卵子凍結(未受精卵凍結)とは
卵子凍結とは、将来の妊娠に備えて若いうちに質のいい卵子を凍結保存しておくことを言います。この卵子は、まだ精子と受精していない「未受精卵」です。対して、受精卵凍結は体外受精や顕微授精で受精後に発育した受精卵を凍らせて保存しておく方法であり、受精していない卵を凍結する卵子凍結とは異なります。
卵子凍結の適応には二種類あり、悪性腫瘍などに罹患した方が治療を行うことにより卵巣機能が低下する可能性がある場合に卵子を凍結する「医学的適応」によるものと、健康な状態ではあるものの、加齢により卵巣機能が低下することに備える「社会的適応」があります。
卵の凍結は、受精卵を特殊な溶液に浸した後、ストローのような容器に入れた卵を-196℃という超低温の液体窒素中で凍結し、保存します。-196℃という温度ではほとんどの化学変化が起こらないため、何十年も全く状態を変化させないままで保存することが出来ます。
したがって、食品を冷蔵庫で保存する場合と異なり、保存時間が長くなるほど融解して生まれる出生児に異常が多くなることはありません。この方法を用いれば、一回の採卵で採取した複数の卵で兄弟姉妹を作ることも可能です。
受精卵凍結とは
受精卵凍結では卵巣から採取した卵子をその状態のまま凍結保存するのではなく、精子と受精させ、正常に細胞分裂が行われて成長した段階で凍結保存することを言います。
卵子凍結の目的
卵子は年齢を重ねると共に老化します。老化した卵子は妊娠率が下がり、流産率が上がり、生まれてくる赤ちゃんにダウン症などの染色体異常がある確率も上がります。そのため、若いうちの妊娠が望まれます。
しかし女性の社会進出が進む中で、出産を希望する女性が皆必ずしも若いうちに出産できるわけではありません。社会的適応による卵子凍結は女性が年齢を重ねても安全に妊娠する確率を少しでも高められる手段として利用されています。ガイドラインも整備されており、これまで多くの卵子凍結を使った出産が報告されています。
卵子凍結のメリットは、若い頃の卵子を凍結保存しておくことで、妊娠しやすい期間を引き延ばすことができることです。女性は年齢の上昇に応じて妊娠率が低下し、逆に流産率は上昇します。しかし、若い頃の卵子を凍結保存しておくことで、卵子を凍結した年齢の妊娠率と流産率を維持することが期待できます。
例えば34歳で凍結した卵子を使って42歳で体外受精をする場合、42歳で体外受精をしたとしても使用する卵子が34歳時点の老化が進む前に凍結保存したものであれば、母体年齢ではなく、卵子を凍結したときの年齢(34歳)相当の妊娠率と流産率を期待できます。
また、受精卵凍結ではパートナーとなる精子が必要となりますが、卵子凍結の場合はパートナーの有無にかかわらず凍結ができます。
卵子凍結のデメリットは主に3つあり、①未受精卵凍結は受精卵凍結に比して卵子へのダメージが大きいこと②将来の妊娠を保証できないこと③費用がかかることです。
①については、未受精卵は受精卵に比べて水分量が多いため、凍結時に水分が膨張し、組織破壊してしまうことに起因します。
②の将来の妊娠を保証できないことについては、あくまで妊娠は確率論に基づくため、パートナーが男性不妊だった時のリスクも考慮すると必ずしも妊娠を保証してくれるものではありません。
③の費用がかかることについては、凍結費用や妊娠を試みる際の体外受精に費用がかかってしまうことを指します。
卵子凍結の妊娠率
生殖医療を行うクリニックごとに妊娠率は異なりますが、一般的には融解卵子一個あたりの妊娠率は4.5%から12%と言われています。
卵子凍結は誰でもできる?
卵子凍結は原則として、39歳以下の女性を対象としています。40歳以上では卵子の質が低下し、出産率が低くなることや、超高齢出産によるリスクが高くなることから、40歳以上での卵子凍結は推奨されていません。
卵子凍結は多くは未婚の女性が対象となります。既婚でパートナーがいる場合には受精卵凍結が勧められます。
卵子凍結の費用と補助金について
東京都では新たに、卵子凍結に係る費用の助成を開始しました。東京都に住む18歳から39歳までの女性であれば、条件を満たせば加齢等による妊娠機能の低下を懸念する場合に行う卵子凍結に係る費用を助成を受けることができます。
詳しくは下記をご参考ください。
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/09/15/05.html
おわりに
トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。
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