おならやお腹の張りは、婦人科疾患でしばしばみられる症状の1つです。特に、子宮筋腫が原因でお腹が張ることが多いといわれています。本記事では、子宮筋腫のほかにお腹の張りがみとめられる婦人科疾患についていくつか説明していきます。
おならが出る・お腹が張る原因
そもそもおならが出るのは、食事の際に一緒に飲み込んだ空気や、食べ物の消化中に発生したガスが排出されるためです。これらの空気やガスがお腹に溜まると、お腹の張りが起こります。空気を多く呑み込む場合は早食いや呑気症が原因のため、これらの原因を改善するとよいでしょう。一方でガスだまりは、腸内環境や腸機能の問題が原因として考えられます。また、月経前は女性ホルモンの影響で腸の運動能が低下するため、ガスがたまってお腹が張りやすくなります。
子宮筋腫とおなら・お腹の張り
おならやお腹の張りは婦人科疾患、特に子宮筋腫でみられる症状でもあります。子宮筋腫が小さい場合は無症状ですが、筋腫が大きくなると子宮が大きくなるため、お腹の膨満感や下腹部の圧迫感が現れます。また、筋腫によって子宮が腸を圧迫すると、便の通りが悪くなるためにおならが出やすくなります。
子宮筋腫とは
子宮筋腫は子宮内の筋肉に生じる良性腫瘍であり、婦人科疾患の中で最も発生頻度が高い疾患です。無症状の場合も含めると、30歳以上の女性のうち20-30%が子宮筋腫を持っているといわれています。悪性腫瘍になることはほぼありませんが、月経困難症や不妊の原因となることがあります。子宮筋腫ができる明確な原因は不明ですが、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが筋腫の増大に関わるとされています。
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子宮筋腫の症状
子宮筋腫の主な症状は、月経の量が異常に多い過多月経や月経困難症、貧血、不正出血、不妊です。これらの症状に筋腫の大きさはあまり関係なく、むしろ筋腫の発生場所が症状に直結すると考えられています。特に子宮の内側にできる粘膜下筋腫は、筋腫の大きさが小さくとも症状が強くなる傾向があります。また筋腫が周辺の臓器を圧迫することで、腰痛や便秘、お腹の張り、頻尿などの症状が現れることもあります。
子宮筋腫の治療
子宮筋腫の治療方法は、筋腫の状態や家族計画を鑑みて判断します。薬物療法ではエストロゲンの分泌量を低下させる薬を投与しますが、副作用が重いため6ヶ月以上の治療はできません。また、エストロゲン分泌の低下によって排卵が止まるため、薬物治療中は妊娠できません。
手術療法では、腹腔鏡、もしくは子宮鏡、状況によっては開腹手術で筋腫のみを摘出します。手術後の妊娠が可能ですが、小さな筋腫を取り残した場合に子宮筋腫が再発するリスクがあります。悪性の疑いが強い場合、またご妊娠の希望がない場合は子宮全摘する場合もあります。
お腹の張りと考えられるその他の病気
子宮筋腫以外にも、お腹の張りが症状の婦人科疾患は複数あります。以下の項目では、お腹の張りに関わる婦人科疾患を4種類説明していきます。
子宮内膜症
子宮内膜症は、子宮以外の場所に子宮内膜様の組織が生じる疾患です。発症の一因として免疫の異常や経血の逆流が挙げられますが、明確な原因は未だわかっていません。20-30代の女性で発症することが多く、特に30-34歳での発症が多いです。異所的に生じた子宮内膜も通常の内膜同様に女性ホルモンの影響を受けるため、月経時に剥がれ落ちて経血となります。しかしその血液は正常に排出されないため、体内に残ることで炎症や癒着を引き起こします。
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症状
子宮内膜症が卵巣に生じた場合は、古い経血が卵巣にたまりチョコレートのう胞が生じます。チョコレートのう胞は卵巣機能を低下させるほか、がん化や破裂のリスクもあります。また、子宮内膜による他臓器との癒着や炎症が起きると、強い生理痛や下腹痛、腰痛、排便痛、性交痛のような痛みを生じます。特に腹膜や直腸、膀胱と癒着した場合は、お腹の張りや便秘といった症状をきたします。
治療法
子宮内膜症の治療法は、病気の進行具合やご妊娠の希望を含めて判断します。薬物療法の場合、症状に応じてホルモン剤を処方します。軽度の場合はホルモン量の少ない低容量ピルを、より重度の場合はGnRHアゴニストや黄体ホルモン剤などを投与します。しかし卵巣チョコレートのう胞が大きい場合は手術療法を選択することがあります。
子宮内膜症における臓器との癒着は月経を繰り返すほど進行していき、女性ホルモンが関わるため閉経まで自然治癒は起こりません。そのため早期の治療が有効となります。
子宮腺筋症
子宮腺筋症は、子宮内膜様の組織が子宮の筋肉中にできることで、子宮全体または子宮筋肉の一部が腫大する良性の疾患です。原理は子宮内膜症と類似していて、病変が子宮にできる場合を子宮腺筋症といいます。35〜50歳での発症が多いといわれていますが、最近は10代後半、20−30歳でも認められる傾向にあります。子宮内膜症と同様に、女性ホルモン(エストロゲン)を伴う月経が症状の増悪を引き起こします。
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症状
子宮の筋肉の中に生じた子宮内膜が月経のたびに剥がれ落ちることで、強い月経痛や月経量の増加(過多月経)、⽉経期間の長期化を引き起こします。これらの症状に伴って貧血がみられる場合も多いです。子宮腺筋症によって子宮が肥大すると、お腹の張り(膨満感)や下腹の出っ張りがみられることがあります。また、子宮腺筋症は不妊症のリスク因子でもあります。
治療法
子宮の腫大や出血量が軽度の場合は、経過観察が可能です。月経症状が強く貧血もみられる場合は、薬物療法または手術療法を選択します。薬物療法としては、軽微な症状であれば鎮痛薬や漢方、鉄剤による対症療法を行います。対症療法で良くならない場合はピルやホルモン剤を投与することで、子宮内膜の増殖を抑制します。また、ミレーナ(避妊リング)も、ホルモン量を抑えて子宮内膜を薄くするため有用です。妊娠を希望されない場合や閉経の方は、根治のために子宮全摘術を行います。
卵巣腫瘍
卵巣に発生した腫瘍を卵巣腫瘍とよびます。腫瘍の発生起源をもとにいくつかの種類に分けられ、さらに良性、境界悪性(悪性度の低いがん)、悪性(がん)として区別されます。卵巣は腫れても気づきにくく、腫瘍が小さいうちは症状が乏しく、月経も妊娠も正常な場合が多いです。しかし10代以降であれば誰でも起こり得るため、お腹のはりや痛みなど、異変を感じたら婦人科を受診することが早期発見につながります。
症状
卵巣腫瘍は、小さいうちは無症状の場合がほとんどです。腫瘍が膨れ上がり自覚症状が出てくると、卵巣の腫大によるお腹の張りや腹囲の増大、下腹部や腰の痛みが現れます。また、腹水のたまりや、腫瘍が膀胱を圧迫することによる頻尿も症状の一例です。卵巣腫瘍が破裂したり捻れてしまうと(茎捻転)強い下腹部痛が突発的に出現します。
治療法
卵巣腫瘍の治療法は良性、境界悪性、悪性かによって大きく分けられますが、いずれにせよ手術が必要な場合が多いです。小さく良性の卵巣腫瘍は経過観察の場合もありますが、腫瘍が6cm以上になると捻転のリスクがあるため、手術で摘出します。良性の場合は卵巣の腫瘍の部分のみの摘出、もしくは卵巣全部と卵管の摘出を行います。境界悪性の場合は両側の卵巣および卵管、そして悪性腫瘍の場合はさらに子宮や大網など、腫瘍の広がりによって追加で病変組織を摘出します。悪性腫瘍の手術後には抗がん剤治療が必要な場合が多いです。
月経困難症
月経困難症とは、月経の前後にかけて起きる症状が日常生活に支障をきたす状態を指します。月経困難症の原因となる疾患(子宮内膜症など)がある場合は器質性月経困難症といい、原因疾患がない場合を機能性月経困難症とよびます。機能性月経困難症は、月経で子宮内膜が剥がれる際に産生されるプロスタグランジンの過剰分泌が原因とされています。
症状
主な症状は頭痛や下腹部痛、腰痛といった痛みであり、月経直前から月経時にかけて始まります。他にもお腹の張りや下痢、便秘、気分の不調、疲労感といった症状もみられます。これらは通常の月経でもしばしば見られる症状ですが、生活に支障をきたすレベルであれば治療が必要です。なお、月経困難症におけるお腹の張りは、女性ホルモンの影響で腸の動きが悪くなりガスがたまるためです。
治療法
原因疾患がある器質性月経困難症の場合は、それらの疾患に対する治療が有効です。原因疾患がない機能性月経困難症の場合は、患者様の状況に応じて治療法を決定します。具体的には、低用量ピルなどのホルモン療法や、血行をよくするための生活習慣改善を行います。場合によっては漢方薬やミレーナを処方することもあります。また、鎮痛剤による対症療法を行うこともあります。
お腹の張りが続く場合はクリニックへ相談
お腹の張りは婦人科疾患でしばしばみられる自覚症状です。また、肥満の自覚がないにも関わらず下腹部が出てきた場合は、子宮筋腫や卵巣腫瘍による臓器の腫大の可能性があります。これらの疾患はいずれも、早期発見により効果的な治療を行うことができます。そのため自覚症状がある場合は早めに医師に相談しましょう。
おわりに
トーチクリニックでは、医師による診断や治療のカウンセリングに加えて、心理カウンセラーが心理的な負担や人に話しにくい悩みなど、医療での解決が難しい「お困りごと」について一緒に考える機会も提供しています。
恵比寿駅から徒歩1分の便利な場所に位置し、週7日(平日・土日祝)開院しており、働きながらでも通いやすい環境を提供しています。
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