炎は一般に感染後2–7日の潜伏期間を経て発症します。一方で、女性は無症状のケースが多いため、潜伏期間は不明とされています。また、淋菌性結膜炎は一般に感染後12–48時間で発症するといわれています[^3]。
淋病の診断方法と費用
診断方法
診断は培養法、核酸増幅法などによって淋菌を検出することで行います。淋病とクラミジアは症状がとても似ているため、同時に検査することがあります。症状が出ている部位に応じて、以下のような検査をします。
女性
- 膣ぬぐい液:子宮頸部をスワブ(柔らかい綿棒のようなもの)で擦ります(女性器の症状)
- うがい液、咽頭ぬぐい液(のどの症状)
男性
- 採尿、膿の採取(男性器の症状)
- うがい液、咽頭ぬぐい液(のどの症状)
費用
本人もしくはパートナーに症状がある場合、保険診療が可能です。淋病の検査のみを行う場合は、初診料など合わせて保険適用で自己負担額は約2,500–3,000円になります。torch clinicでは保険診療に加え、症状がない方や家族などに気づかれずに受診したい方へ向けて自由診療にも対応しています。
治療方法
治療は筋注射や点滴で行う場合が多く、一般に1–7回程度の通院が治療期間の目安となります(多くが1–2回で終わります)。保険適応の薬で効果的とされているのは以下の2つです[^4]。
- セフトリアキソン
- スぺクチノマイシン
近年は抗菌薬が効きにくい淋菌が増えてきたため、治療後に再検査をして治癒確認を行うことがあります。また、症状の有無にかかわらずパートナーの診断・治療も並行して行うことが大切です。
淋病の予防方法
1回の性行為による淋病の感染伝達率は約30%といわれています[^3]。淋病の予防には、性的接触時にコンドームを必ず使用するようにしましょう。また、無症状でも感染している場合があるため、複数の性的なパートナーがいる場合には定期的な検査をすることも必要です。淋病は感染しても終生免疫はできないため、何度も再感染する可能性があります。治療が終わっても引き続き予防することが大切です。
よくある質問
淋病を放っておくとどうなりますか?
淋病は放置すると感染部位から体の奥へと進行していき、基本的に自然治癒することはありません。
女性
子宮頸部から感染が拡大すると、卵管や卵巣、骨盤腹膜などに炎症をきたします。特に卵管炎を放置すると、不妊症や子宮外妊娠の原因になることがあります。骨盤内感染が重症化すると炎症が上腹部まで達し、肝周囲炎を引き起こします[^3]。
男性
尿道から感染が拡大すると、前立腺や精巣上体に炎症をきたします。特に精巣上体炎を放置すると治療をしても完治しにくくなり、無精子症を生じることがあります[^3]。
淋病はどれくらいで完治しますか?
注射や点滴による治療は、開始から1–2週間を目途に終了します。また、菌が消えたことを確認するために、治療終了後2週間–1ヵ月ほど経ったのちに再検査を行うことをおすすめします。
淋病とクラミジアの違いって?
淋病とクラミジアは症状が非常に似ていますが、クラミジアはChlamydia trachomatis(クラミジア・トラコマティス)と呼ばれる菌に感染することで発症します。淋病で病院を受診される方の男女比はクラミジアに比べて圧倒的に男性が大きく、女性の自覚症状が乏しいのが特徴です[^5]。また、男性のクラミジアの潜伏期間は約1–3週間で、淋病より少し長いことが知られています。
妊娠中に母親が淋病に感染したら?
妊娠中に母親が淋菌に感染すると、早産や流産の原因になったり分娩時に赤ちゃんが淋菌に感染したりする恐れがあります。淋病は早期発見・早期治療ができる疾患です。淋菌に感染した疑いのある場合はすぐに産婦人科を受診されることをおすすめします。
注釈
[^1]: 小野寺昭一. “近年のわが国における性感染症の動向”. 210 モダンメディア 58 巻 7 号 2012[性感染症アップデート]
[^2]: 芳賀伸治, 黒木俊郎. “淋菌感染症とは”. 厚生労働省 NIID 国立感染症研究所
[^3]: 日本性感染症学会誌 -性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016 Vol.27,No.1 Supplement: 51–54
[^4]: 野口靖之, 小林裕明. 今日の臨床サポート. “淋菌感染症(婦人科)”
[^5]: 厚生労働省 ”感染症発生動向調査 -性別にみた性感染症(STD)報告数の年次推移”
おわりに
トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。
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