卵子凍結とは?どのようなメリットがある?
卵子凍結(未受精卵子凍結)は、若くて質のいい状態の卵子を将来の妊娠のためにあらかじめ保存する方法で、不妊治療の一環として利用されています。
2013年に「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン(日本生殖医学会)」が発表され、東京都では2023年10月から卵子凍結にかかわる助成制度が始まり、妊娠をお考えの方には興味・関心のある内容ではないでしょうか。
卵子凍結により得られるメリット
卵子凍結は、将来の妊娠の可能性を高めるための有効な手段で多くのメリットがあります。
卵子凍結を望む理由は、大きく分けると「医学的適応」と「社会的適応」の2つに分類されます。
医学的適応の卵子凍結は、がん治療やその他の病気の治療によって卵巣機能が低下する前に、卵子を保存する方法です。これにより、がんなどの治療後に妊娠の可能性を残すことができます。
一方、社会的適応の卵子凍結は、キャリアの追求や個人のライフプランに合わせて、若い時期に質の高い卵子を保存する方法です。卵子は、女性が産まれる前(胎児期)に作られ、その後新たに作られることはなく、年齢とともに徐々に減少し、質も低下していきます。未婚の女性や、将来的に妊娠を希望するけれど今は受精卵凍結は考えられないという女性に適しています。若い卵子を凍結しておくことで、加齢による卵子の減少と質の低下による妊娠力の低下に対応するのが目的です。
卵子凍結はパートナーの有無に関係なく行えるため、未婚の女性でも将来の妊娠に備えることが可能です。キャリアやライフプランに合わせて妊娠のタイミングを自分で決められるようになるため、安心して仕事や生活を続けることができる点もメリットと言えます。
卵子凍結にかかる費用と補助金制度
卵子凍結にかかる費用は自費のため、医療機関によって異なりますが、目安を知っておくことは重要です。通常、卵子凍結の費用は初期の検査や投薬、採卵手術、凍結保存にかかる費用を含めて数十万円から数百万円ほどかかります。
たとえばトーチクリニックでの卵子凍結費用は下記の通りです。
日本では現時点で、卵子凍結に対する保険適用がなく、すべての費用は自費で負担する必要があります。そのため、各医療機関で提供される詳細な料金体系を確認し、自分に合ったプランを選ぶことが重要です。
卵子凍結の補助金制度
卵子凍結を考えている女性にとって、補助金制度はとても大きなサポートとなります。自治体によってサポート内容は異なりますが、東京都を例に見ていきましょう。
対象者
- 東京都に住む18歳から39歳までの女性(採卵を実施した日における年齢)
対象者の詳細や対象要件については東京都福祉局の公式ページをご覧ください。
助成額
- 卵子凍結を実施した年度 上限20万円
- 次年度以降、保管に係る調査に回答した際に、1年ごと一律2万円(令和10(2028)年度まで実施)を予定
対象となる医療行為
- 採卵準備のための投薬
- 採卵
- 卵子凍結
支給までの流れ
- 対象者向け説明会へ申し込み、参加
- 調査事業への協力申請、決定通知書の受領
- 登録医療機関を受診、卵子凍結を実施
- 助成金申請、調査への回答
- 助成金受給
※なお、トーチクリニックは東京都の「卵子凍結に係る費用への助成」の登録医療機関です。
卵子凍結の注意点
卵子凍結には注意点もあります。費用の問題のほか、実際に妊娠して安全に出産までできるかは個人の状況に寄る点も大きいため、リスクや注意点をしっかり理解した上で卵子凍結を実施するか考えることが重要です。
・将来の妊娠・出産を保証するものではない
・副作用や合併症のリスクがある
・高年齢の妊娠・出産では合併症のリスクが高まる
上記の注意点について、詳しく解説します。
将来の妊娠・出産を保証するものではない
卵子凍結は将来の妊娠の選択肢を広げるための有効な手段ですが、妊娠や出産を保証するものではありません。簡単に言えば、卵子凍結は受精卵凍結と比べ、新しく難しい技術であり、妊娠率も受精卵凍結より低いです。
まず、卵子の凍結・解凍プロセスには技術的な制約があり、すべての卵子が無事に解凍されるわけではありません。
また解凍された卵子は、精子と受精させ、細胞分裂を経て健康な胚に成長しなくてはなりませんが、その確率も一定ではありません。
さらに、凍結卵子を用いての妊娠成功率は年齢や健康状態、その他の要因に左右されます。年齢が高くなるほど、子宮筋腫や子宮のがんなど、妊娠率に影響をおよぼす病気にかかるリスクが高まります。若い時期に卵子凍結をしていても、実際に使用する際には年齢が進んでいるため、妊娠率や出産率が低下する可能性があります。
卵子の凍結保存期間が影響することもあり、保存期間が長くなるほど卵子の品質が劣化するリスクも考えられます。
ある研究では凍結卵子を用いた場合の着床の確率は17~41%、出生に至るのは4.5~12%と報告されています(出展:日本産科婦人科学会 ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ)。
卵子凍結を行ったからといって、必ずしも将来の妊娠が保証されるわけではないことを理解しておくことが重要です。
副作用や合併症のリスクがある
卵子凍結には、副作用や合併症のリスクが伴います。
同時に多数の卵子を採取するため、排卵誘発剤を使用する際、卵巣が過剰に反応する卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が発生する可能性があります。OHSSは、腹部の張りや吐き気、体重増加、尿量の減少などの症状がみられます。重症例では、腎不全や血栓症などの合併症も引き起こします。
また、採卵手術自体にもリスクがあります。手術後に痛みを感じることがあったり、感染症や出血のリスクもあります。これらのリスクは術前検査などの事前準備で低減できることもあるため、事前に理解した上で医療機関側としっかりとコミュニケーションを取っておくようにしましょう。
高年齢の妊娠・出産では合併症のリスクが高まる
年齢を重ねてからの妊娠・出産では、母体、胎児ともに合併症のリスクが高まる点にも注意が必要です。
一般的には35歳以上での出産を「高齢出産」と呼びます。高齢出産では妊娠高血圧症や妊娠糖尿病などを発症しやすくなるほか、胎児発育不全や早産のリスクが上がる、帝王切開率が上がる、産道が広がらず分娩が長引く、などのリスクがあります(出展:東京都福祉局 いつか子供がほしいと思っているあなたへ)。また、妊娠・出産をきっかけに病気を発症するリスクが、年齢が上がるほど高まることがわかっています。
高齢妊娠・出産のリスクは、もちろん通常の妊娠でも同様であるため、妊娠の計画時には、出産年齢についても十分に考慮する必要があります。
卵子凍結は、現状では受精卵凍結ができないけれど将来妊娠したいときに備えて行うものです。メリット・デメリットを十分に理解したうえで、ご自身のライフプランやお考えに合わせて選択してください。
卵子凍結から妊娠成立までの流れ
卵子凍結から妊娠成立までは複数のステップがあります。個々の医療機関によって細部の違いはあるものの、基本的には、医師からの問診や検査、排卵誘発、採卵、凍結保存という流れになります。
妊娠を希望する際には、凍結した卵子を融解し、受精と培養を経て、胚移植、妊娠判定という流れで進めます。それぞれ詳しく解説しましょう。
卵子凍結までの流れ
医師からの問診や検査
まず、医師の問診や超音波検査、採血などを実施します。超音波の所見やホルモン値、卵子の数を推定するAMH(Anti-Mullerian Hormone)値などを調べ、治療方針を決定します。
排卵誘発
妊娠の確率を上げるためには、複数の卵子を質の高い状態で採取する必要があります。トーチクリニックでは、内服薬や注射を使った排卵誘発を行っていますが、使用する種類は、年齢やこれまでの経過などさまざまな要因を考慮して決めています。
採卵と凍結保存
卵巣の中にある成熟した卵胞に採卵針を刺して、卵胞液と卵子を採取する工程が採卵です。採取された卵子は凍結し、マイナス196℃の液体窒素の中で保存します。超低温の保存により、高い質のまま卵子を保存することができます。
凍結卵子を使用した妊娠成立までの流れ
凍結卵子を融解、顕微授精、培養、胚移植、妊娠判定という流れになります。
出産をしたいタイミングで、凍結保存している卵子を融解し、 精子の入った針を卵子に刺して顕微授精させます。その後、数日培養させた受精卵(胚)を子宮に戻す工程が胚移植です。一定期間の後、子宮に戻した受精卵が着床し妊娠しているかの判定をし、その後は自然妊娠と同様の過程を経て出産となります。
おわりに
トーチクリニックでは、将来妊娠を考えている方向けのブライダルチェックなども提供しています。ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えることを目的に、結婚や妊娠を控えたカップルを対象にした健康状態の確認のための検査です。
トーチクリニックは恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。
医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。
ブライダルチェックにご関心のある方は、お気軽にご相談ください。ブライダルチェックのご予約はウェブからも受け付けております。
また、ブライダルチェックについての解説記事もご参考ください。